[PM-4-4] 生活行為向上マネジメントを使用し退院後も釣りへの参加を目指した支援が継続できた症例
【はじめに】生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)の目的は急性期から生活期まで,切れ目のない支援を行う事により「対象者がしたい・する必要のある・することが期待されている」さまざまな生活行為を「できる」ようにする事である(柴田2016).今回,MTDLPを用いて退院後の釣りへの参加を見据え,入院中に達成可能な具体的な目標へ取り組み,他院の外来リハビリテーション(以下外来リハ)へ引き継いだ.その結果,退院後も継続的に釣りへの参加に向けて取り組めた症例を経験したので報告を行う.尚,発表に際して症例の同意を得ている.
【症例紹介】70代男性A氏.アパート1階に独居.病前ADLは全自立.職業は大工.趣味は友人との釣り.利き手は右.X年Y月Z日,仕事中に2階の現場から転落し,当院へ救急搬送.CT検査にて右第2,3手根中手関節開放性脱臼骨折,左第5-7肋骨骨折,両側脛骨顆間隆起骨折,左母趾中節骨骨折,左楔状骨骨折の診断となり,即時入院.同日に右第2,3手根中手関節開放性脱臼骨折に対し,ピンニング術を施行.
【作業療法評価】作業療法開始時(Z+7日)は,骨折部の疼痛が強く,車椅子への移乗も5人介助であったが,Z+83日にはADLが自立に至り,本人より「また釣りに行きたい」と希望があった. MTDLPを導入し,退院後の釣りへの参加を見据え,必要な連続する生活行為課題を釣具屋への買い物,釣具の操作,釣り場への移動と釣り場での動作に整理した.導入開始時では手関節,手指の軽度関節可動域制限があったが,簡易上肢機能検査にて左90点,右78点.握力は左27.5kgf,右10kgfで釣具の操作は可能であった.下肢は両膝関節屈曲:左85°,右90°.MMTは両下肢共に3レベル. 5回立ち上がりテストは28”5で努力的だった. ADLはFIM125点. 歩行は独歩にて500m以上可能.階段昇降は手すりが必要であった.
【合意目標】生活行為課題分析シートを用いて,課題の優先順位を整理し,合意目標は都バスを利用した釣具屋での買い物を目指し,「左手で荷物を持ち,右手で縦手すりを使用し高さ30cm台(都バス昇降口の最大を想定した高さ)を昇降できる」とした. 初期の実行度,満足度は共に3であった.
【介入経過】MTDLP導入時では30cm台の昇降は困難で,側方介助を要していた.PTと昇段方法を相談しながら,両膝関節可動性,下肢筋力の向上を図った.また本人と共に,インターネットを使用し買い物時の移動場面や釣り場の環境を確認し,家族や友人からの支援内容を検討すると共に,釣り時に使用する高さ変更可能な椅子の導入などを進めた.膝関節の可動域と下肢筋力の向上により30cm台の昇段は可能となったが,膝関節の可動性が不足し降段は不安定であった.そこで降段時は後ろ向きに降りる方法を指導し降段可能となった.生活行為申し送り表を使用し,買い物に家族が付き添いでき,釣り場へ友人が車で送迎可能な支援状況である事や釣り場に降りる階段には手すりがない環境である事を他院の外来リハ担当者宛に引き継ぎを行った.
【結果】合意目標は達成し,遂行度6点,満足度6点.両膝関節屈曲:左90°,右100°.MMTは両下肢共に4レベル. 5回立ち上がりテストは16”4.退院3週間後に都バスを利用した買い物が可能となり,外来にて釣り道具を持っての安定した階段昇降や低い椅子からの立ち上がりを目指し継続している.
【考察】入院中から達成可能な課題を明確化し,退院後の家族や友人の支援状況や釣り場の環境を検討,確認し外来リハに共有した事で継続した支援の一助になれたと考える.実動作場面での介入に制限のある入院環境での支援に難しさを感じるが,退院後の生活行為を見据え包括的に介入し,地域と連携した継続的な支援は対象者のしたい,する必要のある生活行為の達成を目指す事が出来ると考える.
【症例紹介】70代男性A氏.アパート1階に独居.病前ADLは全自立.職業は大工.趣味は友人との釣り.利き手は右.X年Y月Z日,仕事中に2階の現場から転落し,当院へ救急搬送.CT検査にて右第2,3手根中手関節開放性脱臼骨折,左第5-7肋骨骨折,両側脛骨顆間隆起骨折,左母趾中節骨骨折,左楔状骨骨折の診断となり,即時入院.同日に右第2,3手根中手関節開放性脱臼骨折に対し,ピンニング術を施行.
【作業療法評価】作業療法開始時(Z+7日)は,骨折部の疼痛が強く,車椅子への移乗も5人介助であったが,Z+83日にはADLが自立に至り,本人より「また釣りに行きたい」と希望があった. MTDLPを導入し,退院後の釣りへの参加を見据え,必要な連続する生活行為課題を釣具屋への買い物,釣具の操作,釣り場への移動と釣り場での動作に整理した.導入開始時では手関節,手指の軽度関節可動域制限があったが,簡易上肢機能検査にて左90点,右78点.握力は左27.5kgf,右10kgfで釣具の操作は可能であった.下肢は両膝関節屈曲:左85°,右90°.MMTは両下肢共に3レベル. 5回立ち上がりテストは28”5で努力的だった. ADLはFIM125点. 歩行は独歩にて500m以上可能.階段昇降は手すりが必要であった.
【合意目標】生活行為課題分析シートを用いて,課題の優先順位を整理し,合意目標は都バスを利用した釣具屋での買い物を目指し,「左手で荷物を持ち,右手で縦手すりを使用し高さ30cm台(都バス昇降口の最大を想定した高さ)を昇降できる」とした. 初期の実行度,満足度は共に3であった.
【介入経過】MTDLP導入時では30cm台の昇降は困難で,側方介助を要していた.PTと昇段方法を相談しながら,両膝関節可動性,下肢筋力の向上を図った.また本人と共に,インターネットを使用し買い物時の移動場面や釣り場の環境を確認し,家族や友人からの支援内容を検討すると共に,釣り時に使用する高さ変更可能な椅子の導入などを進めた.膝関節の可動域と下肢筋力の向上により30cm台の昇段は可能となったが,膝関節の可動性が不足し降段は不安定であった.そこで降段時は後ろ向きに降りる方法を指導し降段可能となった.生活行為申し送り表を使用し,買い物に家族が付き添いでき,釣り場へ友人が車で送迎可能な支援状況である事や釣り場に降りる階段には手すりがない環境である事を他院の外来リハ担当者宛に引き継ぎを行った.
【結果】合意目標は達成し,遂行度6点,満足度6点.両膝関節屈曲:左90°,右100°.MMTは両下肢共に4レベル. 5回立ち上がりテストは16”4.退院3週間後に都バスを利用した買い物が可能となり,外来にて釣り道具を持っての安定した階段昇降や低い椅子からの立ち上がりを目指し継続している.
【考察】入院中から達成可能な課題を明確化し,退院後の家族や友人の支援状況や釣り場の環境を検討,確認し外来リハに共有した事で継続した支援の一助になれたと考える.実動作場面での介入に制限のある入院環境での支援に難しさを感じるが,退院後の生活行為を見据え包括的に介入し,地域と連携した継続的な支援は対象者のしたい,する必要のある生活行為の達成を目指す事が出来ると考える.