[PI-7-4] 環境調整によって職員の支援に対する自己効力感と児の摂食機能が改善した一例
【はじめに】
療育や保育の場では作業療法士(以下,OT)以外の職員が食事の支援をすることが多い.職員の困りごととして「姿勢が崩れ易いが理由が分からない」「口腔機能が未熟だが支援の方法が分からない」「支援方法があっているか不安」などの声が聞かれた.今回,保育士と協同したことで職員の食事支援に対する自己効力感と,児の不器用さ・口腔機能に良好な変化が見られたので報告する.なお本研究発表を行うにあたり開示すべきCOIはなく,保護者からの同意も得ている.
【事例紹介・目的など】
本症例は知的障害と自閉傾向がある4歳児で昨年度から本施設を利用している.3歳当時,摂食に対する拒否が強まったことで栄養管理目的の入院をした経緯がある.職員は「再度摂食拒否に陥らないか不安」「前傾姿勢で詰め込み,口から食隗がこぼれ出るが支援が難しい」「食べる意欲は旺盛だが,姿勢や口唇閉鎖の援助を嫌がっている様子がある」等の困り感があった.OTは職員が支援を行っていくことを前提に食事行為の評価と支援方法の検討を行った.また食行動質問紙(以下,MBQ)と偏食のある子どもの保護者の自己効力感尺度(以下,SAPS)を一部抜粋し,児の摂食機能や支援者の自己効力感がどのように変化したか評価を行った.
【作業療法評価】
低筋緊張・座位姿勢は骨盤後傾で股関節開排位,体幹屈曲位で頭を突き出して食事を覗き込むように食べている.徒手での姿勢援助の受け入れはまちまちで,受け入れても直ぐに元の姿勢に戻ってしまう.また,早く食べたい思いからOTの手を振り払うなど拒否も多い.取り込み時の口唇閉鎖は甘く,咀嚼時には口から食隗が出てきてしまう状態だった.口唇周囲に触れると顔を背けたり嫌な顔をするなど,感覚の過敏さも見られた.以上の評価から姿勢や口唇閉鎖,食具操作の援助を同時に行っていくことは困難であると考えられた.
【作業療法実施計画・方法】
1)個別指導の実施:姿勢の安定を目的に運動発達に寄与するアドバイスを保護者に行う.
2)環境調整と支援方法の共有:食事台(10cm補高)の作成と設置.脱感作と摂食機能向上を目的としたバンゲード法の指導を行った.
【結果】
食事台をトレイの下に設置したことで上半身が起き上がり姿勢の援助が大幅に減った.姿勢改善により口唇閉鎖が未熟でも口腔内に食隗が留められるようになった.職員は食事前からバンゲード法を行ったり,姿勢援助が減ったことで口唇閉鎖や食具操作の支援を行いやすくなった.MBQでは以下の改善が見られた.「不器用・マナーに関する質問」・手づかみ食べをする:75%→50%・食べこぼしが多い:100%→75%「口腔機能に関する質問」・食べ物をよく噛まない:100%→75%・口いっぱいに詰め込む75%→50%・食べ物を丸飲みする75%→50%.SAPS(調理に関する設問未回答)では介入前49/55点.介入後51/55点.変化項目は・子どもの好きな食べ物と好きな理由について・子どもに応じた工夫で向上.気持ちのゆとりの項目で減少が見られた.減少した理由として「今までは食べる事を中心にしてきたが,今は機能向上にも責任感を持って取り組んでいるから」との回答であった.
【考察】
職員は児の発達の特徴や摂食拒否で入院した経緯から支援に対する不安や困難さを抱えていた.環境調整を行う事で,児も楽に食べやすく職員も支援がしやすくなったことでMBQやSAPSの得点に良好な変化が見られたのではないか.
療育や保育の場では作業療法士(以下,OT)以外の職員が食事の支援をすることが多い.職員の困りごととして「姿勢が崩れ易いが理由が分からない」「口腔機能が未熟だが支援の方法が分からない」「支援方法があっているか不安」などの声が聞かれた.今回,保育士と協同したことで職員の食事支援に対する自己効力感と,児の不器用さ・口腔機能に良好な変化が見られたので報告する.なお本研究発表を行うにあたり開示すべきCOIはなく,保護者からの同意も得ている.
【事例紹介・目的など】
本症例は知的障害と自閉傾向がある4歳児で昨年度から本施設を利用している.3歳当時,摂食に対する拒否が強まったことで栄養管理目的の入院をした経緯がある.職員は「再度摂食拒否に陥らないか不安」「前傾姿勢で詰め込み,口から食隗がこぼれ出るが支援が難しい」「食べる意欲は旺盛だが,姿勢や口唇閉鎖の援助を嫌がっている様子がある」等の困り感があった.OTは職員が支援を行っていくことを前提に食事行為の評価と支援方法の検討を行った.また食行動質問紙(以下,MBQ)と偏食のある子どもの保護者の自己効力感尺度(以下,SAPS)を一部抜粋し,児の摂食機能や支援者の自己効力感がどのように変化したか評価を行った.
【作業療法評価】
低筋緊張・座位姿勢は骨盤後傾で股関節開排位,体幹屈曲位で頭を突き出して食事を覗き込むように食べている.徒手での姿勢援助の受け入れはまちまちで,受け入れても直ぐに元の姿勢に戻ってしまう.また,早く食べたい思いからOTの手を振り払うなど拒否も多い.取り込み時の口唇閉鎖は甘く,咀嚼時には口から食隗が出てきてしまう状態だった.口唇周囲に触れると顔を背けたり嫌な顔をするなど,感覚の過敏さも見られた.以上の評価から姿勢や口唇閉鎖,食具操作の援助を同時に行っていくことは困難であると考えられた.
【作業療法実施計画・方法】
1)個別指導の実施:姿勢の安定を目的に運動発達に寄与するアドバイスを保護者に行う.
2)環境調整と支援方法の共有:食事台(10cm補高)の作成と設置.脱感作と摂食機能向上を目的としたバンゲード法の指導を行った.
【結果】
食事台をトレイの下に設置したことで上半身が起き上がり姿勢の援助が大幅に減った.姿勢改善により口唇閉鎖が未熟でも口腔内に食隗が留められるようになった.職員は食事前からバンゲード法を行ったり,姿勢援助が減ったことで口唇閉鎖や食具操作の支援を行いやすくなった.MBQでは以下の改善が見られた.「不器用・マナーに関する質問」・手づかみ食べをする:75%→50%・食べこぼしが多い:100%→75%「口腔機能に関する質問」・食べ物をよく噛まない:100%→75%・口いっぱいに詰め込む75%→50%・食べ物を丸飲みする75%→50%.SAPS(調理に関する設問未回答)では介入前49/55点.介入後51/55点.変化項目は・子どもの好きな食べ物と好きな理由について・子どもに応じた工夫で向上.気持ちのゆとりの項目で減少が見られた.減少した理由として「今までは食べる事を中心にしてきたが,今は機能向上にも責任感を持って取り組んでいるから」との回答であった.
【考察】
職員は児の発達の特徴や摂食拒否で入院した経緯から支援に対する不安や困難さを抱えていた.環境調整を行う事で,児も楽に食べやすく職員も支援がしやすくなったことでMBQやSAPSの得点に良好な変化が見られたのではないか.