[PI-7-3] 成長過程における子どもの保護者が抱える困り感の変化
OTの視点でできる発達的な学習支援の在り方
Ⅰ.はじめに
2005年の発達障害者支援法の施行により,教育場面にて発達障害傾向のある子どもが注目されやすくなった.2012年に文部科学省が実施した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」では知的に遅れはないが学習または行動面で著しい困難を示す児童生徒の推定値は6.5%であったが,2022年の同調査では推定値は8.8%となり,学習面で著しい困難を示す児童生徒数の割合が増加した.筆者は知的発達に遅れは無いが,学習や生活に困り感がある子どもを対象とする塾に勤務している.利用する子どもの過半数が公立小中学校に在籍し,そのほとんどが通常級在籍である.半数以上が集中力の無さ,計画の苦手さ,不器用等を主訴に利用を開始しているが,成長と共に,相談内容は学習関連に変化した.そこで,当塾の小学生から高校生までの保護者を対象に,困り感や今後心配なことについてのアンケート調査を行い,成長過程の子どもに対し必要な支援の在り方について考察した.
Ⅱ.方法
当塾利用者小学校1年生から高校3年生までの保護者64名を対象に,アンケート調査を実施した.調査項目は「基本情報」「困りごとや心配な事について」「今後の生活や将来の不安について」を大項目として構成した.全ての項目に選択肢を列挙し回答を求めた.実施に際しては,本研究の目的について文書にて説明し無記名にて記入,質問紙の回収をもって同意を得たこととした.
Ⅲ.結果
調査期間は1ヶ月間,回収率81.0%.「基本情報」男児75.9%,女児22.2%,学年は小学生66.7%,中学生以上31.5%.所属学級は普通級63.0%,支援学級35.2%で支援学級を利用する教科では算数,国語が多かった.発達に関わる診断の有無は,診断なし群46.0%,診断あり群54.0%.診断あり群の内,普通学級の在籍が41.6%.「困りごとや心配な事」のうち運動・身体機能では,小学生群は姿勢の悪さ,不器用が66.7%,中学生以上群は,不器用が64.7%.学習・認知課題では,ケアレスミスが多いが小学生群61.1%,中学生以上群76.5%と過半数以上であった.国語の長文読解が苦手の項目も,両者群ともに半数以上であった.生活全般では小学生群が友達関係61.1%,中学生以上群では時間管理が苦手58.8%であった.「今後の生活や将来の不安」では,小学生群が精神・心理的な自立66.7%,中学生以上群は進学について61.1%であった.
Ⅳ.考察
今回の調査で診断がある子どもが半数以上に対し,約4割が通常学級に在籍する事が分かった.学習面では,両者群ともケアレスミスや長文読解に困り感を抱え,書きや読みの間違い,物語の主旨を掴む事の苦手さなど様々な教科に共通するものであった.小学生の保護者の主たる心配は生活面で,学習についての相談は少ないが,中学生になると,保護者の主訴は学習面に傾き,学習に関わる困り感は,低学年では表面化しにくい事が分かった.当塾でも幼児期から「読む,聞く,書く」の経験を積み重ねている子どもの方が,学ぶ事に対し苦手さを持ちにくい傾向があり,保護者も学習を考える機会が増え,焦らず将来に備える事ができる.些細な困り感でも,早期からの対応で問題が長期化しにくく,将来の選択肢も広がるのではないかと考える.しかし,通常級に在籍する子どもの多くは,専門的支援を必要としても医療や福祉サービスの対象とならず,一般的な習い事で補填しているのが現状である.そのような子どもの支援の1つとして,学習を身体や認知機能に関する知識からアセスメントするOTの専門性が活かせると考える.今回は保護者の困り感であったが,子ども自身の困り感の調査と検討が今後の課題である.
2005年の発達障害者支援法の施行により,教育場面にて発達障害傾向のある子どもが注目されやすくなった.2012年に文部科学省が実施した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」では知的に遅れはないが学習または行動面で著しい困難を示す児童生徒の推定値は6.5%であったが,2022年の同調査では推定値は8.8%となり,学習面で著しい困難を示す児童生徒数の割合が増加した.筆者は知的発達に遅れは無いが,学習や生活に困り感がある子どもを対象とする塾に勤務している.利用する子どもの過半数が公立小中学校に在籍し,そのほとんどが通常級在籍である.半数以上が集中力の無さ,計画の苦手さ,不器用等を主訴に利用を開始しているが,成長と共に,相談内容は学習関連に変化した.そこで,当塾の小学生から高校生までの保護者を対象に,困り感や今後心配なことについてのアンケート調査を行い,成長過程の子どもに対し必要な支援の在り方について考察した.
Ⅱ.方法
当塾利用者小学校1年生から高校3年生までの保護者64名を対象に,アンケート調査を実施した.調査項目は「基本情報」「困りごとや心配な事について」「今後の生活や将来の不安について」を大項目として構成した.全ての項目に選択肢を列挙し回答を求めた.実施に際しては,本研究の目的について文書にて説明し無記名にて記入,質問紙の回収をもって同意を得たこととした.
Ⅲ.結果
調査期間は1ヶ月間,回収率81.0%.「基本情報」男児75.9%,女児22.2%,学年は小学生66.7%,中学生以上31.5%.所属学級は普通級63.0%,支援学級35.2%で支援学級を利用する教科では算数,国語が多かった.発達に関わる診断の有無は,診断なし群46.0%,診断あり群54.0%.診断あり群の内,普通学級の在籍が41.6%.「困りごとや心配な事」のうち運動・身体機能では,小学生群は姿勢の悪さ,不器用が66.7%,中学生以上群は,不器用が64.7%.学習・認知課題では,ケアレスミスが多いが小学生群61.1%,中学生以上群76.5%と過半数以上であった.国語の長文読解が苦手の項目も,両者群ともに半数以上であった.生活全般では小学生群が友達関係61.1%,中学生以上群では時間管理が苦手58.8%であった.「今後の生活や将来の不安」では,小学生群が精神・心理的な自立66.7%,中学生以上群は進学について61.1%であった.
Ⅳ.考察
今回の調査で診断がある子どもが半数以上に対し,約4割が通常学級に在籍する事が分かった.学習面では,両者群ともケアレスミスや長文読解に困り感を抱え,書きや読みの間違い,物語の主旨を掴む事の苦手さなど様々な教科に共通するものであった.小学生の保護者の主たる心配は生活面で,学習についての相談は少ないが,中学生になると,保護者の主訴は学習面に傾き,学習に関わる困り感は,低学年では表面化しにくい事が分かった.当塾でも幼児期から「読む,聞く,書く」の経験を積み重ねている子どもの方が,学ぶ事に対し苦手さを持ちにくい傾向があり,保護者も学習を考える機会が増え,焦らず将来に備える事ができる.些細な困り感でも,早期からの対応で問題が長期化しにくく,将来の選択肢も広がるのではないかと考える.しかし,通常級に在籍する子どもの多くは,専門的支援を必要としても医療や福祉サービスの対象とならず,一般的な習い事で補填しているのが現状である.そのような子どもの支援の1つとして,学習を身体や認知機能に関する知識からアセスメントするOTの専門性が活かせると考える.今回は保護者の困り感であったが,子ども自身の困り感の調査と検討が今後の課題である.