[PK-7-5] 在宅介護困難により入院加療後,自宅退院に至った重度認知症患者3例への作業療法:事例集積研究
【はじめに】認知症は進行とともに中核症状に行動・心理症状(BPSD)が加わり,在宅生活が困難となることが多い.今回,拒否や抵抗により在宅介護困難となり,入院加療を経て自宅退院に至った重度認知症患者3例について,作業療法の支援内容と退院に至った背景について考察し報告する.
【方法】在宅介護困難により入院加療し,自宅退院に至った重度認知症患者3例の事例集積研究である.PROCESS 2020 guidelineを参考に,診療録より情報を収集した.本研究についてご家族に説明し,同意を得た上で,個人が特定できないようプライバシーに配慮した.
【事例】事例1)80代,女性.アルツハイマー型認知症(発症から6年経過),徘徊による介護困難により入院し,4ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMini-Mental State Examination(MMSE) 0→0点,Cognitive Test for Severe Dementia(CTSD) 1→1点,Barthel Index(BI) 15→10点,阿部式BPSDスコア(BPSD) 17→4点,Functional Ambulation Categories(FAC) 0→0,認知症高齢者の健康関連QOL評価票 短縮版(short QOL-D) 15→18点,Vitality Index(VI) 3→3点であった.入院時は幻覚・妄想や介助拒否が強かった.夫は在宅療養の希望が強く,自宅での過ごし方についてのパンフレットを看護師とともに作成した.また,日中は転倒予防の観点から畳上の生活となることから,床上動作と移乗・移動動作を家族指導した.退院時には歩行誘導でトイレでの排泄が可能となった.以後,介護保険サービスの利用なく在宅生活を続けている.
事例2)80代,女性,アルツハイマー型認知症(発症から17年経過),介護抵抗により入院し,2ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMMSE 0→0点,CTSD 1→1点,BI 0→0点,BPSD 13→5点,FAC 0→0,short QOL-D 14→19点,VI 1→1点であった.入院時は,大声で叫ぶ,自傷行為も認めた.移乗時は反り返りが強く,2人重介助であり,車椅子からのずり落ちも見られた.夫は在宅療養を希望し,看護師と移乗介助の方法・座位姿勢を検討した.退院時は反り返り軽減し1人介助で移乗可能となり,自宅退院となった.
事例3)80代,女性,アルツハイマー型認知症(発症から7年経過),拒否強く介護困難により入院し,4ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMMSE 0→0点,CTSD 3→3点,BI 5→15点,BPSD 18→2点,FAC 0→0,short QOL-D 12→26点,VI 1→6点であった.入院時は食事の吐き出しや,移乗時も爪をたて抵抗するなど重介助であった.娘は在宅療養を希望し,退院前に移乗動作の家族指導を実施した.環境調整や声掛けのタイミング,介助の方向などを家族と共有し,軽介助で移乗可能となり自宅退院となった.
【考察】3例とも入院時に介護困難があったが,在宅療養へつながった.3例の共通点として,家族の介護意欲が高い,BPSDが入院時よりも軽快したこと,介助の拒否が軽減したことが挙げられる.いずれの例も在宅で重要な移乗,移動動作を中心に介助量の軽減を図り,生活環境に合わせた家族指導を看護師と共同で行った.介助方法の提案には,身体状況と精神機能を考慮し,環境調整,生活リズムや各々の動作の特徴を分析し,家族に分かりやすく提示することが重要と考える.特に認知症の状況により,上手くできる時と,そうでない時があることを家族と十分共有する必要がある.
【結語】本研究は,介護困難な重度認知症患者の自宅退院には,家族の介護意欲,BPSDや介助拒否の改善など様々な要因が関連し,移乗・移動動作を中心に家族への多方面からの指導,支援が重要であることを示唆している.今後は,さらに自宅退院が困難であった例と比較し,自宅退院に関連する要因について検討していくことが必要であると考える.
【方法】在宅介護困難により入院加療し,自宅退院に至った重度認知症患者3例の事例集積研究である.PROCESS 2020 guidelineを参考に,診療録より情報を収集した.本研究についてご家族に説明し,同意を得た上で,個人が特定できないようプライバシーに配慮した.
【事例】事例1)80代,女性.アルツハイマー型認知症(発症から6年経過),徘徊による介護困難により入院し,4ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMini-Mental State Examination(MMSE) 0→0点,Cognitive Test for Severe Dementia(CTSD) 1→1点,Barthel Index(BI) 15→10点,阿部式BPSDスコア(BPSD) 17→4点,Functional Ambulation Categories(FAC) 0→0,認知症高齢者の健康関連QOL評価票 短縮版(short QOL-D) 15→18点,Vitality Index(VI) 3→3点であった.入院時は幻覚・妄想や介助拒否が強かった.夫は在宅療養の希望が強く,自宅での過ごし方についてのパンフレットを看護師とともに作成した.また,日中は転倒予防の観点から畳上の生活となることから,床上動作と移乗・移動動作を家族指導した.退院時には歩行誘導でトイレでの排泄が可能となった.以後,介護保険サービスの利用なく在宅生活を続けている.
事例2)80代,女性,アルツハイマー型認知症(発症から17年経過),介護抵抗により入院し,2ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMMSE 0→0点,CTSD 1→1点,BI 0→0点,BPSD 13→5点,FAC 0→0,short QOL-D 14→19点,VI 1→1点であった.入院時は,大声で叫ぶ,自傷行為も認めた.移乗時は反り返りが強く,2人重介助であり,車椅子からのずり落ちも見られた.夫は在宅療養を希望し,看護師と移乗介助の方法・座位姿勢を検討した.退院時は反り返り軽減し1人介助で移乗可能となり,自宅退院となった.
事例3)80代,女性,アルツハイマー型認知症(発症から7年経過),拒否強く介護困難により入院し,4ヶ月後自宅退院した.作業療法評価(入院時→退院時)はMMSE 0→0点,CTSD 3→3点,BI 5→15点,BPSD 18→2点,FAC 0→0,short QOL-D 12→26点,VI 1→6点であった.入院時は食事の吐き出しや,移乗時も爪をたて抵抗するなど重介助であった.娘は在宅療養を希望し,退院前に移乗動作の家族指導を実施した.環境調整や声掛けのタイミング,介助の方向などを家族と共有し,軽介助で移乗可能となり自宅退院となった.
【考察】3例とも入院時に介護困難があったが,在宅療養へつながった.3例の共通点として,家族の介護意欲が高い,BPSDが入院時よりも軽快したこと,介助の拒否が軽減したことが挙げられる.いずれの例も在宅で重要な移乗,移動動作を中心に介助量の軽減を図り,生活環境に合わせた家族指導を看護師と共同で行った.介助方法の提案には,身体状況と精神機能を考慮し,環境調整,生活リズムや各々の動作の特徴を分析し,家族に分かりやすく提示することが重要と考える.特に認知症の状況により,上手くできる時と,そうでない時があることを家族と十分共有する必要がある.
【結語】本研究は,介護困難な重度認知症患者の自宅退院には,家族の介護意欲,BPSDや介助拒否の改善など様々な要因が関連し,移乗・移動動作を中心に家族への多方面からの指導,支援が重要であることを示唆している.今後は,さらに自宅退院が困難であった例と比較し,自宅退院に関連する要因について検討していくことが必要であると考える.