[PK-7-6] 認知症カフェの利用と家族の生きがい感の関係
【はじめに】
認知症を持つ当事者とその家族は,人生の展望から,深い悩みと不安にさらされていると思われ,家族の中には,心理的に疲弊し,抑うつ気分を伴い,生きがい感を無くしている可能性がある.認知症カフェ(以下カフェ)は当事者やその家族,地域住民,専門職がお互いを理解し合う場として全国に広がり,当事者とその家族は,カフェに参加することで,新しいコミュニティの場として活用している.つまり,カフェの参加回数が多いほど,当事者の家族は悩みを打ち明けることが増え,生きがい感を高めることができるのではないかと考える.
【目的】
本研究では,カフェの参加回数が,家族の生きがい感に影響しているかを調査した.
【方法】
2021年8月1日から2023年12月31日までに,A医療法人が実施しているカフェに参加した認知症当事者の家族を対象とした.研究デザインは前向き観察研究で,カフェに参加した認知症当事者の家族に生きがい感スケール(K-Ⅰ式)1)を評価した.カフェ参加回数と生きがい感スケールとの関係性を理解するために相関分析を実施した.生きがい感スケールはカフェ参加中に実施し,得られた個人情報は匿名化し保護した.本研究は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
調査期間に回答がえられた当事者の家族は16人で,同居家族は13人(81%)であった.16人のうち5人の家族は対象期間中に2回評価した.生きがい感スケールは全体で21件の回答が得られ,評価は,初回参加時が11件,2回目参加時が1件,3回目参加時が1件,4回目参加時が2件,6回目参加時が2件,7回目参加時が1件,8回目参加時が1件,12回目参加時が1件,18回目参加時が1件であり,評価時のカフェ参加回数の平均は3.9±4.5回であった.21件の生きがい感スケールの平均得点は25.4±3.6点で,「大変高い:32~28点」が6件,「高いほう:27~24点」が9件,「ふつう:23~17点」が6件であり,「低いほう:16~13点」,「大変低い:12~0点」は認めなかった.カフェ参加回数と生きがい感スケール得点に関連(r=0.29,p=0.19)はなかった.
【考察】
カフェ参加回数が多いほど,生きがい感が高くなるのではないかと考えていたが,関連は見られなかった.これは,全ての家族で生きがい感スケール得点が「ふつう:23~17点」以上であり,カフェに参加する家族は,ある程度の生きがい感をもって参加していることが考えられた.また,生きがい感スケールの因子の一つに「自己実現と意欲」がある.カフェへ参加するためには,自宅からの距離や当事者自身の状態,家族の生活状況など,様々なことが影響してくると思われる.その中で,家族がカフェに参加しようと意思決定するためには,「参加することで何かを得たい」といった,家族自身の意欲が必要かもしれない.つまり,当事者の家族がカフェを利用するためには,スタッフや他家族へ悩みを打ち明けることで,主体的に参加するための内発的な力を維持していく必要があると思われる.今回の調査では16人の家族へ評価を行ったが,すべての参加家族に対して2回以上の評価を実施することができなかった.参加を強要できないカフェにおいて,継続的に参加して頂くための家族を含めた役割の創出や,参加に前向きになるような家族同士の関わりの工夫,カフェの効果を検証する方法の工夫が課題と思われる.
1)近藤勉,鎌田次郎.高齢者向け生きがい感スケール(K-Ⅰ式)の作成および生きがい感の定義.社会福祉学第43巻第2号.2003
認知症を持つ当事者とその家族は,人生の展望から,深い悩みと不安にさらされていると思われ,家族の中には,心理的に疲弊し,抑うつ気分を伴い,生きがい感を無くしている可能性がある.認知症カフェ(以下カフェ)は当事者やその家族,地域住民,専門職がお互いを理解し合う場として全国に広がり,当事者とその家族は,カフェに参加することで,新しいコミュニティの場として活用している.つまり,カフェの参加回数が多いほど,当事者の家族は悩みを打ち明けることが増え,生きがい感を高めることができるのではないかと考える.
【目的】
本研究では,カフェの参加回数が,家族の生きがい感に影響しているかを調査した.
【方法】
2021年8月1日から2023年12月31日までに,A医療法人が実施しているカフェに参加した認知症当事者の家族を対象とした.研究デザインは前向き観察研究で,カフェに参加した認知症当事者の家族に生きがい感スケール(K-Ⅰ式)1)を評価した.カフェ参加回数と生きがい感スケールとの関係性を理解するために相関分析を実施した.生きがい感スケールはカフェ参加中に実施し,得られた個人情報は匿名化し保護した.本研究は当院の倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
調査期間に回答がえられた当事者の家族は16人で,同居家族は13人(81%)であった.16人のうち5人の家族は対象期間中に2回評価した.生きがい感スケールは全体で21件の回答が得られ,評価は,初回参加時が11件,2回目参加時が1件,3回目参加時が1件,4回目参加時が2件,6回目参加時が2件,7回目参加時が1件,8回目参加時が1件,12回目参加時が1件,18回目参加時が1件であり,評価時のカフェ参加回数の平均は3.9±4.5回であった.21件の生きがい感スケールの平均得点は25.4±3.6点で,「大変高い:32~28点」が6件,「高いほう:27~24点」が9件,「ふつう:23~17点」が6件であり,「低いほう:16~13点」,「大変低い:12~0点」は認めなかった.カフェ参加回数と生きがい感スケール得点に関連(r=0.29,p=0.19)はなかった.
【考察】
カフェ参加回数が多いほど,生きがい感が高くなるのではないかと考えていたが,関連は見られなかった.これは,全ての家族で生きがい感スケール得点が「ふつう:23~17点」以上であり,カフェに参加する家族は,ある程度の生きがい感をもって参加していることが考えられた.また,生きがい感スケールの因子の一つに「自己実現と意欲」がある.カフェへ参加するためには,自宅からの距離や当事者自身の状態,家族の生活状況など,様々なことが影響してくると思われる.その中で,家族がカフェに参加しようと意思決定するためには,「参加することで何かを得たい」といった,家族自身の意欲が必要かもしれない.つまり,当事者の家族がカフェを利用するためには,スタッフや他家族へ悩みを打ち明けることで,主体的に参加するための内発的な力を維持していく必要があると思われる.今回の調査では16人の家族へ評価を行ったが,すべての参加家族に対して2回以上の評価を実施することができなかった.参加を強要できないカフェにおいて,継続的に参加して頂くための家族を含めた役割の創出や,参加に前向きになるような家族同士の関わりの工夫,カフェの効果を検証する方法の工夫が課題と思われる.
1)近藤勉,鎌田次郎.高齢者向け生きがい感スケール(K-Ⅰ式)の作成および生きがい感の定義.社会福祉学第43巻第2号.2003