第58回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-3] ポスター:地域 3 

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PN-3-5] 国際協力分野で求められる日本の作業療法士について

倉澤 友子 (公益財団法人がん研究会がん研有明病院 リハビリテーション部)

【はじめに】JICA海外協力隊でどのような作業療法士(以下OT)が求められているかを調査・検討する.
【対象および方法】JICA 海外協力隊に参加する者は,開発途上国からの要請に基づきそれに見合った技術・知識・経験を持った人材が選考され,国内での訓練を経て派遣される.応募にあたり,まずは年2回の募集期間にあわせてJICA海外協力隊のホームページに掲載されている要望調査票からどんな要請があるかを知ることができる.そこには,派遣国,配属機関名,事業内容,要請概要(活動内容・配属先の同僚や活動対象者),要請先からの条件(性別・学歴・語学力・実務経験・活動経験)などの要請情報が記載されている.今回は2023年9月時点で閲覧が可能だった2016~2023年までの要請調査票224件を対象とした.
【結果】全13回の募集でのべ412件の要請があったがそのうち新規は224件で,それ以外は次期募集に繰り越されたものであり,なかには2年以上適任者が決まらないものもあった.派遣国は44ヵ国に及び,地域別でみると中南米43%,アジア35%に多かった.配属先は病院24%,リハビリセンター21%,小児施設20%,特別支援学校11%,その他には地域センター,高齢者施設,障害者施設,職業訓練センター,養成校があった.事業内容を分野別にみると,小児39%,身体障害(以下身障)38%,地域10%,以下高齢者,精神障害,養成校と小児と身障分野が多かった.活動内容は,配属先での作業療法の実践25%,同僚への指導24%,家族指導11%,評価表・マニュアル・プロトコールなどの作成・定着6%,自助具や訓練道具の作成・選定・紹介6%,作業療法の啓蒙活動6%,訪問や巡回での作業療法の実践6%,作業療法室の環境整備4%,学生指導3%,その他には配属機関の行事の参加,CBR活動の実践,他のボランティアとの協働,障害児への療育の実践,派遣国内のOTとの協働など配属先の特性によって多岐にわたっていた.配属先の同僚にOTが在籍しているのは40%で,それ以外の同僚は,医師18%,看護師14%,教員14%,事務員12%,理学療法士11%,言語聴覚療法士10%,心理士8%,ソーシャルワーカー7%,介護士4%だった.要請先から提示された条件として,実務経験は2年以上21%,3年以上47%,5年以上22%,10年以上4%,15年以上5%と活動内容によって臨床での経験が必須であった.活動経験は26%で各分野での実務経験や教員・実習指導経験など活動内容に即したものが求められ,そのうち半数は小児の活動経験だった.その他の性別・学歴・語学力を含め実務経験以外で特に条件がない要請は約半数あった.
【考察】毎年JICA海外協力隊でOTの要請は多いが適任者が不足しており,必要としている場所に迅速な対応ができていないと考える.派遣国によってはOTがいない,作業療法の概念や技術が一般的ではない,ひいてはリハビリテーション自体が浸透していないことが多くある.さらに活動内容として主に作業療法の実践や技術支援・指導が求められているが,配属先で同僚にOTがいるのは約3割で,その他の医療職,教員,介護士,家族に作業療法の概念から伝えることが必要である.そのためには一定期間の臨床経験を積んでから参加するほうが活動を円滑に進められると考えられ,これは実務経験2年以上が必須であり,3年以上で選択肢が増えることからもうかがわれる.実務経験以外に条件を設けていない要請は約半数あり特別な経験がなくても応募できるが,小児分野では活動経験が必要なものが多く,より専門性の高い要請が多かったことは適任者が決まらない一因と考える.