第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む)3

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PK-3-6] 地域で生活する高次脳機能障害者の課題分析

障害者総合支援法における相談内容を用いて

澤田 泰洋1,2 (1.中部大学 生命健康科学部作業療法学科, 2.高次脳機能障害者サポートセンター笑太鼓)

【はじめに】高次脳機能障害は多岐にわたる症状から支援者を悩ますことも少なくない.また, 明確な支援方法が確立しているわけではないため,複雑な症状の病態把握に困難を示し,支援に難渋する.これらから教育や支援の知識として地域で生活している高次脳機能障害者の特徴や症状などに役立つようなまとまったデータがあると良いと思われる.そこで本研究の目的は高次脳機能障害者専門に相談支援業務を実施している施設に協力していただき,地域で生活する高次脳機能障害者の困ったことや課題を分析することを行なったので報告する.
【対象】対象は2022年4月から2023年3月までの1年間で障害者総合支援法にて相談に来られた高次脳機能障害者およびその家族である.
【方法】施設の責任者および計画相談支援を行っている相談員に研究内容の説明を行い,承諾を得た.その後,2022年4月から2023年3月までの1年間に,高次脳機能障害支援の専門施設に障害者総合支援法における計画相談支援を実施した面談の内容のデジタルデータを収集し,フリーソフトKH Coderを用いて,テキストマイニングを実施した.また,テキストマイニングでは多かった語の抽出,階層的クラスター分析,共起ネットワーク分析などを行った.なお,本研究は中部大学倫理審査委員会の承認(承認番号:20230047)を得ている.
【結果】対象者は57人であった.相談の対象となった疾患は脳外傷が24人,脳梗塞が10人,その他脳腫瘍やくも膜下出血などであった.多かった語の抽出について,総抽出語数(使用)は4860語であり,出現回数の多い語は「障害(115語)」,「機能(43語)」,「記憶(36語)」,「注意(35語)」,「生活(28語)」,階層的クラスター分析ではクラスターは8つに分類された.クラスターとして,「機能」,「記憶」,「障害」,「注意」や「管理」,「支援」,また「言語」,「理解」などがみられた.共起ネットワーク分析ではサブグラフは9つに分類された.「障害」,「機能」,「記憶」,「注意」,「遂行」や「情報処理」,「低下」,「家事」,「金銭」,「管理」,また「理解」,「思考」,「言語」,「社会」,「難しい」,加えて「支援」,「状態」,「精神」,「年金」などがみられた.
【考察】対象者や今回の分析から対象者の症状は高次脳機能障害診断基準に準じる記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などの前頭葉損傷の患者が多かったと考えられる.また,「家事」や「金銭」,「管理」などといったことからADLよりもIADLの方が多く出現していることがわかった.加えて,「理解」,「思考」,「言語」,「社会」,「難しい」というサブグラフからコミュニケーションに関しての相談があり,高次脳機能障害における失語の影響があるものの,対象者から考えると前頭葉の損傷が起因している認知コミュニケーション障害が起きていたのではないかと推測する. 「年金」,「精神」などから障害者年金や手帳など制度に関しての相談があったことと考えられる.
【まとめ】高次脳機能障害専門の施設で扱っている相談内容の分析を行った.結果,地域で生活する高次脳機能障害者には前頭葉障害の症状が原因で相談に来る人が多いこと,ADLではなくIADLの相談,コミュニケーションの障害に関すること,障害者手帳などの制度に関することが課題であることが分かった.