第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-2] ポスター:管理運営 2 

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PQ-2-3] 精神科病院に勤務する作業療法士の疾患別リハビリテーションに対する認識

高木 洋平1, 古御門 幸奈1,2, 松本 武士1,3, 小林 航1, 飯島 直孝1 (1.医療法人社団大和会 大内病院 リハビリテーション部, 2.東京都立大学大学院  人間健康科学研究科 作業療法科学域 客員研究員, 3.名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻 博士前期課程)

【はじめに】精神科病院の作業療法士(以下,OT)はあらゆる病期,様々な疾患・症状に加え退院・就労支援など,期待される役割が増加している.これらの期待に応じるには個別対応が不可欠であるが,2時間を標準,25人を1単位とする算定基準は未だ改正されておらず,OT業務拡大の大きな足枷である(小林正義,2023). 一方,2020年より精神科病院での疾患別リハビリテーション料(以下,疾患別リハ)が算定可能となった.「算定状況:10%」(日本作業療法士協会,2023) と,未だ少ない状況であるものの,個別対応として疾患別リハを活用している病院もある.しかし,集団で実施する精神科作業療法と時間的枠組みや関わり方が異なることから,勤務するOTに戸惑いが生じるなど,期待される役割を果たすほどの有効的な活用に至っていないこともある.より良い支援を発展させるためには,疾患別リハを算定している精神科病院に勤務するOTの認識から,活用しきれていない要因を探り,業務改善を図る必要がある.
【目的】精神科病院に勤務するOTにアンケートを実施して,疾患別リハに対するイメージや必要性,不安等の認識を検討し,その改善策を明らかにする.
【対象】A病院に在籍,かつ精神科領域での勤務経験を半年以上有するOT38名とした.
【方法】アンケートはGoogle Formsを使用し,疾患別リハの必要性の認識や不安に感じることなどを,2から5件法9問,複数回答が可能な選択肢3問と自由記述2問での回答とした.分析方法は記述統計及び自由記述の質的検討とした.本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】アンケートの回収率は71.1%(27/38名)であった.経験年数は1-3年目が40.7%,4-9年目が18.5%,10年目以上が40.7%であった.性別は女性51.9%,男性40.7%,その他3.7%,回答しない3.7%であった.疾患別リハを算定している48.1%,していない51.9%であった.精神科領域における疾患別リハプログラムのイメージは手工芸・創作・芸術活動88.9%,IADL訓練88.9%,認知リハビリテーション81.5%の順に高く,各部署で提供されているプログラムは手工芸・創作・芸術活動85.2%,身体運動活動81.5%,ゲーム等余暇活動77.8%の順に高かった.精神科作業療法の提供において,実施時間2時間が長いと思う40.7%,思わない25.9%であり,十分な個別対応が出来ている3.7%,いない66.7%であった.精神科領域における疾患別リハは必要と思う88.9%,思わない7.4%であり,「集団だけでは補えない」,「焦点を当てた介入が可能」等の回答があった.疾患別リハへの関与ついて,どちらでもない40.7%,したいと思う37.0%,思わない22.2%であり,疾患別リハの提供で不安に思う項目は,時間的負担が大きい74.1%,身体的負担が大きい48.1%,方法が分からない40.7%,サポートが不十分40.7%の順に高く「書類等の業務負担が大きい」,「適切な個別対応を提供する知識が不足」等の回答があった.
【考察】アンケートの結果,精神科領域における疾患別リハの必要性は広く認識される一方,時間的・身体的負担や方法論,周囲のサポートに対する懸念があることがわかった.精神科病院での疾患別リハの経験が浅いOTは多く,介入方法やプログラム内容に関する教育が不十分なこと,20分1単位の算定に時間的・身体的な適応が追いつかず,心理的にも身体的にも負担となったことが有効的な活用に至らなかった要因と考えられる.改善策として,介入方法やプログラム内容の質を高める継続的な教育体制の構築,それらを指導するOTの育成,書類作成の効率化等の改善が図れれば,精神科病院のOTに期待される役割に応えられる支援が提供できるのではないかと考える.