[PN-1-9] 郡山市在住高齢者における「通いの場」への参加が要介護認定に与える影響
【序論】住民主体で運営する「通いの場」は,「地域づくりによる介護予防」と言い換えることが可能である.福島県郡山市においても,通いの場として,「いきいき百歳体操」が実施されている.通いの場へ参加することで,転倒やうつ,認知症などによる要介護状態のリスクを低減する効果が明らかにされている.しかし,郡山市において通いの場への参加が要介護認定に与える影響について明らかでない.
【目的】本研究は,本学と郡山市とで締結した「SDGsの推進に関する包括連携協定」に基づき,郡山市在住の通いの場参加者の要介護認定情報を活用し,通いの場への参加が要介護認定率に与える影響を検討した.本研究は,福島県立医科大学倫理審査委員会(整理番号:一般2021-138)の承認を得て実施した.
【方法】2015年から2018年の4年間に,通いの場で行われた体力測定に参加した2160名のデータから,個人特定番号が特定できない549名分のデータを除外し,1611名分のデータを対象とした.①対象である1611名の基本属性,各年で新規認定者数および要介護認定者数を整理した.②各年において,対象者の新規認定率および要介護認定者率を算出し,郡山市介護保険課が公表している新規認定率および要介護認定率と比較した.
【結果】対象者数は,2015年182名,2016年617名,2017年375名,2018年386名であった.各年の平均年齢は70代後半で,最少年齢は65歳,最高年齢は101歳であった.対象者に占める後期高齢者の割合は概ね60%程度であり,男性の割合は概ね20%程度であった.各年の対象者数に占める新規認定者数の割合は, 2015年3.3%,2016年4.9%,2017年2.1%,2018年2.8%であった.各年の要介護認定率は,2015年11.5%,2016年14.9%,2017年8.3%,2018年13.0%であり,いずれの年も対象者の要介護認定率は郡山市が公表している要介護認定率(2015年17.9%,2016年18.1%,2017年18.4%,2018年18.7%)より低い結果であった.2015年から2018年の各年の分析対象者に占める新規要介護認定者の割合は,いずれの年も全体に比べ後期高齢者の認定率が高かった.男女別では,2015年のみ男性の新規認定率が女性のそれより高かったが,2016年以降の3年間は男性より女性の新規認定率が高かった.
【考察】結果より,通いの場参加者の要介護認定率は,郡山市が公表している要介護認定率より低い結果となった.田近らも,通いの場参加者は非参加者に比べ3年間の要支援・要介護リスクの悪化が有意に少ないことを明らかにしており,本研究でも同様の傾向が認められた.属性別にみると,後期高齢者が多く,男性が少なかった.後期高齢者が無理なく参加できる内容を検討することは重要である.また,男性が参加しやすい,スポーツや有償ボランティアなど,広義の通いの場の機会を設け,参加を促進することが重要な課題である.本研究において,通いの場で行われた体力測定に参加したものを通いの場参加者とみなしており,継続的な参加者か否か,参加頻度等は不明であるため限界がある.今後は前向きにデータを収集し,参加頻度等も整理することで通いの場への参加が要介護認定に与える影響を検証することが必要である.
【文献】田近敦子, 井出一茂, 飯塚玄明, 他. :「通いの場」への参加は要支援・要介護リスクの悪化を抑制するか:JAGES2013-2016縦断研究. 日本公衆衛生雑誌69(2): 136-145, 2022.
【目的】本研究は,本学と郡山市とで締結した「SDGsの推進に関する包括連携協定」に基づき,郡山市在住の通いの場参加者の要介護認定情報を活用し,通いの場への参加が要介護認定率に与える影響を検討した.本研究は,福島県立医科大学倫理審査委員会(整理番号:一般2021-138)の承認を得て実施した.
【方法】2015年から2018年の4年間に,通いの場で行われた体力測定に参加した2160名のデータから,個人特定番号が特定できない549名分のデータを除外し,1611名分のデータを対象とした.①対象である1611名の基本属性,各年で新規認定者数および要介護認定者数を整理した.②各年において,対象者の新規認定率および要介護認定者率を算出し,郡山市介護保険課が公表している新規認定率および要介護認定率と比較した.
【結果】対象者数は,2015年182名,2016年617名,2017年375名,2018年386名であった.各年の平均年齢は70代後半で,最少年齢は65歳,最高年齢は101歳であった.対象者に占める後期高齢者の割合は概ね60%程度であり,男性の割合は概ね20%程度であった.各年の対象者数に占める新規認定者数の割合は, 2015年3.3%,2016年4.9%,2017年2.1%,2018年2.8%であった.各年の要介護認定率は,2015年11.5%,2016年14.9%,2017年8.3%,2018年13.0%であり,いずれの年も対象者の要介護認定率は郡山市が公表している要介護認定率(2015年17.9%,2016年18.1%,2017年18.4%,2018年18.7%)より低い結果であった.2015年から2018年の各年の分析対象者に占める新規要介護認定者の割合は,いずれの年も全体に比べ後期高齢者の認定率が高かった.男女別では,2015年のみ男性の新規認定率が女性のそれより高かったが,2016年以降の3年間は男性より女性の新規認定率が高かった.
【考察】結果より,通いの場参加者の要介護認定率は,郡山市が公表している要介護認定率より低い結果となった.田近らも,通いの場参加者は非参加者に比べ3年間の要支援・要介護リスクの悪化が有意に少ないことを明らかにしており,本研究でも同様の傾向が認められた.属性別にみると,後期高齢者が多く,男性が少なかった.後期高齢者が無理なく参加できる内容を検討することは重要である.また,男性が参加しやすい,スポーツや有償ボランティアなど,広義の通いの場の機会を設け,参加を促進することが重要な課題である.本研究において,通いの場で行われた体力測定に参加したものを通いの場参加者とみなしており,継続的な参加者か否か,参加頻度等は不明であるため限界がある.今後は前向きにデータを収集し,参加頻度等も整理することで通いの場への参加が要介護認定に与える影響を検証することが必要である.
【文献】田近敦子, 井出一茂, 飯塚玄明, 他. :「通いの場」への参加は要支援・要介護リスクの悪化を抑制するか:JAGES2013-2016縦断研究. 日本公衆衛生雑誌69(2): 136-145, 2022.