[PN-8-3] 農園を媒介とした地域包括ケアシステムの取り組み
【はじめに】厚生労働省は地域包括ケアシステムの実現に向けて,高齢者の社会参加をより一層推進することを通じて,元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍するなど,高齢者が社会的役割を持つことで,生きがいづくりや介護予防につなげる取り組みが重要と唱えている.日本作業療法士協会も,第4次作業療法5カ年戦略において,「作業を活用した参加促進,人と人との交流により住民の健康と福祉,地域づくりに作業療法士が貢献することを目指す.」としており,地域在住高齢者の保健と介護予防への作業療法士の取り組みをさらに拡大するとしている.今回,農園を媒介に地域在住高齢者を中心とした介護予防,役割づくりを目的に開始した「つながる農園」の取り組みを報告する.なお,本報告は個人情報保護に十分に配慮し,参加者から口頭にて同意を得ている.また,開示すべき利益相反はない.
【方法】農地は当法人介護事業所と保育園に隣接した場所の土地保有者に活動目的を伝え,賛同を得て借地した.2020年に活動開始にあたり,区長や民生委員,近隣住民,当法人職員で打ち合わせを実施した.打ち合わせでは,近隣住民と一緒に農作物を栽培,収穫し,当法人事業所利用者や保育園児が農作業を通して近隣住民と交流する機会を作りたい,という意見が挙がった.広報活動については,区長から回覧板を使用した広報について提案があった.同年から「つながる農園」を開始し,2021年に地域住民が立ち寄りやすいように農園の入り口に東屋を建設した.2022年には,ソーシャル・ネットワーキング・サービスなどを活用してより多くの人に活動が行き届くように広報活動を行った. 2023年からは屋内型の居場所の活用として,法人事業本部で週1回,介護事業所施設内で月1~2回の頻度で朝市を開催した.
【結果】農園のイベント/来園者数は,2020年は7回/189人,2021年は12回/432人,2022年は11回/304人,2023年は11回/298人であった.来園者はイベントで土づくり,野菜の播種や定植,収穫を行い,参加者同士での交流もみられた.イベントをきっかけに,農業未経験の男性高齢者がイベント時だけでなくボランティアとして主体的に農作業に取り組み,保育園児や小学生に指導する姿も見られた.2023年,朝市は法人事業本部にて50回,介護事業所施設内では10回開催した.販売時の飾りつけとして,近隣住民が野菜の絵手紙を作成し,当事業所利用者とその家族が朝市の店番をするなどの役割を担った.約4年間の活動について,福祉系雑誌やラジオ,新聞にて取り上げられ,情報発信をする機会を得た.来園した地域在住高齢者からは,「農業経験はないけれど,自分で考えて何かすることは好き.家にいても何もしないから何かできる場所があることが良い」,「ここにくるとやることがあって,「ありがとう」と言ってもらうことができるのがなにより嬉しい」,「私はお話が好きだから,畑仕事の手伝いはもうできないけど,こういう場所ができると人にも会えて話しができてありがたい」などと言葉が聞かれた.
【考察】農作物には旬があり通年計画が立てやすい特徴がある.農業を媒体にしたことで参加者も計画に積極的に参加することができ,定期的なイベント開催につながったと考える.参加者の感想から,農園は日々の農作業や収穫した野菜を販売するまでの過程に多くの作業工程があるため,役割づくりの場として活用ができることがわかった.朝市での様子から,野菜を販売する場所があることで足を運びやすく,社会参加の場になると考えられる.今後は移動販売などを通して住民が集まれる移動型居場所としての役割も果たしていきたいと考える.
【方法】農地は当法人介護事業所と保育園に隣接した場所の土地保有者に活動目的を伝え,賛同を得て借地した.2020年に活動開始にあたり,区長や民生委員,近隣住民,当法人職員で打ち合わせを実施した.打ち合わせでは,近隣住民と一緒に農作物を栽培,収穫し,当法人事業所利用者や保育園児が農作業を通して近隣住民と交流する機会を作りたい,という意見が挙がった.広報活動については,区長から回覧板を使用した広報について提案があった.同年から「つながる農園」を開始し,2021年に地域住民が立ち寄りやすいように農園の入り口に東屋を建設した.2022年には,ソーシャル・ネットワーキング・サービスなどを活用してより多くの人に活動が行き届くように広報活動を行った. 2023年からは屋内型の居場所の活用として,法人事業本部で週1回,介護事業所施設内で月1~2回の頻度で朝市を開催した.
【結果】農園のイベント/来園者数は,2020年は7回/189人,2021年は12回/432人,2022年は11回/304人,2023年は11回/298人であった.来園者はイベントで土づくり,野菜の播種や定植,収穫を行い,参加者同士での交流もみられた.イベントをきっかけに,農業未経験の男性高齢者がイベント時だけでなくボランティアとして主体的に農作業に取り組み,保育園児や小学生に指導する姿も見られた.2023年,朝市は法人事業本部にて50回,介護事業所施設内では10回開催した.販売時の飾りつけとして,近隣住民が野菜の絵手紙を作成し,当事業所利用者とその家族が朝市の店番をするなどの役割を担った.約4年間の活動について,福祉系雑誌やラジオ,新聞にて取り上げられ,情報発信をする機会を得た.来園した地域在住高齢者からは,「農業経験はないけれど,自分で考えて何かすることは好き.家にいても何もしないから何かできる場所があることが良い」,「ここにくるとやることがあって,「ありがとう」と言ってもらうことができるのがなにより嬉しい」,「私はお話が好きだから,畑仕事の手伝いはもうできないけど,こういう場所ができると人にも会えて話しができてありがたい」などと言葉が聞かれた.
【考察】農作物には旬があり通年計画が立てやすい特徴がある.農業を媒体にしたことで参加者も計画に積極的に参加することができ,定期的なイベント開催につながったと考える.参加者の感想から,農園は日々の農作業や収穫した野菜を販売するまでの過程に多くの作業工程があるため,役割づくりの場として活用ができることがわかった.朝市での様子から,野菜を販売する場所があることで足を運びやすく,社会参加の場になると考えられる.今後は移動販売などを通して住民が集まれる移動型居場所としての役割も果たしていきたいと考える.