[PK-7-3] 若年性認知症の人の「意味のある作業」の実施とBPSDの関連
介護保険サービス事業所を対象とした横断研究
【はじめに】若年性認知症とは65歳未満に発症する認知症のことである.若年性認知症の人に対する支援の視点として,「ゆっくりとした症状の変化に沿った,それぞれの時期にあった切れ目のない支援」であるソフトランディングの視点が重要視されている.作業療法においても,生産的活動や余暇活動を通した本人の役割や生きがいの継続が重要であるが,若年性認知症の人が意味のある作業を継続することが認知症の行動・心理症状(BPSD)にどのように関連するかは不明である.特に,介護保険サービスの事業所は高齢者の利用が多く,若年性認知症の特性に合った支援を展開しづらい現状が,本人のBPSDにつながる可能性がある.そこで本研究では,若年性認知症の人の「意味のある作業」の実施とBPSDの関連について,介護保険サービス事業所を対象とした実態調査より明らかにすることを目的とした.
【方法】札幌市保健福祉局が所有する介護保険サービスの事業所のリストのうち,通所型・入所型・短期入所型・多機能型のいずれかのサービスを実施している1361事業所の介護・リハビリテーション部門の管理者に質問紙を郵送した.質問紙では,まず若年性認知症の人の受け入れ経験の有無を尋ね,「現在,若年性認知症の人を受け入れている」と回答した場合には,その若年性認知症の人の実態に関わる項目への回答を求めた.調査項目は,基本属性(年齢,性別,原因疾患,CDRによる重症度),意味のある作業の実施(実施・非実施),BPSDの有無(NPIを参考とした12項目)等とした.データ分析として,若年性認知症の人の基本属性を集計した後に,BPSDの各項目の有無による意味のある作業の実施割合を比較するために,χ2検定を施行した.次に,BPSDの各項目を従属変数,意味のある作業の実施を独立変数,重症度(軽度/中等度・重度)を調整変数としたロジスティック回帰分析を施行し,オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した.本研究は,所属機関倫理委員会の承認を受けた.調査対象者には,研究の概要および倫理的配慮を書面で説明し,同意書への記入をもって同意を得た.
【結果】回答を得た367事業所のうち,「現在,若年性認知症の人を受け入れている」と回答したのは54事業所であり,69名の若年性認知症の人の実態を把握した(うち女性46名,平均年齢63.5±6.4歳).まず,BPSDの各項目と「意味のある作業」の実施状況と比較したところ,BPSDのうち「無関心」を有する場合のみに「意味のある作業」の実施割合が有意に低かった(χ2=4.55, p=.033).次に,ロジスティック回帰分析を施行したところ,「無関心」を有さない群を基準とした場合,「無関心」を有する群の「意味のある作業」の実施割合に関する調整後OR(95%CI)は0.20(0.04–0.97)であり,有意な関連がみられた(p=.046).
【考察】介護保険サービス事業所を利用する若年性認知症の人において,「意味のある作業」を実施していないことは,BPSDのうち「無関心」を有することのリスク要因の一つである可能性が示唆された.介護保険サービスにおける意味のある作業を継続するための支援は,BPSDのうち無関心の予防に寄与する可能性があるかもしれない.今後は縦断的研究による更なる調査が求められる.
【方法】札幌市保健福祉局が所有する介護保険サービスの事業所のリストのうち,通所型・入所型・短期入所型・多機能型のいずれかのサービスを実施している1361事業所の介護・リハビリテーション部門の管理者に質問紙を郵送した.質問紙では,まず若年性認知症の人の受け入れ経験の有無を尋ね,「現在,若年性認知症の人を受け入れている」と回答した場合には,その若年性認知症の人の実態に関わる項目への回答を求めた.調査項目は,基本属性(年齢,性別,原因疾患,CDRによる重症度),意味のある作業の実施(実施・非実施),BPSDの有無(NPIを参考とした12項目)等とした.データ分析として,若年性認知症の人の基本属性を集計した後に,BPSDの各項目の有無による意味のある作業の実施割合を比較するために,χ2検定を施行した.次に,BPSDの各項目を従属変数,意味のある作業の実施を独立変数,重症度(軽度/中等度・重度)を調整変数としたロジスティック回帰分析を施行し,オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した.本研究は,所属機関倫理委員会の承認を受けた.調査対象者には,研究の概要および倫理的配慮を書面で説明し,同意書への記入をもって同意を得た.
【結果】回答を得た367事業所のうち,「現在,若年性認知症の人を受け入れている」と回答したのは54事業所であり,69名の若年性認知症の人の実態を把握した(うち女性46名,平均年齢63.5±6.4歳).まず,BPSDの各項目と「意味のある作業」の実施状況と比較したところ,BPSDのうち「無関心」を有する場合のみに「意味のある作業」の実施割合が有意に低かった(χ2=4.55, p=.033).次に,ロジスティック回帰分析を施行したところ,「無関心」を有さない群を基準とした場合,「無関心」を有する群の「意味のある作業」の実施割合に関する調整後OR(95%CI)は0.20(0.04–0.97)であり,有意な関連がみられた(p=.046).
【考察】介護保険サービス事業所を利用する若年性認知症の人において,「意味のある作業」を実施していないことは,BPSDのうち「無関心」を有することのリスク要因の一つである可能性が示唆された.介護保険サービスにおける意味のある作業を継続するための支援は,BPSDのうち無関心の予防に寄与する可能性があるかもしれない.今後は縦断的研究による更なる調査が求められる.