[PI-9-4] 放課後等デイサービスにおける読み書き支援を通して,学校での不適応行動が改善した事例
【はじめに】
書字能力が不十分な子どもでは抑うつや攻撃性が高まり,メンタルヘルスを悪化させる可能性が報告されている.今回,放課後等デイサービス(以下,放デイ)において書字能力が不十分であることで,学校生活での不適応行動が顕著に見られる児童と関わる機会を得た.読み書き支援を行ったことにより,学校生活での参加に改善がみられたため報告する.なお,本人と保護者に本報告の旨を説明し同意を得ている.
【事例紹介】
Aさん,小学2年生女児.6歳時に限局性学習症と診断され,小学校入学とともに放デイの利用が開始された.現在は地域小学校支援学級に在籍している.6歳3か月時点での新版K式発達検査では,認知適応面67,言語・社会面59,全領域63であった.年少時に母親からAさんへの虐待により両親は離婚し,現在は父子家庭となっている.小学2年時になり支援学級の担任の先生から「名前や単語を書くように伝えると泣く,物を投げるなどの行動がみられ授業を受けることが難しい」などの相談があり,放デイの集団活動前に個別作業療法を開始した.
【介入経過】
作業療法初回は,文字に対する拒否が強く,読み書きに関する検査はひらがな数文字程度であった.文字に対する拒否感の緩和を図るため,T式ひらがな音読支援の音読指導アプリを用いた視覚的アプローチをゲーム感覚で開始し,その後,運筆や絵本の読み聞かせを行った.介入2か月目には本人から「プリンセスの絵本を読んでプリンセスになりたい」と希望があり,プリンセスに少しでも近づくために読み書きが出来るようになることを活動の目標にした.出来る活動が増えてきたため,逆さ文字に対してひらがなカードでの○×ゲームや単語の穴埋めなど難易度を漸増していき,徐々に短い文字数の絵本の音読が可能となった.介入3か月後には本人から「カタカナを書きたい」と希望があり,カタカナに関しても読み書きを開始した.
【結果】
開始時は,ゲーム感覚で活動したことで,文字への拒否感が軽減し,活動への参加が可能になった.また,父親から放デイでの取り組みや頑張りを認められ,褒められたことから,さらに意欲的になった.介入1か月後には自分の名前や父親と妹の名前,学校の先生や放デイ職員の名前が書けるようになった.徐々に学校の先生や放デイ職員,また他の放デイ利用児からも頑張りを褒められることが多くなり,集団活動でも他児に対しての攻撃性が減り,自由活動では一緒に楽しく遊ぶことが多く見られるようになった. 介入3か月後にはひらがなの濁音はミスが見られるも,清音に関しては読み書きが可能になった.学校の先生より「授業に座って参加でき国語の授業では自ら手を上げて音読に参加出来るようになった」「他の授業でも以前より意欲的に参加できるようになり,泣く,物を投げるなどの行動が見られなくなった」と学校生活における参加に改善を認めた.
【考察】
ひらがなの書字習得には,絵本による文字の接触に加え,文字の視覚的複雑度も影響するとされる.また,書き写しに関しては,発達性読み書き障害児では書き写す際に視覚性の記憶力が重要な役割を果たしていると指摘されている.アプリやカードなどの視覚的アプローチをゲーム感覚で取り入れたことで,負担が少なく読み書きの訓練の継続に繋がったと考える.また本症例は,読み書き支援を通して学校や家庭,放デイと複数の場所で同時期に褒められる経験が自信につながり,学校や放デイにおける集団活動での適応に繋がったと考える.
書字能力が不十分な子どもでは抑うつや攻撃性が高まり,メンタルヘルスを悪化させる可能性が報告されている.今回,放課後等デイサービス(以下,放デイ)において書字能力が不十分であることで,学校生活での不適応行動が顕著に見られる児童と関わる機会を得た.読み書き支援を行ったことにより,学校生活での参加に改善がみられたため報告する.なお,本人と保護者に本報告の旨を説明し同意を得ている.
【事例紹介】
Aさん,小学2年生女児.6歳時に限局性学習症と診断され,小学校入学とともに放デイの利用が開始された.現在は地域小学校支援学級に在籍している.6歳3か月時点での新版K式発達検査では,認知適応面67,言語・社会面59,全領域63であった.年少時に母親からAさんへの虐待により両親は離婚し,現在は父子家庭となっている.小学2年時になり支援学級の担任の先生から「名前や単語を書くように伝えると泣く,物を投げるなどの行動がみられ授業を受けることが難しい」などの相談があり,放デイの集団活動前に個別作業療法を開始した.
【介入経過】
作業療法初回は,文字に対する拒否が強く,読み書きに関する検査はひらがな数文字程度であった.文字に対する拒否感の緩和を図るため,T式ひらがな音読支援の音読指導アプリを用いた視覚的アプローチをゲーム感覚で開始し,その後,運筆や絵本の読み聞かせを行った.介入2か月目には本人から「プリンセスの絵本を読んでプリンセスになりたい」と希望があり,プリンセスに少しでも近づくために読み書きが出来るようになることを活動の目標にした.出来る活動が増えてきたため,逆さ文字に対してひらがなカードでの○×ゲームや単語の穴埋めなど難易度を漸増していき,徐々に短い文字数の絵本の音読が可能となった.介入3か月後には本人から「カタカナを書きたい」と希望があり,カタカナに関しても読み書きを開始した.
【結果】
開始時は,ゲーム感覚で活動したことで,文字への拒否感が軽減し,活動への参加が可能になった.また,父親から放デイでの取り組みや頑張りを認められ,褒められたことから,さらに意欲的になった.介入1か月後には自分の名前や父親と妹の名前,学校の先生や放デイ職員の名前が書けるようになった.徐々に学校の先生や放デイ職員,また他の放デイ利用児からも頑張りを褒められることが多くなり,集団活動でも他児に対しての攻撃性が減り,自由活動では一緒に楽しく遊ぶことが多く見られるようになった. 介入3か月後にはひらがなの濁音はミスが見られるも,清音に関しては読み書きが可能になった.学校の先生より「授業に座って参加でき国語の授業では自ら手を上げて音読に参加出来るようになった」「他の授業でも以前より意欲的に参加できるようになり,泣く,物を投げるなどの行動が見られなくなった」と学校生活における参加に改善を認めた.
【考察】
ひらがなの書字習得には,絵本による文字の接触に加え,文字の視覚的複雑度も影響するとされる.また,書き写しに関しては,発達性読み書き障害児では書き写す際に視覚性の記憶力が重要な役割を果たしていると指摘されている.アプリやカードなどの視覚的アプローチをゲーム感覚で取り入れたことで,負担が少なく読み書きの訓練の継続に繋がったと考える.また本症例は,読み書き支援を通して学校や家庭,放デイと複数の場所で同時期に褒められる経験が自信につながり,学校や放デイにおける集団活動での適応に繋がったと考える.