[PN-9-3] 訪問リハビリテーションにおける目標達成のための作業療法士の役割:ケーススタディ
【報告の目的】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)において,家族や看護師と連携し介入を進めていくことは重要である.しかし,家族,他職種と共通認識を持つためには,調整役が必要となる.作業療法士(以下,OT)が,活動,参加レベル向上のための調整役となり,美容院への外出と自宅での入浴が可能となった事例を報告する.
【事例紹介】
90代前半の女性(A氏)X日自宅で転倒され救急でA病院に入院し,左橈骨遠位端骨折と診断され緊急手術を施行した.12日の入院を経て自宅退院したが,日常生活活動 (以下,ADL)低下しており,清潔ケアや健康支援のため訪問看護が依頼された.その後X+79日にADL向上のため訪問リハが依頼された.家族は6人家族であり,2世帯住宅の1階で長女と暮らしていた.受傷前は,ADLは自立し,入浴も自宅で行っていた.家族との旅行(温泉)やおしゃれ好きで家族の運転で美容院へ行っていた.本報告に際して本人と家族に説明し同意を得た.
【作業療法評価】
徒手筋力検査法(以下,MMT)は上下肢3~4レベルであった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は96/126点(運動62/91点.認知34/35点)であり,移動は伝い歩きレベルであった.浴槽への出入りは立位バランスが低下しているため困難であり,入浴は訪問看護時に介助にてシャワー浴を実施していた.玄関前の階段は未整備であり,外出も困難であった. 食事とトイレ以外は臥床傾向であった.A氏の希望は「美容院へ行きたい」,「家のお風呂に入りたい」であった.長女を含め家族は支援に協力的であった.
【介入の治療方針】
退院後より臥床傾向であり,活動・参加レベルが低下していた.また入浴や階段昇降などの実動作練習が出来ておらず,玄関や浴室の環境は未整備であった.移動能力や認知機能は保たれ,家族の協力度が高かったことからA氏の希望は実現可能と考え,A氏の希望である「美容院への外出」,「自宅での入浴」を目標として設定した.A氏の目標を達成するため,OTが調整役となり,家族・看護師と目標を共有した.
【介入経過】
Ⅰ期(介入~2か月):美容院への外出を目的に筋力強化練習,歩行練習,玄関前の段差昇降練習を実施した.Ⅱ期目(2~3か月):玄関前に椅子を設置し,玄関前の階段昇降を繰り返し練習した.長女と孫に階段昇降時の介助手順を確認,練習後,美容院への外出が達成した.Ⅲ期(3~4か月):浴槽ボードを導入し,入浴動作を繰り返し練習した.動作が軽介助で行えるようになったため,動画を用いて看護師へ入浴動作の手順を共有した.
【結果】
FIMは104/126点(運動70/91点,認知34/35点)に改善し,浴槽への入浴や部分的に洗体が可能となった.家族の協力で美容院へ行くことができ,生活範囲が拡大した.今後は旅行へ行けるように屋外歩行の練習をしたいと前向きな発言が聞かれた.
【考察】
A氏は退院後,外出,入浴が困難な状態であったが,家族,看護師,OTの連携により,美容院への外出と自宅での入浴が達成し新たな作業への挑戦にも繋がった.具体的な支援を展開できたことがA氏の希望を達成し,生活への意欲を高めたことが示唆される. 訪問リハにおいて,OTは,対象者の活動,参加の希望が達成可能か評価し,支援者間の調整役になることが期待される.
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)において,家族や看護師と連携し介入を進めていくことは重要である.しかし,家族,他職種と共通認識を持つためには,調整役が必要となる.作業療法士(以下,OT)が,活動,参加レベル向上のための調整役となり,美容院への外出と自宅での入浴が可能となった事例を報告する.
【事例紹介】
90代前半の女性(A氏)X日自宅で転倒され救急でA病院に入院し,左橈骨遠位端骨折と診断され緊急手術を施行した.12日の入院を経て自宅退院したが,日常生活活動 (以下,ADL)低下しており,清潔ケアや健康支援のため訪問看護が依頼された.その後X+79日にADL向上のため訪問リハが依頼された.家族は6人家族であり,2世帯住宅の1階で長女と暮らしていた.受傷前は,ADLは自立し,入浴も自宅で行っていた.家族との旅行(温泉)やおしゃれ好きで家族の運転で美容院へ行っていた.本報告に際して本人と家族に説明し同意を得た.
【作業療法評価】
徒手筋力検査法(以下,MMT)は上下肢3~4レベルであった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は96/126点(運動62/91点.認知34/35点)であり,移動は伝い歩きレベルであった.浴槽への出入りは立位バランスが低下しているため困難であり,入浴は訪問看護時に介助にてシャワー浴を実施していた.玄関前の階段は未整備であり,外出も困難であった. 食事とトイレ以外は臥床傾向であった.A氏の希望は「美容院へ行きたい」,「家のお風呂に入りたい」であった.長女を含め家族は支援に協力的であった.
【介入の治療方針】
退院後より臥床傾向であり,活動・参加レベルが低下していた.また入浴や階段昇降などの実動作練習が出来ておらず,玄関や浴室の環境は未整備であった.移動能力や認知機能は保たれ,家族の協力度が高かったことからA氏の希望は実現可能と考え,A氏の希望である「美容院への外出」,「自宅での入浴」を目標として設定した.A氏の目標を達成するため,OTが調整役となり,家族・看護師と目標を共有した.
【介入経過】
Ⅰ期(介入~2か月):美容院への外出を目的に筋力強化練習,歩行練習,玄関前の段差昇降練習を実施した.Ⅱ期目(2~3か月):玄関前に椅子を設置し,玄関前の階段昇降を繰り返し練習した.長女と孫に階段昇降時の介助手順を確認,練習後,美容院への外出が達成した.Ⅲ期(3~4か月):浴槽ボードを導入し,入浴動作を繰り返し練習した.動作が軽介助で行えるようになったため,動画を用いて看護師へ入浴動作の手順を共有した.
【結果】
FIMは104/126点(運動70/91点,認知34/35点)に改善し,浴槽への入浴や部分的に洗体が可能となった.家族の協力で美容院へ行くことができ,生活範囲が拡大した.今後は旅行へ行けるように屋外歩行の練習をしたいと前向きな発言が聞かれた.
【考察】
A氏は退院後,外出,入浴が困難な状態であったが,家族,看護師,OTの連携により,美容院への外出と自宅での入浴が達成し新たな作業への挑戦にも繋がった.具体的な支援を展開できたことがA氏の希望を達成し,生活への意欲を高めたことが示唆される. 訪問リハにおいて,OTは,対象者の活動,参加の希望が達成可能か評価し,支援者間の調整役になることが期待される.