第58回日本作業療法学会

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ポスター

理論

[PO-3] ポスター:理論 3

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PO-3-1] 我が国の「COPM」の使用行動(選択バイアス)に関する研究

廣瀬 蒼一朗1, 澤田 辰徳2 (1.中伊豆リハビリテーションセンター, 2.東京工科大学)

"【はじめに】
カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure; 以下,COPM)は面接評価方法の1つであるが,使用率は高いとは言えない.海外の報告ではCOPMの使用に関する要因を明らかにしている1).しかし,我が国ではCOPMの使用行動は明らかになっていない.そこで本研究の目的は,我が国におけるCOPMの使用行動を調べるために質的に検討することである.
【方法】
対象は15年以上の経験があり,かつCOPMの使用経験がある作業療法士10名とした.インタビューはビデオ通話アプリZoomを利用した.得られた結果の分析には人間の行動要因を分析するために開発されたTheoretical Domains Framework(以下,TDF)を採用した.TDFは主要な行動変容理論から導いた構成要素を行動変容の14(知識,技術,社会的/職業的役割と独自性,能力についての信念,将来的予測,結果についての信念,強化,意図,目的,記憶/注意および意思決定プロセス,環境文脈と資源,社会的影響,感情,行動規制)のドメインにまとめたフレームワークである2).分析では録音を元に逐語録を作成し,N-VIVOを使用して,2人の共同研究者が独立してTDFドメインにコーディングしたのち,納得するまで話し合い,コーディングを決定した.次に,ドメイン別にコード化された発話に対応する信念ステートメントを作成した.信念ステートメントの決定は,2人の分析者が独立して信念ステートメントを作成し,最終的な信念ステートメントにするための話し合いを行った.最もCOPMの使用に影響を与える可能性が最も高いドメインは,TDFの以下の3つの基準に則り分析者の合意に基づいて決定された.1;信念ステートメントの数,2;矛盾する信念ステートメントの有無,3;重要なニュアンスを含む信念ステートメントの有無,から判断した.尚,本研究は所属機関の倫理倫理委員会の承認を受けている.
【結果】
10名の作業療法士は平均年齢44±5年,平均経験年数22±5年,男性5名,女性5名であった.それぞれのドメインで信念ステートメントを作成した結果,全てで393の信念ステートメントが作成された.作成された信念ステートメントについてTDFの基準に則り,COPMの使用に最も関連する9つのドメイン(知識,技術,社会的/職業的役割と専門性,将来的予測,結果についての信念,強化,環境文脈と資源,社会的影響,行動規制)が選択された.残りの5つのドメイン(能力についての信念,意図,目的,記憶/注意および意思決定プロセス,感情)は関連性が低いとみなした.
【考察】
今回の研究では,同様の先行研究の結果に加え,新たに「知識」「強化」「環境文脈と資源」「将来的予測」が挙げられた.これらは日本の医療制度や民族性が影響していると考えられる3).今回の結果は,日本特有のCOPM使用要因を明らかにしており,我が国のCOPMの使用を促進する一助となると考える.
【参考文献】
1)Colquhoun HL, Islam R, Sullivan KJ, Sandercock J, Steinwender S, et al : Behaviour Change Domains Likely to Influence Occupational Therapist Use of the Canadian Occupational Performance Measure. Occup Ther Int : 3549835, 2020.
2)Cane J, O'Connor D, Michie S: Validation of the theoretical domains framework for use in behaviour change and implementation research. Implement Sci 7(1): 37, 2012.
3)Iwama MK(松原真子,清水一,宮口英樹):文脈と理論‐川モデルの文化的前提.川モデル文化に適した作業療法,(1)1,三輪書店,2014,p100.
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