[PN-7-8] コロナ禍を経た高齢者向けサロンの現状と運営の課題
【研究の動機と目的】少子高齢化が進む中,地域包括ケアシステムの構築や介護予防事業の多様化等,市町村を主体とした対応が行われている.高齢者にとって,町内という近距離で実施される「ふれあい・いきいきサロン」(以下サロン)は,貴重な社会参加や交流の場となっている.しかし,2020年以降は新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の拡大により,サロン等の活動は中止を余儀なくされた.コロナ禍を経た2023年度は,参加者・運営者の両面で,更なる課題があることが予測された.しかし,高齢者向けのサロン参加による効果を調査した研究は多数あるものの,運営者を対象にした研究は非常に少ない.そこで,本研究では身近な社会参加の1つである高齢者向けサロンの運営の課題を明らかにし,その対策について検討することを目的とした.
【方法】A市社会福祉協議会(以下市社協)に登録している251か所の高齢者向けサロン運営代表者(以下代表者)を対象に,アンケート調査を実施した.研究への協力は自由とし,アンケートは,市社協を通じ,郵送による配布・回収を行い,個人情報保護法に則り,記号化してデータ処理を行った.
アンケートは,代表者の属性と行動,コロナ禍の活動,2023年度の活動,サロン運営についての項目で構成されている.なお,本調査は研究倫理審査会の承認を得て実施した.本調査の結果は,市社協と共有,代表者にフィードバックするため,令和5年度健康づくり研究助成「あさを賞」の交付を受けている .
【結果】アンケートは150か所から回答があり,回収率は59.8%であった.代表者は,男性91名(60.7%),女性59名(39.3%),平均年齢72.2±5.9歳であった.代表者の経験年数の平均は4.7±4.7年で,5年目未満が62.2%,そのうち1年目が36.5%であった.市社協がホームページに公開しているコロナ禍のサロン活動の情報を,「参考にした」60.1%,「参考にしなかった」「知らなかった」は39.8%であった.サロンの広報活動については,SNSの利用経験者が4.9%,動画配信の経験者が2.1%であった.また,今後の感染症対策については,「できている」65.0%,「できていない」35.0%であった.さらに,サロン運営に対する専門家からのアドバイスについては,「利用したい」が85.4%との結果が得られた.
【考察】コロナ禍のサロン活動の代替方法については,約40%が市社協の情報を活用できていなかったと回答している.そして,広報活動にSNS(約5%)や動画配信(約2%)などがほとんど利用されていなかった.コロナ禍で活用頻度が増加したICT機器であるが,高齢者にとっては十分に利活用できていない可能性が示唆された.この結果を受けて,有事に備え,ICT機器を正しく安全に使い,速やかに情報を収集できることへのサポートを検討することが必要であろう.具体的には,サロンにおいて大学生ボランティアによるスマートフォン教室を開催することなどを挙げる.
次に,約60%の代表者がコロナ禍に新たに代表になっており,特に2023年度から代表になった1年目の人が30%以上であることが明らかになった.このため,サロンを運営するうえでの経験不足や情報不足も考えられる.また,今後の感染症対策について,約30%のサロンができていないと回答していることから,このままでは新たな感染症の拡大や災害などが起きた際,サロンを中止し,その間の対応に苦慮することが懸念される.さらに,経験の有無にかかわらず,80%以上の代表者が専門家のアドバイスの利用希望があることへの対策は,急務の課題であろう.
今後の展望として,今回の調査で明らかとなった課題を解決するための介入を継続していく予定である.
【方法】A市社会福祉協議会(以下市社協)に登録している251か所の高齢者向けサロン運営代表者(以下代表者)を対象に,アンケート調査を実施した.研究への協力は自由とし,アンケートは,市社協を通じ,郵送による配布・回収を行い,個人情報保護法に則り,記号化してデータ処理を行った.
アンケートは,代表者の属性と行動,コロナ禍の活動,2023年度の活動,サロン運営についての項目で構成されている.なお,本調査は研究倫理審査会の承認を得て実施した.本調査の結果は,市社協と共有,代表者にフィードバックするため,令和5年度健康づくり研究助成「あさを賞」の交付を受けている .
【結果】アンケートは150か所から回答があり,回収率は59.8%であった.代表者は,男性91名(60.7%),女性59名(39.3%),平均年齢72.2±5.9歳であった.代表者の経験年数の平均は4.7±4.7年で,5年目未満が62.2%,そのうち1年目が36.5%であった.市社協がホームページに公開しているコロナ禍のサロン活動の情報を,「参考にした」60.1%,「参考にしなかった」「知らなかった」は39.8%であった.サロンの広報活動については,SNSの利用経験者が4.9%,動画配信の経験者が2.1%であった.また,今後の感染症対策については,「できている」65.0%,「できていない」35.0%であった.さらに,サロン運営に対する専門家からのアドバイスについては,「利用したい」が85.4%との結果が得られた.
【考察】コロナ禍のサロン活動の代替方法については,約40%が市社協の情報を活用できていなかったと回答している.そして,広報活動にSNS(約5%)や動画配信(約2%)などがほとんど利用されていなかった.コロナ禍で活用頻度が増加したICT機器であるが,高齢者にとっては十分に利活用できていない可能性が示唆された.この結果を受けて,有事に備え,ICT機器を正しく安全に使い,速やかに情報を収集できることへのサポートを検討することが必要であろう.具体的には,サロンにおいて大学生ボランティアによるスマートフォン教室を開催することなどを挙げる.
次に,約60%の代表者がコロナ禍に新たに代表になっており,特に2023年度から代表になった1年目の人が30%以上であることが明らかになった.このため,サロンを運営するうえでの経験不足や情報不足も考えられる.また,今後の感染症対策について,約30%のサロンができていないと回答していることから,このままでは新たな感染症の拡大や災害などが起きた際,サロンを中止し,その間の対応に苦慮することが懸念される.さらに,経験の有無にかかわらず,80%以上の代表者が専門家のアドバイスの利用希望があることへの対策は,急務の課題であろう.
今後の展望として,今回の調査で明らかとなった課題を解決するための介入を継続していく予定である.