[PJ-4-6] 作業同一性質問紙を用いた作業療法介入効果についての予備的前後比較試験
【はじめに】
作業同一性とは,個人史から作り出される作業的存在としての自己認識のことである.その評価法である作業同一性質問紙(Occupational Identity Questionnaire;以下,OIQ)は,地域在住高齢者を対象に信頼性と妥当性が検証されている(Shikataら,2021).OIQを要支援・要介護高齢者に適用した事例研究では,日常生活活動,健康関連QOL等に良好な影響を及ぼしたことが示されている(鹿田ら,2021).本研究の目的は,OIQを用いた前後比較試験を予備的に行い,OIQを用いた作業療法(以下,OT)の効果を検証することである.本研究において,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】
[対象者]①通所系・訪問系サービスを利用する要支援・要介護高齢者で,②週1回以上,20分以上の作業療法士によるリハビリテーション(以下,リハ)を受けている者とした.認知症や高次脳機能障害の診断のある者は除外した.
[介入]対象者にOIQを実施し,明らかとなった作業同一性の情報をもとに,OTの目標と方法を協業,対象者が望む作業や作業同一性の問題に取り組むOTを概ね3か月間実施した.OIQは,高齢者の作業同一性に関する14項目に対し,対象者が「全く思わない」から「とてもそう思う」の4件法で評価する.
[測定]Medical Outcomes Study 12-ltem Short-Form Health Survey version 2(以下,SF-12),Barthel Index(以下,BI),Frenchay Activities Index(以下,FAI)を介入開始時と介入後(3か月後)に測定した.基本情報は介入開始時に収集した.
[分析]介入前後の測定結果の記述統計を算出後(順序尺度は中央値と第1四分位-第3四分位,間隔尺度は平均値と標準偏差),Wilcoxonの符号付き順位検定で統計解析を行った.有意水準は5%未満とした.
なお,全対象者に本研究の目的を説明し,書面での説明と同意が行われた.本研究は,筆頭演者の所属先における研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は6名(男性1名,女性5名)で,年齢は85.1±7.94であった.介護度は要支援1が1名,要支援2が1名,要介護1が3名,要介護2が1名であった.利用サービスは通所リハが1名,訪問看護が5名,介入頻度は週1回40分が5名,週2回約20分が1名であった.介入前後の評価項目の結果は,SF-12の身体的健康度が33.4±18.6から37.6±18.6,精神的健康度が55.1±7.2から57.4±3.2,役割/社会的健康度が44.4±10.6から44.3±16.6であった.BIは92.50(80.0-100.0)から95.0(86.3-100.0),FAIは17.0(1.5-24.5)から19.0(7.0-26.0),OIQは44.0(40.25-48.0)から44.5(42.8-49.0)であった.介入前後で有意差を認めたのは,SF-12の身体的健康度(p=0.046),FAI(p=0.043)であった.
【考察】
介入の結果,身体的健康度とFAIに改善が見られた.身体的健康度は活動の影響が大きく,またFAIは手段的ADLや仕事,余暇の実施頻度に関する項目が含まれている.OIQで明らかとなった作業の問題に取り組み,作業が可能になったため,身体的健康度とFAIが改善したと考えられる.対象者数が少数であるため,今後さらに対象者数を増やし,効果を検証することが課題である.
作業同一性とは,個人史から作り出される作業的存在としての自己認識のことである.その評価法である作業同一性質問紙(Occupational Identity Questionnaire;以下,OIQ)は,地域在住高齢者を対象に信頼性と妥当性が検証されている(Shikataら,2021).OIQを要支援・要介護高齢者に適用した事例研究では,日常生活活動,健康関連QOL等に良好な影響を及ぼしたことが示されている(鹿田ら,2021).本研究の目的は,OIQを用いた前後比較試験を予備的に行い,OIQを用いた作業療法(以下,OT)の効果を検証することである.本研究において,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】
[対象者]①通所系・訪問系サービスを利用する要支援・要介護高齢者で,②週1回以上,20分以上の作業療法士によるリハビリテーション(以下,リハ)を受けている者とした.認知症や高次脳機能障害の診断のある者は除外した.
[介入]対象者にOIQを実施し,明らかとなった作業同一性の情報をもとに,OTの目標と方法を協業,対象者が望む作業や作業同一性の問題に取り組むOTを概ね3か月間実施した.OIQは,高齢者の作業同一性に関する14項目に対し,対象者が「全く思わない」から「とてもそう思う」の4件法で評価する.
[測定]Medical Outcomes Study 12-ltem Short-Form Health Survey version 2(以下,SF-12),Barthel Index(以下,BI),Frenchay Activities Index(以下,FAI)を介入開始時と介入後(3か月後)に測定した.基本情報は介入開始時に収集した.
[分析]介入前後の測定結果の記述統計を算出後(順序尺度は中央値と第1四分位-第3四分位,間隔尺度は平均値と標準偏差),Wilcoxonの符号付き順位検定で統計解析を行った.有意水準は5%未満とした.
なお,全対象者に本研究の目的を説明し,書面での説明と同意が行われた.本研究は,筆頭演者の所属先における研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は6名(男性1名,女性5名)で,年齢は85.1±7.94であった.介護度は要支援1が1名,要支援2が1名,要介護1が3名,要介護2が1名であった.利用サービスは通所リハが1名,訪問看護が5名,介入頻度は週1回40分が5名,週2回約20分が1名であった.介入前後の評価項目の結果は,SF-12の身体的健康度が33.4±18.6から37.6±18.6,精神的健康度が55.1±7.2から57.4±3.2,役割/社会的健康度が44.4±10.6から44.3±16.6であった.BIは92.50(80.0-100.0)から95.0(86.3-100.0),FAIは17.0(1.5-24.5)から19.0(7.0-26.0),OIQは44.0(40.25-48.0)から44.5(42.8-49.0)であった.介入前後で有意差を認めたのは,SF-12の身体的健康度(p=0.046),FAI(p=0.043)であった.
【考察】
介入の結果,身体的健康度とFAIに改善が見られた.身体的健康度は活動の影響が大きく,またFAIは手段的ADLや仕事,余暇の実施頻度に関する項目が含まれている.OIQで明らかとなった作業の問題に取り組み,作業が可能になったため,身体的健康度とFAIが改善したと考えられる.対象者数が少数であるため,今後さらに対象者数を増やし,効果を検証することが課題である.