第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-2] ポスター:管理運営 2 

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PQ-2-2] 当財団リハビリ部門におけるラダーの再構築と運用方法の検討

落合 克典1, 稲垣 京司1, 塩崎 和広2, 武田 史織1, 向山 秀3 (1.社会医療法人 河北医療財団 河北リハビリテーション病院  セラピー部, 2.社会医療法人 河北医療財団 河北訪問看護・リハビリステーション阿佐ヶ谷, 3.健康科学大学 リハビリテーション学科 作業療法学コース)

【はじめに】当財団リハビリ部門では病期ごとに4つの施設にスタッフが在籍しており,各施設にて研修や異動を通して経験を積み成長できるよう教育体制を構築し,2017年度よりラダーを作成し運用している.ラダー作成上の留意点として社会環境の変化を踏まえ運用しながら年単位でブラッシュアップしていくことが望ましいといわれている(2023. 西尾尚倫ら).今回,現行のラダーにおける抽出された課題を改善し各療法士の様々な働き方に対応するためラダーの再構築を検討したため報告する.
【方法・取り組み】
2022年度に現行ラダーの課題抽出のため全リハスタッフ対象にアンケートを実施し「項目が分かりにくい」「役割と人事制度に差がある」「経験年数に応じた正当性・客観性のある可視化」「河北で経験を積むことは退職者減らすことが見いだせる」の課題を抽出し,第17回東京都病院学会にて報告した.この課題の改善のため各施設の監督・管理職で構成された7名(OT・PT含む)にて電子掲示板を用いた情報共有とワーキンググループを月1回の頻度で計11回実施した.
【結果】
ワーキンググループの結果,「項目の分かりにくさ」では各項目の見直しとともに共通理解のもと活用できるよう活用ガイドを作成した.また,「人事制度とラダーの差」を是正するためクリニカルラダー(専門項目:社会性・臨床・研究)とキャリアラダー(組織役割項目:教育・マネジメント)の階層性とし,職位と実業務に差が生じないよう工夫し,経験年数に応じた詳細な行動目標の可視化を行った.「退職者を減らす」点では,療法士のキャリア形成のため財団内研修や各療法士協会の資格・認定取得とラダーを紐づけ,その支援をリハ部門として行うとともに,取得した資格を活かすための長期的なキャリアの幅を拡大した.また,ラダーの活用を浸透させるため,人事考課の面談時に各スタッフがラダーを参考に目標を設定し,評価者との面談にて目標とキャリアプランを共有・合意目標を設定.それをもとに中間面接で評価と目標の再検討を行い,年度末面談にて達成度を評価するプロセスを明確化した.
【考察】ラダーの機能として①組織のニーズに合致した自己研鑽の道標②個々人のレベルに応じて段階的に目指す到達目標を設定する指標③能力(思考や技能)向上の評価指標④組織の中での役割遂行能力の評価指標⑤能力向上やキャリア開発のための支援ツール⑥人事考課の評価指標が挙げられ,各組織のニードに合わせた機能の取捨選択が有意義な活用になるといわれている(2023.西尾尚倫ら).今回作成したラダーに6つの機能すべてが含まれていたのは病期の異なる各施設の療法士の幅広い働き方に対応するためであると推察される.また,ラダーの活用プロセスはカナダ実践プロセス枠組み(以下,CPPF)を参考にし,CPPFに求められる成果には可能化の技能(CMCE)が必要とされている.ラダーを有意義なものとして活用するには評価者となる監督・管理職の作業療法の技能の成熟度も重要であると考える.
【今後の展望】
ラダーの有効性を検証するにあたっては,評価方法を事前に決定し,誰がどの時点で行うのか,判断はどのようになされるのかなどの透明性と客観性も必要となるといわれている(2019. 開保津貴子ら).今回のブラッシュアップによりラダーの活用と評価プロセスが明確化したため,今後は有効性の検証を実施していく.また,作成した各項目の信頼性と妥当性の検証,卒前教育と卒後教育の連携などを視野に入れ検討を継続していきたい.