第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-7] ポスター:発達障害 7

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-7-7] 発達性協調運動症児の短縄跳び動作獲得を目指して

ホームプログラムを主軸においた作業療法介入

岩井 萌1, 稲富 惇一2,3 (1.サンテ・ペアーレクリニック リハビリテーション科, 2.土佐リハビリテーションカレッジ 作業療法学科, 3.高知健康科学大学 健康科学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻)

【はじめに】
小学校教育において短縄跳びは,持久力向上を目的に授業で取り入れられているが(文部科学省,2017年),協調運動を苦手とする発達性協調運動症(DCD)児にとっては,獲得が困難な運動の一つであり,作業療法士による介入意義は高い.今回,短縄跳びの習得を希望するDCD児に対して,ホームプログラムを中心に介入したところ,目標を達成できたため以下に報告する.なお本報告に関しては,本症例と保護者に説明し署名での同意と,倫理審査の承認を得ている(TRC202310).
【対象】
DCDと自閉症スペクトラムを有する6歳男児で,月1回3単位の外来リハビリテーションを利用している.小学校は通常学級に通っており,体育の授業は見学していることが多い.希望は短縄跳び動作獲得で,カナダ作業遂行測定(COPM)は重要度10,遂行度3,満足度3.初期評価として短縄跳びは1回も飛べなかった.縄は脇を開いて肘関節伸展位で肩関節中心に回し,左上肢優先で動かしていた.跳躍は股・膝関節で行っており,同時に飛ぶことは難しく,着地時は前方へ大きくズレていた.身体機能評価として,ジャンピングジャックは困難で,垂直飛びは両側股・膝関節を過度に屈曲させ,反動で肘関節も屈曲しており,着地地点は前後左右にズレていた.感覚プロファイルは97/190で特に味覚・嗅覚過敏性,動きへの過敏性,低活動・弱さにおいては非常に高かった.
【介入】
介入方針として,頻度が月に1回であったこととDCDの介入において有効性が示されている(Novak,2019)ことから,ホームプログラムを中心に実施することにした.各プログラムは,短縄跳びを反復して行うと失敗体験から挫折感に繋がると考え動作を細分化した内容とし,本児の好きなキャラクターの名称をプログラム名に入れることでやる気を促した.介入では,まず短縄跳びの獲得において,縄は脇を締め手首で回す,跳躍は両下肢同時に足関節で飛ぶ,以上2点が重要であることを本児・保護者と共有した.ホームプログラムの提示前には,段階付けとして足関節で同時に跳躍することを学ぶためにトランポリンを使用し,次に地面で飛ぶ練習を実施した.縄回しは一側から行い,両側へ移行することで左右同時の動きを促した.ホームプログラムとしては地面での両側同時跳躍,縄回し,短縄跳びの3つとし,保護者には各プログラムを見てもらい,尚且つ注意点とポイントを記載した紙面を渡した.特に,保護者には本児が主体的に行うことを心がけてもらった.
【結果】
1か月後に短縄跳びを連続5回跳べるようになり,COPMは遂行度7,満足度9と向上した.本児からは「学校でも飛べるようになった」と語られ,体育の授業に参加するようになった.ホームプログラムにおいては,保護者から笑顔で積極的に取り組めたと聞かれた.
【考察】
複雑な短縄跳び動作において,各動作と並行して行うことが連続跳躍回数の向上に影響し,本人が楽しいと思える工夫をすることが望ましい(倉,2021;田中ら,2019).また,ホームプログラムにおいては,専門的な介入の後,スキル獲得のために家庭で継続することが推奨されている(Sugden,2006;本田,2010).今回,短縄跳び動作を細分化させ,楽しいと感じるプログラム名を取り入れたことがホームプログラムの継続に繋がり,短縄跳びの獲得に至ったと推察する.短縄跳び獲得後は,学校体育の参加に繋がり,他の運動も行えるようになった.今後も継続的な支援を行い,学校生活が豊かなものになるよう願う.