[PK-9-3] 当院の自動車運転評価における年齢・神経心理学的検査と適・不適判定の関連の検討
自動車運転評価のフローチャートを用いて
【はじめに】
加藤ら(2022)によると,脳損傷者の自動車運転技能予測に関して神経心理学的検査と実車評価の関連を検討した研究の蓄積が国内外でなされた結果,「日本高次脳機能障害学会BFT委員会 運転に関する神経心理学的評価法検討小委員会」は2020年に「神経心理学的検査に基づく自動車運転評価のフローチャート(以下フローチャート)」と神経心理学的検査の判定基準を示した.これに基づき,公立みつぎ総合病院(以下当院)では,2021年に当院の「脳損傷者の自動車運転支援マニュアル(以下マニュアル)」を改訂し,自動車運転評価(以下運転評価)を行ってきた.運転評価では実車評価が推奨されており,当院でも自動車教習所との連携を試みているが,実施できた者はまだ少ない.そのため神経心理学的検査と画像・神経学的所見,生活歴等から医師が総合的に運転適・不適の判定を行っている.マニュアル改訂から2年半が経過したため,運転評価を受けた患者の年齢・神経心理学的検査と,運転適・不適の判定の関連の検討を行った.
【目的】
年齢・神経心理学的検査と運転適・不適の判定の関連について検討すること.
【対象】
2021年4月1日から2023年9月30日までに運転評価を行った入院及び外来患者81名のうち,現在のマニュアルに則らない神経心理学的検査を実施した19名を除外した,62名(年齢の中央値71歳・範囲45-92,男性51名・女性11名).
【方法】
当院の運転評価データベースから運転適・不適の判定と,調査項目として年齢,神経心理学的検査(MMSE,BIT,TMT-J(A),TMT-J(B),WAIS-Ⅳ符号,WAIS-Ⅳ積み木模様)結果について情報収集し,後方視的に調査した.運転適・不適群間の年齢・神経心理学的検査(以下検査)結果の差を見るためにU検定を用いた.全ての検定の有意水準はp=0.01とした.なお,本研究は当院倫理委員会の審査で承認を得て実施し,対象者にはオプトアウトの方法で同意を得た.
【結果】
運転適22名,不適40名.以下,各調査項目について適・不適群順に中央値と範囲を示す.年齢65歳(45-81)・75歳(50-92),MMSE29点(25-30)・26.5点(19-30),BIT 144.5点(141-146)・140点(124-146),TMT-J(A)41.5秒(22-71)・65秒(30-202),TMT-J(B)63秒(41-92)・162.5秒(53-400),WAIS-Ⅳ符号69個(49-92)・38.5個(16-72),WAIS-Ⅳ積み木模様46点(29-61)・28点(18-48)であった.U検定の結果,適・不適群間において,すべての調査項目にp<0.01で有意な差が認められた.
【考察】
適群より不適群の年齢が高いという年齢の有意差は,先行研究(山田ら2013,前田ら2022)と一致した.従って高齢であると不適の判定になる可能性が高いことが示唆された.また不適群において全ての検査成績が低下しており,適・不適群間で全ての検査に有意差が認められた.これは先行研究(山田ら2013,加藤ら2017)と同様の傾向であった.このことから,単一の検査でなく,複数かつ多様な認知機能を評価できるように作成されたフローチャートに基づいた当院のマニュアルが適切であること,全検査項目が適・不適の判定に重要であることが示唆されたと考える.
加藤ら(2022)によると,脳損傷者の自動車運転技能予測に関して神経心理学的検査と実車評価の関連を検討した研究の蓄積が国内外でなされた結果,「日本高次脳機能障害学会BFT委員会 運転に関する神経心理学的評価法検討小委員会」は2020年に「神経心理学的検査に基づく自動車運転評価のフローチャート(以下フローチャート)」と神経心理学的検査の判定基準を示した.これに基づき,公立みつぎ総合病院(以下当院)では,2021年に当院の「脳損傷者の自動車運転支援マニュアル(以下マニュアル)」を改訂し,自動車運転評価(以下運転評価)を行ってきた.運転評価では実車評価が推奨されており,当院でも自動車教習所との連携を試みているが,実施できた者はまだ少ない.そのため神経心理学的検査と画像・神経学的所見,生活歴等から医師が総合的に運転適・不適の判定を行っている.マニュアル改訂から2年半が経過したため,運転評価を受けた患者の年齢・神経心理学的検査と,運転適・不適の判定の関連の検討を行った.
【目的】
年齢・神経心理学的検査と運転適・不適の判定の関連について検討すること.
【対象】
2021年4月1日から2023年9月30日までに運転評価を行った入院及び外来患者81名のうち,現在のマニュアルに則らない神経心理学的検査を実施した19名を除外した,62名(年齢の中央値71歳・範囲45-92,男性51名・女性11名).
【方法】
当院の運転評価データベースから運転適・不適の判定と,調査項目として年齢,神経心理学的検査(MMSE,BIT,TMT-J(A),TMT-J(B),WAIS-Ⅳ符号,WAIS-Ⅳ積み木模様)結果について情報収集し,後方視的に調査した.運転適・不適群間の年齢・神経心理学的検査(以下検査)結果の差を見るためにU検定を用いた.全ての検定の有意水準はp=0.01とした.なお,本研究は当院倫理委員会の審査で承認を得て実施し,対象者にはオプトアウトの方法で同意を得た.
【結果】
運転適22名,不適40名.以下,各調査項目について適・不適群順に中央値と範囲を示す.年齢65歳(45-81)・75歳(50-92),MMSE29点(25-30)・26.5点(19-30),BIT 144.5点(141-146)・140点(124-146),TMT-J(A)41.5秒(22-71)・65秒(30-202),TMT-J(B)63秒(41-92)・162.5秒(53-400),WAIS-Ⅳ符号69個(49-92)・38.5個(16-72),WAIS-Ⅳ積み木模様46点(29-61)・28点(18-48)であった.U検定の結果,適・不適群間において,すべての調査項目にp<0.01で有意な差が認められた.
【考察】
適群より不適群の年齢が高いという年齢の有意差は,先行研究(山田ら2013,前田ら2022)と一致した.従って高齢であると不適の判定になる可能性が高いことが示唆された.また不適群において全ての検査成績が低下しており,適・不適群間で全ての検査に有意差が認められた.これは先行研究(山田ら2013,加藤ら2017)と同様の傾向であった.このことから,単一の検査でなく,複数かつ多様な認知機能を評価できるように作成されたフローチャートに基づいた当院のマニュアルが適切であること,全検査項目が適・不適の判定に重要であることが示唆されたと考える.