第58回日本作業療法学会

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[PN-8] ポスター:地域 8

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PN-8-1] 地域づくり支援事業「おでかけひろば」における作業療法士の取り組み

大森 大輔1,2, 岡田 健次郎2, 杉本 洋子3, 柴田 由弥3, 藤本 忠男4 (1.学校法人大麻学園 四国医療専門学校 作業療法学科, 2.北川病院, 3.NPO法人ママほっとサロン, 4.一般社団法人にいみ木のおもちゃの会)

【背景】
我が国は,少子高齢化による社会構造の変化による社会保険料の増加,労働者数の減少,経済成長の低迷など,社会的課題に直面している.子育てにおいては,子育てにおける孤独感,遊び場の不足,経済的負担など課題がある.厚生労働省は地域共生社会の実現に向けて,高齢者のみならず,生活上の困難を抱える障害者や子どもなどが地域において自立した生活を送ることができるよう,地域住民による支え合いと公的支援が連動し,地域を『丸ごと』支える包括的な支援体制を構築し,切れ目のない支援の実現を目指している.このように,地域課題は多種多様であり,作業療法士(以下:OT)が関われることは多く発想を転換する絶好の機会である.
「おでかけひろば」は,子育てが孤独な経験となっている現状に対応するため,木のおもちゃでの遊び,専門家による相談,ハッピーサイクルの3つを柱とした地域づくり支援事業である.そこで,OTとして参加したおでかけひろばでの取り組みについて報告する.研究者所属先の所属長及び責任者の許可を得た.利益相反はない.
【方法】
全体会議は打ち合わせ等3回行った.参加者はおでかけひろばスタッフ,一般社団法人Aの会,専門職の家庭医,歯科医師,小児科看護師,社会福祉士,OT,助産師,歯科衛生士から2名ずつ選ばれた.対象は7組前後の未就学児の親子であった.内容は木のおもちゃで遊びながら,子どもの運動確認や育児等の相談を受けた.ハッピーサイクルでは,経済的な困窮を抱える家庭等へ品物提供支援を行った.終了後,相談内容を記録した連携シートをもとにスタッフと相談員で振り返りをした.
【結果】
令和4年度は3市1町で合計13回実施され91組の親子,令和5年度は3市1町で合計4回実施され27組の参加があった.令和4年度OTは3回参加し,19件の相談を受けた,令和5年度OTは1回参加し,5件の相談を受けた.内容は,「プールに入るのを嫌がる」「乳児等発達に関する困りごと」「
上の子の甘えと母親の苛立ち」等であった.アンケートは,「相談員の方との対話が楽しく,通常話せないことを話すことができた」「皆さんが親身に接してくれて素晴らしい方々だと感じた」「子どもたちが楽しんでいた」といった肯定的な意見であった.
【考察】
この事業を通じて,子どもたちは楽しみながら遊ぶ場を見つけ,育児に関する問題を相談でき,同様の悩みを抱える母親同士が繋がる場としての有用性が示された.また,発達の遅れに早期に気付き,専門家へ繋げられることで就学時の対応にもつながると考えられる.地域で問題を抱える人々は,障害の有無に関わらず多様であることが明らかになり,OTの職務範囲を拡大する可能性があることが示唆される.