第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-4] ポスター:基礎研究 4 

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PP-4-2] リハビリテーション専門職養成校学生における作業参加が人生満足度に与える影響

井村 亘1, 大西 正裕1, 大東 真紀2, 石田 実知子3, 大森 大輔4 (1.玉野総合医療専門学校 作業療法学科, 2.岡山大学大学院 保健学研究科 博士後期課程, 3.川崎医療福祉大学 保健看護学部 保健看護学科, 4.四国医療専門学校 作業療法学科)

【背景】リハビリテーション専門職養成校に在籍する学生(以下:リハビリ学生)の精神的健康は医療福祉系養成校に在籍する学生の中において,低いという報告があり(西山,2004),リハビリ学生の主観的幸福感は高くないことが予想される.このような状況の中,作業療法士は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念(日本作業療法士協会,2018)に基づいて人々に作業参加を促している.しかし,リハビリ学生の作業参加が主観的幸福感に影響を与えるかについての検討はされていない.
【目的】本研究は,リハビリ学生の主観的幸福感の向上に向けた支援方法の開発に資する基礎資料を得ることをねらいとして,リハビリ学生の作業参加状況が人生満足度に与える影響を明らかにすることを目的に調査を実施した.
【方法】研究デザインは,自記式質問紙による2派のパネル調査とした.対象者の包含基準はリハビリ学生とし,除外基準は,同意が得られなかった者とした.調査内容は,「基本情報(性別・学科・学年)」,個人にとって価値のある活動の日々の参加状況である作業参加状況における「余暇活動」,「生産的活動」および主観的幸福感を構成する大きな要素である「人生満足度」とした.「余暇活動」,「生産的活動」は自記式作業遂行指標(Self-completed Occupational Performance Index:SOPI)(今井,2010)の2つの因子を抜粋して用い,「人生満足度」は人生に対する満足度尺度(角野,1994)を用いて測定した.分析は,構造方程式モデルを採用し,「余暇活動」と「人生満足度」の関連性,「生産的活動」と「人生満足度」の関連性を交差遅延効果モデル用いて検討した.モデルのデータへの適合性は,適合度指標であるComparative Fit Index(以下:CFI)とRoot Mean Square Error of Approximation(以下:RMSEA)で判定し,順序尺度の推定法である重み付け最小二乗法の拡張法によりパラメーターの推定を行なった.一般的にCFIは0.90以上,RMSEAは0.1を超えていなければデータに対するモデルの当てはまりが良いと判断される.分析モデルにおける標準化推定値(パス係数)の有意性は,非標準化推定値を標準誤差で除した値の絶対値が1.96以上(5%有意水準)を示したものを統計学的に有意とした.統計解析には,Mplus 8.5を使用した.なお,本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認を得た後に実施した.申告すべき利益相反はない.
【結果】分析対象者は,4年制の医療系専門学校1校の理学・作業療法学科に在籍する1~4年生の130名であった.調査時期は,2022年10上旬(初回調査)と2023年1月上旬(追跡調査)であった.「余暇活動」と「人生満足度」の関連の適合性は,CFI=0.985,RMSEA=0.067であり,統計学的許容水準を満たしていた.変数間の関連性に着目すると,初回調査時の「余暇活動」と追跡調査時の「人生満足度」は,統計学的に有意な正の関連が認められ(0.377),初回調査時の「人生満足度」と追跡調査時の「余暇活動」は,統計学的に有意な関連が認めらなかった(−0.042).また,「生産的活動」と「人生満足度」の関連の適合性は,CFI=0.988,RMSEA=0.072であり,統計学的許容水準を満たしていた.変数間の関連性に着目すると,初回調査時の「生産的活動」と追跡調査時の「人生満足度」は,統計学的に有意な正の関連性が認められ(0.188),初回調査時の「人生満足度」と追跡調査時の「生産的活動」は,統計学的に有意な関連が認めらなかった(0.153).
【考察】本研究結果より,リハビリ学生に対して余暇活動や生産的活動の参加を促すことが主観的幸福感に良好な影響を与える可能性が示唆された.