[PN-7-5] 精神障がい者通所施設における作業バランスの検討
地域生活を支えるための作業療法士の役割について
【はじめに】
「特定非営利活動法人いちばん星」(以下,当事業所)とは,障がい者が地域に参加する機会を増やし,生き生きと暮らせる社会の実現に寄与することを目的としたセンターである.新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)により,利用者数の減少や,活動範囲の狭小化が問題となっていた.収束後においても,一度狭まった生活範囲や対人交流の少ない生活から元の範囲に戻すことは利用者にとって負担が大きい.そのため,当事業所では利用者の生活の再構築が課題となっている.現在,作業療法士(以下,OT)による月1回の訪問が再開され,6カ月が経過した.今後の介入の示唆を得ることを目的に,これまでの現状を振り返り報告する.尚,今回の発表は当院倫理委員会と事業所関係者の承認を得ている.
【施設利用者について】
2023年6月時点での登録者は41名(男性21名,女性20名).1日の平均利用者は約10名,利用者の平均年齢は50.7±11.6歳となっている.地域生活が長い統合失調症を呈した利用者が大半を占める.
【現状のプログラムの課題】
日中の活動量が減少し,行う作業が少なく待機している時間が長い現状である.またコロナ前に行っていた外出活動や出前喫茶が再開できていない.作業活動において,好みや拒否の訴えはなく受動的な面が顕著である.
【作業療法の介入内容】
①社会生活技能訓練:接客業に対する思いや意欲を評価し,利用者に共通した悩み事を抽出した.職員やOTを客に見立てた模擬練習を強化した.②創作活動:喫茶に飾る壁面を作成した.作成前に飾るイメージや場所を共有し,作業遂行能力に応じた役割を分担した.作品の掲示は別日に利用者主体で掲示するよう職員に依頼した.③音楽活動:ハンドベルを用い,全員参加型で曲の演奏を行った.個人の役割が明確であるとともに集団凝集性が高まる活動を実施した.④身体活動:生活する上で体操をする目的を利用者に問いかけながら実施した.
【経過および考察】
創作活動においては,継続できる仕組みや役割分担を行ったため,喫茶の待機時間に行う作業が確保され活動量が増加した.活動は同一作業を提供するが,難易度設定をし,利用者に応じた作業レベルを提供するよう心掛けた.活動に対して,要望や拒否はみられず,提供した作業には協力的である反面,主張の乏しさは目立っていた.そのため,活動ごとに感想や思いを聞き取る場面を設け,利用者の思いの把握に努めた.糸島弘和ら(2017)は「社会参加への関心をもつための前段階に,人との深い関わりが必要であることを示唆しており,他者と深いかかわりを感じる場があることで,周囲の人や社会に目が向き,社会参加への関心が高まることが考えられる.」と述べている.今回の介入で「難しくて泣きそうになった」「お客さんに見てもらいたい」等,作業に関する意思表出は得られた.今後も個々の表出機会を増加し,思いを共有するなど感情を語ることができるような環境を整えていくことが重要となる.今回の訪問で,プログラムに対する作業バランスの見直しを図ることができた.また,作業バランスについての視点を職員に助言し,利用者の主体性を引き出せる枠組み作りを一緒に考える機会となった.しかし,コロナの影響により外出機会や活動範囲が減少したことで,自宅から施設への往復が社会参加となっている現状に変化はない.職員と社会参加の重要性を話し合い,守られた環境以外での社会交流の練習ができる段取りを進める必要がある.その1つとして先ずは近隣施設での出前喫茶を再開していけるよう検討中である.
「特定非営利活動法人いちばん星」(以下,当事業所)とは,障がい者が地域に参加する機会を増やし,生き生きと暮らせる社会の実現に寄与することを目的としたセンターである.新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)により,利用者数の減少や,活動範囲の狭小化が問題となっていた.収束後においても,一度狭まった生活範囲や対人交流の少ない生活から元の範囲に戻すことは利用者にとって負担が大きい.そのため,当事業所では利用者の生活の再構築が課題となっている.現在,作業療法士(以下,OT)による月1回の訪問が再開され,6カ月が経過した.今後の介入の示唆を得ることを目的に,これまでの現状を振り返り報告する.尚,今回の発表は当院倫理委員会と事業所関係者の承認を得ている.
【施設利用者について】
2023年6月時点での登録者は41名(男性21名,女性20名).1日の平均利用者は約10名,利用者の平均年齢は50.7±11.6歳となっている.地域生活が長い統合失調症を呈した利用者が大半を占める.
【現状のプログラムの課題】
日中の活動量が減少し,行う作業が少なく待機している時間が長い現状である.またコロナ前に行っていた外出活動や出前喫茶が再開できていない.作業活動において,好みや拒否の訴えはなく受動的な面が顕著である.
【作業療法の介入内容】
①社会生活技能訓練:接客業に対する思いや意欲を評価し,利用者に共通した悩み事を抽出した.職員やOTを客に見立てた模擬練習を強化した.②創作活動:喫茶に飾る壁面を作成した.作成前に飾るイメージや場所を共有し,作業遂行能力に応じた役割を分担した.作品の掲示は別日に利用者主体で掲示するよう職員に依頼した.③音楽活動:ハンドベルを用い,全員参加型で曲の演奏を行った.個人の役割が明確であるとともに集団凝集性が高まる活動を実施した.④身体活動:生活する上で体操をする目的を利用者に問いかけながら実施した.
【経過および考察】
創作活動においては,継続できる仕組みや役割分担を行ったため,喫茶の待機時間に行う作業が確保され活動量が増加した.活動は同一作業を提供するが,難易度設定をし,利用者に応じた作業レベルを提供するよう心掛けた.活動に対して,要望や拒否はみられず,提供した作業には協力的である反面,主張の乏しさは目立っていた.そのため,活動ごとに感想や思いを聞き取る場面を設け,利用者の思いの把握に努めた.糸島弘和ら(2017)は「社会参加への関心をもつための前段階に,人との深い関わりが必要であることを示唆しており,他者と深いかかわりを感じる場があることで,周囲の人や社会に目が向き,社会参加への関心が高まることが考えられる.」と述べている.今回の介入で「難しくて泣きそうになった」「お客さんに見てもらいたい」等,作業に関する意思表出は得られた.今後も個々の表出機会を増加し,思いを共有するなど感情を語ることができるような環境を整えていくことが重要となる.今回の訪問で,プログラムに対する作業バランスの見直しを図ることができた.また,作業バランスについての視点を職員に助言し,利用者の主体性を引き出せる枠組み作りを一緒に考える機会となった.しかし,コロナの影響により外出機会や活動範囲が減少したことで,自宅から施設への往復が社会参加となっている現状に変化はない.職員と社会参加の重要性を話し合い,守られた環境以外での社会交流の練習ができる段取りを進める必要がある.その1つとして先ずは近隣施設での出前喫茶を再開していけるよう検討中である.