[PM-5-3] 中心性脊髄損傷の症例に対し急性期からMTDLPを導入し家事動作自立を目指した事例
【はじめに】生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)とは人間が行う生活行為全般を行うために,必要となる動作を分析し,計画を立て,実行するまでの一連の支援の手法を指す¹⁾.長谷川²⁾は入院中早期からの活用を試みた研究によると意識障害やコミュニケーション障害が軽度であれば発症後4~17日以内の活用が可能であったと述べている.今回中心性脊髄損傷により四肢麻痺,感覚障害,異常感覚等を呈した症例に対し急性期からMTDLPを導入し目標設定を行い,自宅での家事動作の獲得を目標とした.急性期では身辺動作の自立,具体的には箸での食事動作自立,トイレ動作の自立を目標とし,結果それらを含む全てのADL自立となったためその経過について報告する.
【症例紹介】60歳代女性.自宅にて四肢麻痺,両上肢の痺れを認め体動困難となり救急要請.中心性脊髄損傷,後縦靭帯骨化症の診断となり脳外科へ入院.入院から2日後頸椎後方除圧固定術を施行.既往歴は胆嚢炎,不眠症,くも膜嚢腫,C4/C5の頚髄症.生活歴は夫と2人暮らしで専業主婦.尚本報告は症例からの同意,倫理員会の承認を得ている.
【作業療法評価】意識は清明で認知機能は正常.Hopeは家事動作の獲得.身体機能は, Manual Muscle Test(以下MMT)右上肢2,手指2,下肢3,左上肢2,手指2,下肢3.デルマトームC4~C8領域に痛みを伴う激しい異常感覚と表在感覚鈍麻,四肢体幹の深部覚/表在覚中等度鈍麻,四肢体幹失調,膀胱直腸障害を認めた. ASIA機能障害尺度(ASIA impairment scale:以下AIS)gradeC,改良Frankel分類はC2,JOAスコア2.5点であった.基本動作は重度介助,ADLは全介助であった.術後1週間後MTDLPを導入し,希望であった調理動作の獲得を最終目標とし,当院でADL動作の自立を目標とした.
【経過】介入当初は人の手を借りず生活ができるようになるのかと不安の訴えがあった.介入1週間後にMTDLPを導入.当院での最終目標は移動含むトイレ動作自立.合意目標は歩行器歩行獲得と更衣,整容,食事動作の自立とした.目標の遂行度と満足度は共に1/10点.訓練では課題指向型訓練を取り入れ,機能向上に合わせて難易度調整し介入.目標を細かく設定したことで達成感を感じながら病棟生活を送ることができ,患者から自発的に実際の食事で箸を使って食べてみたい等意欲的な発言が増えた.42病日に回復期病院へ転院する際,医療への申し送り表を参考に施設間連絡書にて申し送りを行った.
【最終評価】四肢麻痺は右上下肢MMT4,左上下肢MMT4まで改善.指尖に軽度異常感覚,深部覚,体幹失調が残存したが基本動作は修正自立まで改善.トイレは歩行器歩行にて移動自立,トイレ内動作も手すり使用し自立となった.他更衣,整容も自立,食事はスプーンと箸を併用し自立となった.目標の遂行度10/10点,満足度8/10点と大幅な向上を認めた.満足度の減点としては,動作はできるがもう少し上手にできるようになりそうだからというものだった.
【考察】中心性脊髄損傷の予後予測として,下肢麻痺は上肢麻痺と比較し軽度であることが多いため歩行予後は良いとされている⁷⁾. 歩行の予後予測に関しては,72時間時点で65歳未満かつAIS:gradeCである場合,実用性があるとされるgradeDとなる確率は70%⁷⁾.JOAスコアが2~3点であれば歩行獲得の可能性があるとされている⁸⁾.上肢麻痺は回復に遅延するが家庭復帰が可能であった報告もあり,本症例も環境調整をした上での家庭復帰は可能となるのではないかと考え,MTDLPを用いて目標設定を行った. 短期目標を具体的に行ったことで,成功体験を通して自信がつき不安感の訴えは減少し行動変容が起きた.急性期病棟でもMTDLPを活用し,早期からQOL向上に役立てていきたい.
【症例紹介】60歳代女性.自宅にて四肢麻痺,両上肢の痺れを認め体動困難となり救急要請.中心性脊髄損傷,後縦靭帯骨化症の診断となり脳外科へ入院.入院から2日後頸椎後方除圧固定術を施行.既往歴は胆嚢炎,不眠症,くも膜嚢腫,C4/C5の頚髄症.生活歴は夫と2人暮らしで専業主婦.尚本報告は症例からの同意,倫理員会の承認を得ている.
【作業療法評価】意識は清明で認知機能は正常.Hopeは家事動作の獲得.身体機能は, Manual Muscle Test(以下MMT)右上肢2,手指2,下肢3,左上肢2,手指2,下肢3.デルマトームC4~C8領域に痛みを伴う激しい異常感覚と表在感覚鈍麻,四肢体幹の深部覚/表在覚中等度鈍麻,四肢体幹失調,膀胱直腸障害を認めた. ASIA機能障害尺度(ASIA impairment scale:以下AIS)gradeC,改良Frankel分類はC2,JOAスコア2.5点であった.基本動作は重度介助,ADLは全介助であった.術後1週間後MTDLPを導入し,希望であった調理動作の獲得を最終目標とし,当院でADL動作の自立を目標とした.
【経過】介入当初は人の手を借りず生活ができるようになるのかと不安の訴えがあった.介入1週間後にMTDLPを導入.当院での最終目標は移動含むトイレ動作自立.合意目標は歩行器歩行獲得と更衣,整容,食事動作の自立とした.目標の遂行度と満足度は共に1/10点.訓練では課題指向型訓練を取り入れ,機能向上に合わせて難易度調整し介入.目標を細かく設定したことで達成感を感じながら病棟生活を送ることができ,患者から自発的に実際の食事で箸を使って食べてみたい等意欲的な発言が増えた.42病日に回復期病院へ転院する際,医療への申し送り表を参考に施設間連絡書にて申し送りを行った.
【最終評価】四肢麻痺は右上下肢MMT4,左上下肢MMT4まで改善.指尖に軽度異常感覚,深部覚,体幹失調が残存したが基本動作は修正自立まで改善.トイレは歩行器歩行にて移動自立,トイレ内動作も手すり使用し自立となった.他更衣,整容も自立,食事はスプーンと箸を併用し自立となった.目標の遂行度10/10点,満足度8/10点と大幅な向上を認めた.満足度の減点としては,動作はできるがもう少し上手にできるようになりそうだからというものだった.
【考察】中心性脊髄損傷の予後予測として,下肢麻痺は上肢麻痺と比較し軽度であることが多いため歩行予後は良いとされている⁷⁾. 歩行の予後予測に関しては,72時間時点で65歳未満かつAIS:gradeCである場合,実用性があるとされるgradeDとなる確率は70%⁷⁾.JOAスコアが2~3点であれば歩行獲得の可能性があるとされている⁸⁾.上肢麻痺は回復に遅延するが家庭復帰が可能であった報告もあり,本症例も環境調整をした上での家庭復帰は可能となるのではないかと考え,MTDLPを用いて目標設定を行った. 短期目標を具体的に行ったことで,成功体験を通して自信がつき不安感の訴えは減少し行動変容が起きた.急性期病棟でもMTDLPを活用し,早期からQOL向上に役立てていきたい.