[PN-8-4] 作業を介した双方向性のある世代間交流の実践
地域における作業療法士の役割について
【はじめに】日本作業療法士協会は「地域共生社会5か年戦略」の目的に『作業療法士が地域に根差しながら(中略)作業に焦点を当てた支援や調整によって,人と人とのつながり,人との社会のつながりを創り出し,人々の健康と幸福を促進する』ことを掲げている.今回,筆者は生活支援コーディネーターとして地域の高齢者とこどもとが双方向性のある交流を行う機会を設けた経験から,双方向性のある世代間交流の中で作業がどのような役割を果たすかについて解釈を試みたので報告する.尚,この報告は対象者より同意を得ている.
【事業について】地域在住高齢者の孤独・孤立および孤食対策を主な目的とし,担当日常生活圏域在住の単身高齢者を対象に実施した.内容は2部構成であり,これまで1部は園児が披露したよさこい等を高齢者が見る,2部は住民ボランティアが調理した弁当の喫食を行う会食形式で実施していたが,今回は1部を双方向性のある交流をテーマにし,ござに座って伝承遊びを介してこども園年長クラス児と交流する機会とした.高齢者は性別や疾病で選別せず,自力あるいは何らかの支援を受けて会場まで来られる方を参加条件とし,30名を先着順に応募し住民センターに参集した.
【結果】30名の参加者は互いに交友関係がない方がほとんどであった.1部では最初のみ声掛けによる促しをしたものの,それ以後は遊びを介して高齢者と園児や高齢者同士が教えあうなど,参加者各々に自発的な交流が認められた.皆笑顔にあふれ,高齢者から痛みの訴え等のネガティブな反応は認められなかった.2部では1部終了後に園児が退出した直後から,多くの参加者から『膝が痛くなるかも』との訴えが聞かれ,長机と椅子を使用して会食することとなった.事業後アンケートでは,高齢者から『こども達との関りをとおしてコロナで会えない孫のことを思い出して涙が出ました.』住民ボランティアから『今までで一番楽しかった.』こども園教諭から『慰労訪問などはしてきたがこども達がこんなに活発にイキイキ交流しているのは見たことがない.非常に学びになった.』といった,これまでの事業では得られなかった反応があった.
【考察】地域における作業療法の作業は,共通の話題や共感の対象となることで自然な交流を促すという特徴を生かし,人々の関係や,意識と行動に変化をもたらす役割を果たしていると報告されている.また,人々の関係性に目を向けることの重要性も示している.(田中ら,2022)今回の結果は田中らの報告を支持する結果となったと考える.伝承遊びを介した世代間交流が,参加高齢者が過去に経験した『子育て』や自身が幼少期に行った『遊び』などの作業体験を想起させ,それに伴う感情の動きが,交友関係のない他者や世代の違う園児たちとの自発的な交流につながったように思われる.これまでに実施してきた≪披露してくれたものを見る≫という一方向性の交流ではそういった現象は認められていなかったことを考えると,交流が双方向性のあるものであったことも重要な要素であるようにも思われる.令和6年4月には内閣官房より,孤独や孤立を『社会全体の課題』と明記した孤独・孤立対策推進法が施行され,既存分野の垣根を越えた協働や,地域の人々の関係性により一層焦点を当てた関りが求められていくことが予想される.作業を介した双方向性のある交流機会を設けることは,地域の中で人々のつながりを自然な形で構築するきっかけとなり,孤独・孤立に対する重要な取り組みになり得る.作業療法士は地域の中で行われるそれらの取り組みをコーディネートすることで,つながりを創り出す役割を担える可能性がある.
【事業について】地域在住高齢者の孤独・孤立および孤食対策を主な目的とし,担当日常生活圏域在住の単身高齢者を対象に実施した.内容は2部構成であり,これまで1部は園児が披露したよさこい等を高齢者が見る,2部は住民ボランティアが調理した弁当の喫食を行う会食形式で実施していたが,今回は1部を双方向性のある交流をテーマにし,ござに座って伝承遊びを介してこども園年長クラス児と交流する機会とした.高齢者は性別や疾病で選別せず,自力あるいは何らかの支援を受けて会場まで来られる方を参加条件とし,30名を先着順に応募し住民センターに参集した.
【結果】30名の参加者は互いに交友関係がない方がほとんどであった.1部では最初のみ声掛けによる促しをしたものの,それ以後は遊びを介して高齢者と園児や高齢者同士が教えあうなど,参加者各々に自発的な交流が認められた.皆笑顔にあふれ,高齢者から痛みの訴え等のネガティブな反応は認められなかった.2部では1部終了後に園児が退出した直後から,多くの参加者から『膝が痛くなるかも』との訴えが聞かれ,長机と椅子を使用して会食することとなった.事業後アンケートでは,高齢者から『こども達との関りをとおしてコロナで会えない孫のことを思い出して涙が出ました.』住民ボランティアから『今までで一番楽しかった.』こども園教諭から『慰労訪問などはしてきたがこども達がこんなに活発にイキイキ交流しているのは見たことがない.非常に学びになった.』といった,これまでの事業では得られなかった反応があった.
【考察】地域における作業療法の作業は,共通の話題や共感の対象となることで自然な交流を促すという特徴を生かし,人々の関係や,意識と行動に変化をもたらす役割を果たしていると報告されている.また,人々の関係性に目を向けることの重要性も示している.(田中ら,2022)今回の結果は田中らの報告を支持する結果となったと考える.伝承遊びを介した世代間交流が,参加高齢者が過去に経験した『子育て』や自身が幼少期に行った『遊び』などの作業体験を想起させ,それに伴う感情の動きが,交友関係のない他者や世代の違う園児たちとの自発的な交流につながったように思われる.これまでに実施してきた≪披露してくれたものを見る≫という一方向性の交流ではそういった現象は認められていなかったことを考えると,交流が双方向性のあるものであったことも重要な要素であるようにも思われる.令和6年4月には内閣官房より,孤独や孤立を『社会全体の課題』と明記した孤独・孤立対策推進法が施行され,既存分野の垣根を越えた協働や,地域の人々の関係性により一層焦点を当てた関りが求められていくことが予想される.作業を介した双方向性のある交流機会を設けることは,地域の中で人々のつながりを自然な形で構築するきっかけとなり,孤独・孤立に対する重要な取り組みになり得る.作業療法士は地域の中で行われるそれらの取り組みをコーディネートすることで,つながりを創り出す役割を担える可能性がある.