第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

MTDLP

[PM-2] ポスター:MTDLP 2 

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PM-2-3] 当院におけるMTDLP活用状況の実態調査と課題に対する取り組み

野口 智裕 (江東リハビリテーション病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
日本作業療法士協会より,作業療法士(以下,OT)の一つの臨床思考過程を説明したツールとして,生活行為向上マネジメント(Management tool for daily performance:以下,MTDLP)が開発された.MTDLPは生活目標や支援内容を共有するツールとしても活用する事ができ,活用効果として,「目標設定が出来て,患者様との目標共有ができた」,「患者様の自発性・意欲向上につながった」との報告がみられている.当院の作業療法でも,多職種連携や地域の医療・介護スタッフとの情報共有,患者との目標共有を図る目的で,MTDLPの導入を行った.導入するにあたりOTを対象に複数回の勉強会を実施したが,現場での普及には至らなかった.先行研究において,作成に時間を要することやMTDLPについての知識が少ないとの理由で臨床実習や臨床場面での活用は少ないとの報告があった.
【目的】
本研究の目的は,当院のMTDLP活用状況を調査し,院内におけるMTDLP活用の実態と課題を調査する事である.また,MTDLP導入における課題に対しての取り組み成果を明らかにする事である.
【研究方法】
当院に在籍しているOT75名(1〜3年目50名,4〜6年目8名,7〜9年目10名,10年目以上7名)に対し,アンケート調査を実施した.アンケートの内容は,①MTDLPを使用した事があるか,②MTDLPの基礎研修に参加したことがあるか,③使用していない方はなぜ使っていないのか,④今後MTDLPを活用したいかの4項目とした.期間は令和4年4月〜令和5年12月とした.調査方法はGoogle formを使用したアンケートを実施した.また,取り組み後にも同様の内容で再度Google formでのアンケート調整を実施した.本研究を実施するにあたり,対象者には研究の趣旨および任意での参加を説明し同意を得ている.
【結果】
MTDLP活用に関するアンケート調査の結果,MTDLPを使用した事がある割合は対象75名中15名(回答率100%)であった.活用状況の年数は,1〜3年目4名,4〜6年目4名,7〜9年目2名,10年目以上5名であった.活用できていない理由は,研修会に参加していない27名,活用場面が分からない18名,活用が難しい6名,活用する時間がない9名であった.今後,活用したいと思っている割合は対象75名中71名であった.MTDLP基礎研修への参加は対象75名中15名であった.アンケートの結果,課題として研修会の未受講や活用方法が分からない事が要因として抽出された.課題解決方法として,①講習会受講の促進,②定期的な勉強会の開催,③MTDLPの相談窓口の設置,④ADOCの導入を当院での取り組みとして実施した.取り組みの結果,MTDLPを活用した割合は,対象75名中30名となり40%に増加した.活用した経験年数の内訳としては,1〜3年目5名,4〜6年10名,7〜9年目10名,10年目以上5名であり,卒前教育でMTDLPの講義を受講していない年代の活用率も向上した.MTDLP基礎研修への参加は対象75名中24名と32%に増加した.研修会受講者のMTDLP活用率は対象24名中24名(100%)で,未受講者のMTDLP活用率は対象51名中6名であった.
【考察】
今回のアンケート調査の結果では,研修会の受講者の方が現場でのMTDLP活用率が高く,MTDLPの研修会受講を促す事で知識や技術の取得に繋がり,現場での活用率向上に寄与する可能性がある事が示唆された.知識や技術を習得できる院内での研修会を継続して実施していく事が更なる活用率向上に繋がると考える.また,活用場面が分からず難渋していた対象者については,ADOCを導入した事により,インテーク面接での目標設定が円滑に行えるようになり,MTDLPの活用率向上に繋がったと考えた.