[PN-3-9] 就労継続支援B型を利用中の脳損傷者に生じている作業機能障害に関する予備的調査
【はじめに】作業機能障害(Occupational Dysfunction;OD)とは,生活行為(仕事,遊び,日課,休息)が適切に行えていない状態である.地域在住高齢者のフレイルに対するOD,高齢者施設における園芸活動でのODおよび一般企業で働く健常者を対象にしたODについての調査報告は見受けられるが,脳損傷者の就労支援サービスにおける調査報告は見当たらない.この度,就労継続支援B型(B型)を利用中の脳損傷者に生じているODについて予備的調査を実施したため,ここに報告する.
【目的】本研究はB型において脳損傷者に生じているODの状況把握や,ODに対する有用な支援方法の検討を目的とした予備的調査である.
【倫理的配慮】当報告において,人を対象とする医学的研究に関する倫理方針ガイダンスを遵守し,書面にて研究の目的,方法,効果および対象者の自由意思による研究への参加について十分に説明を行い,同意を得た.
【方法】当事業所B型利用者のうち,脳損傷者は15名である.そのうち13名(長期間非通所,趣旨の理解が困難な利用者2名を除外)にODの種類と評価(Classification and Assessment of Occupational Dysfunction;CAOD)を実施.調査項目として,一般情報(年齢,性別)と対象者情報(疾患名,「高次脳機能障害」の診断の有無)を情報提供書より収集した.また①ODが生じているか(CAODのカットオフ値:52/112点で判定)②どのようなODが主に生じているか③そのODは就労作業中に生じているか④施設内作業(食品仕分け作業・清掃作業)と施設外作業(青果出荷準備作業・除草作業)のどちらに主に従事しているかを単純集計した.
【結果】平均年齢:50.2歳,男性:11名,女性:2名.頭部外傷:5名(38.5%),脳梗塞:2名(15.4%),脳内出血:2名(15.4%),くも膜下出血:2名(15.4%),脳腫瘍:2名(15.4%).「高次脳機能障害」の診断を有する利用者:7名(53.8%).①ODを生じているのは1名(7.7%)②作業不均衡:2名(15.4%),作業剥奪:0名(0.0%),作業疎外:1名(7.7%),作業周縁化:10名(76.9%)③ODを就労作業中に生じていると感じるのは4名(30.8%)④施設内作業:3名(23.1%),施設外作業:10名(76.9%).主に生じているODについて,作業不均衡:「周りに気を遣い過ぎて疲れがたまる」,作業疎外:「毎日が同じことの繰り返しで楽しくない」,作業周縁化:「決められた作業しかやらせてもらえない」というエピソードをCAODの面接中に聴取した.
【考察】「障害とつきあいながらする仕事」を「賃金を得て生活のために」B型を利用することで自己効力感の向上に繋がるという報告があり,利用者はODが生じることが少ない環境下で就労作業が継続できていると考えられる.その状況下で主に生じている作業周縁化は,支配下にある人に認められやすく,上下関係が無意識に生じていると考えられる.
今回の結果では,環境から影響を受ける作業剥奪の項目でのODは認められなかった.これはCAODの特徴として,自記式尺度である為,主観的な想いが反映されやすいためであると考える.しかしODの特性として4種類のODは相互に影響するため,今回認められたODの背景として環境面からも影響が生じていると考える.そのため今後は環境面として施設側からの調整も必要であると考える.
また高次脳機能障害を有すると①施設として作業の選定に影響が生じている,②高次脳機能障害を生じることで自己認識が乏しく本人の希望と施設側の意向に乖離が生じている等の影響でODに繋がっていると考える.ODと並行して支援者・利用者双方に生じている信念対立の評価・介入を行い,支援状況や目的,支援方法を共有することで,利用者の就労意欲および自己認識の向上に繋がると考える.
【目的】本研究はB型において脳損傷者に生じているODの状況把握や,ODに対する有用な支援方法の検討を目的とした予備的調査である.
【倫理的配慮】当報告において,人を対象とする医学的研究に関する倫理方針ガイダンスを遵守し,書面にて研究の目的,方法,効果および対象者の自由意思による研究への参加について十分に説明を行い,同意を得た.
【方法】当事業所B型利用者のうち,脳損傷者は15名である.そのうち13名(長期間非通所,趣旨の理解が困難な利用者2名を除外)にODの種類と評価(Classification and Assessment of Occupational Dysfunction;CAOD)を実施.調査項目として,一般情報(年齢,性別)と対象者情報(疾患名,「高次脳機能障害」の診断の有無)を情報提供書より収集した.また①ODが生じているか(CAODのカットオフ値:52/112点で判定)②どのようなODが主に生じているか③そのODは就労作業中に生じているか④施設内作業(食品仕分け作業・清掃作業)と施設外作業(青果出荷準備作業・除草作業)のどちらに主に従事しているかを単純集計した.
【結果】平均年齢:50.2歳,男性:11名,女性:2名.頭部外傷:5名(38.5%),脳梗塞:2名(15.4%),脳内出血:2名(15.4%),くも膜下出血:2名(15.4%),脳腫瘍:2名(15.4%).「高次脳機能障害」の診断を有する利用者:7名(53.8%).①ODを生じているのは1名(7.7%)②作業不均衡:2名(15.4%),作業剥奪:0名(0.0%),作業疎外:1名(7.7%),作業周縁化:10名(76.9%)③ODを就労作業中に生じていると感じるのは4名(30.8%)④施設内作業:3名(23.1%),施設外作業:10名(76.9%).主に生じているODについて,作業不均衡:「周りに気を遣い過ぎて疲れがたまる」,作業疎外:「毎日が同じことの繰り返しで楽しくない」,作業周縁化:「決められた作業しかやらせてもらえない」というエピソードをCAODの面接中に聴取した.
【考察】「障害とつきあいながらする仕事」を「賃金を得て生活のために」B型を利用することで自己効力感の向上に繋がるという報告があり,利用者はODが生じることが少ない環境下で就労作業が継続できていると考えられる.その状況下で主に生じている作業周縁化は,支配下にある人に認められやすく,上下関係が無意識に生じていると考えられる.
今回の結果では,環境から影響を受ける作業剥奪の項目でのODは認められなかった.これはCAODの特徴として,自記式尺度である為,主観的な想いが反映されやすいためであると考える.しかしODの特性として4種類のODは相互に影響するため,今回認められたODの背景として環境面からも影響が生じていると考える.そのため今後は環境面として施設側からの調整も必要であると考える.
また高次脳機能障害を有すると①施設として作業の選定に影響が生じている,②高次脳機能障害を生じることで自己認識が乏しく本人の希望と施設側の意向に乖離が生じている等の影響でODに繋がっていると考える.ODと並行して支援者・利用者双方に生じている信念対立の評価・介入を行い,支援状況や目的,支援方法を共有することで,利用者の就労意欲および自己認識の向上に繋がると考える.