[PN-3-3] 地域高齢者の生活を支える有償ボランティア
作業療法士×生活支援コーディネーター 支援ニーズと担い手のマッチングに携わって
【はじめに】地域住民の生活の困りごとと地域資源のマッチングの役割を担う生活支援コーディネーター(以下SC)は,各自治体の生活支援体制整備事業の中で配置され,奈良県天理市では筆者が担当している.高齢者の生活支援の体制や,支援のマッチングの枠組み作りに携わり,以下に報告する.尚,発表に際して関係団体には同意を得ている.
【事業概要】天理市では令和2年度より生活支援体制整備事業を本格的に開始し,高齢者の軽微な生活の困りごとに対するボランティアの派遣を検討し,天理市生活支援サポーター(以下,てんさぽ)を養成した.同年9月にトライアル開始,10月よりてんさぽの派遣開始,令和3年8月に有償ボランティアへ移行となる.利用対象者は天理市在住の65歳以上の高齢者であり,利用者負担でポイント券(1ポイント30分250円)を事前に購入し,支援時間と支援者の人数に応じて換算,支援終了後にポイント券をてんさぽに謝礼として渡す.てんさぽが受け取ったポイント券は換金または別のてんさぽに支援を依頼する仕組みとしている.てんさぽが高齢者の場合,時に支え,時に支えられる関係を想定している.
【事業の流れ】①市役所や地域包括支援センター,居宅介護支援事業所,民生委員などから利用者の相談を受ける.②事前アセスメント:利用者の生活状況を確認し,支援内容を具体化する.③支援調整:てんさぽに支援可能か確認し,日程調整を行う.④支援実施:利用者に支援内容の同意を得て支援実施となる.この相談から支援実施までの過程(高齢者の支援ニーズと担い手のマッチング)をSCが務めている.作業療法士としては②のアセスメントに注力し,自立支援の観点から,利用者の生活状況や自助・互助力を評価し,できることは利用者自身で行い,支援が必要な部分を明確化して,てんさぽに支援を依頼している.
【結果】令和5年12月までの実績として,てんさぽの登録者数は300名以上,実働者数は83名,年齢は18歳~80歳代,天理教関係者や医療・介護事業所の現役世代やOB,市内在学の大学生,ボランティア団体など多世代,多様な方々である.実利用者数は101名,延べ支援回数585回,延べボランティア人数は1155名であった.支援内容は単発支援137件(草引き・草刈り,掃除,木の剪定,運搬補助,趣味活動など),継続支援37件(お話し相手,掃除,買い物同行・代行,外出・受診同行など)であり,介護保険サービスや専門職では制度上支援できない内容も提供できた.また利用者の中には,てんさぽによる掃除支援により,訪問介護を利用せず地域生活を継続しているケースも存在した.
【考察・課題】社会情勢として少子高齢化や人口減少が進み,加えて訪問介護を担う人材不足や高齢化も伴い,今後益々支え手不足が危惧されており,地域生活を支える担い手の確保や制度設計は急務である.その中で有償ボランティアは,専門職の劣化版ではなく,支援の自由度がありながら専門職の手が届かない部分をサポートできる有益な社会資源であり,支援の隙間を埋める重要なピースである.また自立支援の観点を持ちながら生活課題の解決の提案,支援の具体化における作業療法士としてのアセスメント力はSCを務めるうえで強みと考える.
天理市では全市的にてんさぽを派遣する体制づくりをしたことで,地域に限定されない広域的な支え合い活動の基盤が構築できたと考える.一方で,何でもてんさぽで生活の困りごとを解決すると,地域力は高まらず地域の自助・互助活動が希薄になることも懸念される.現在のてんさぽの支援体制を継続させつつ,地域住民同士による助け合い活動の創出にも今後力を注いでいきたいと考える.
【事業概要】天理市では令和2年度より生活支援体制整備事業を本格的に開始し,高齢者の軽微な生活の困りごとに対するボランティアの派遣を検討し,天理市生活支援サポーター(以下,てんさぽ)を養成した.同年9月にトライアル開始,10月よりてんさぽの派遣開始,令和3年8月に有償ボランティアへ移行となる.利用対象者は天理市在住の65歳以上の高齢者であり,利用者負担でポイント券(1ポイント30分250円)を事前に購入し,支援時間と支援者の人数に応じて換算,支援終了後にポイント券をてんさぽに謝礼として渡す.てんさぽが受け取ったポイント券は換金または別のてんさぽに支援を依頼する仕組みとしている.てんさぽが高齢者の場合,時に支え,時に支えられる関係を想定している.
【事業の流れ】①市役所や地域包括支援センター,居宅介護支援事業所,民生委員などから利用者の相談を受ける.②事前アセスメント:利用者の生活状況を確認し,支援内容を具体化する.③支援調整:てんさぽに支援可能か確認し,日程調整を行う.④支援実施:利用者に支援内容の同意を得て支援実施となる.この相談から支援実施までの過程(高齢者の支援ニーズと担い手のマッチング)をSCが務めている.作業療法士としては②のアセスメントに注力し,自立支援の観点から,利用者の生活状況や自助・互助力を評価し,できることは利用者自身で行い,支援が必要な部分を明確化して,てんさぽに支援を依頼している.
【結果】令和5年12月までの実績として,てんさぽの登録者数は300名以上,実働者数は83名,年齢は18歳~80歳代,天理教関係者や医療・介護事業所の現役世代やOB,市内在学の大学生,ボランティア団体など多世代,多様な方々である.実利用者数は101名,延べ支援回数585回,延べボランティア人数は1155名であった.支援内容は単発支援137件(草引き・草刈り,掃除,木の剪定,運搬補助,趣味活動など),継続支援37件(お話し相手,掃除,買い物同行・代行,外出・受診同行など)であり,介護保険サービスや専門職では制度上支援できない内容も提供できた.また利用者の中には,てんさぽによる掃除支援により,訪問介護を利用せず地域生活を継続しているケースも存在した.
【考察・課題】社会情勢として少子高齢化や人口減少が進み,加えて訪問介護を担う人材不足や高齢化も伴い,今後益々支え手不足が危惧されており,地域生活を支える担い手の確保や制度設計は急務である.その中で有償ボランティアは,専門職の劣化版ではなく,支援の自由度がありながら専門職の手が届かない部分をサポートできる有益な社会資源であり,支援の隙間を埋める重要なピースである.また自立支援の観点を持ちながら生活課題の解決の提案,支援の具体化における作業療法士としてのアセスメント力はSCを務めるうえで強みと考える.
天理市では全市的にてんさぽを派遣する体制づくりをしたことで,地域に限定されない広域的な支え合い活動の基盤が構築できたと考える.一方で,何でもてんさぽで生活の困りごとを解決すると,地域力は高まらず地域の自助・互助活動が希薄になることも懸念される.現在のてんさぽの支援体制を継続させつつ,地域住民同士による助け合い活動の創出にも今後力を注いでいきたいと考える.