第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-1] ポスター:援助機器 1 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PL-1-4] 体型と姿勢による座位体圧分布の検討

岩尾 武宜1, 荻野 浩希2, 新川 依里3 (1.関東労災病院 中央リハビリテーション部, 2.関東労災病院 形成外科, 3.関東労災病院 看護部)

【序論】
 近年,高齢化社会に伴い褥瘡リスクが高い入院患者が増加している.作業療法の専門性として福祉用具の選定や使用が挙げられ,当院でも褥瘡リスクが高い患者に対して病棟看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師と共同しクッションや背部サポートなどを用いたシーティングを実施している.しかし,適切に使用できたかの効果判定の根拠が乏しく,疑問を残しながら介入しているのが現状である.
 今回,体圧測定器を使用し体型と姿勢による違いを検討することで,今後の選択の一助となったため報告する.協力いただいた被検者には口頭で同意を得ている.
【目的】
 体型と姿勢による体圧の違いを比較し検証する
【方法】
 体圧測定器はAzwil(タカノ株式会社)を使用.最大240mmHgまで測定可能.
被検者①:40代男性 164㎝,58㎏(BMI 21.56),被検者②:70代男性172㎝41.9㎏(BMI 14.16)仙骨部に褥瘡あり.被検者③:80代男性 160㎝46.9㎏(BMI 18.32)胸椎,仙骨・尾骨に骨突出を認め胸椎に褥瘡,長時間座位で尾骨部発赤あり.
姿勢による比較(被検者①,②):車椅子座位で,股関節90度,90度以上,90度以下(仙骨座り)の3姿勢における体圧の最高値,集中する部位,平均値を比較した.
体型による比較(被検者①,③):測定姿位は訓練ベッド端坐位で足底接地した状態とし,クッションなし,1層ウレタン,2層ウレタン,空気調節クッションの4パターンを測定し比較した.
【結果】
 姿勢の違いによる比較:90度座位では,被検者①は両座骨部で支持し最大値117mmHg,平均圧30.7mmHg.被検者②は両座骨と尾骨の3点に集中し240mmHg以上で平均圧119.8mmHgであった.90度以上は,被検者①は両座骨部で支持し最大値158mmHg,平均圧43.4mmHg,被検者②は両座骨と尾骨の3点に集中し90度座位と同様に240mmHg以上で平均圧は123.1mmHgとさらに上昇していた.90度以下は,被検者①は仙骨部で支持し最大値140.4mmHg,平均圧40.4mmHg,被検者②は両座骨と尾骨の3点に集中し240mmHg以上で平均圧119.7mmHgであった.
 体型の違いによる比較:クッションなしでは,被検者①は両座骨部で支持し最大値240mmHg以上,平均圧46.4mmHg.被検者③は両座骨部で支持し最大値240mmHg以上,平均圧93.0mmHgであった.1層ウレタンは,被検者①は両座骨部で支持し最大値189.0mmHg,平均圧34.1mmHg.被検者③は右座骨部に集中し最大値240mmHg以上,平均圧58.9mmHgであった.2層ウレタンは被検者①は両座骨部で支持し最大値73mmHg,平均圧23.5mmHg.被検者③は右座骨部に集中し最大値145.0mmHg,平均圧23.9mmHgであった.空気調節クッションは被検者①は両座骨部で支持し最大値65mmHg,平均圧31.9mmHg.被検者③は座骨から座面全体に分散し最大値72.0mmHg,平均圧29.9mmHgであった.
【考察】
 体型による接触面の違いが体圧に影響し,同機能のクッションを使用しても骨突出部により底付きの可能性が高いことが分かった.これはクッションの素材や厚さを選択する際に重要な視点であるといえる.成人に比べ高齢者は臀部の筋委縮が著明である.体圧が40mmHg以上で褥瘡リスクが高まる報告もあり,姿勢による違いが出やすいことを示したことは,ポジショニングや定期的な除圧の必要性もさらに理解できる.今回は使用した測定器の上限値を超え,あくまで参考値ではあったが,傾向をつかむうえでも判断への一助になると言える.