第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-1] ポスター:教育 1

2024年11月9日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-1-2] 当院回復期病棟の若手作業療法士を対象としたEBPに対する認識

混合研究法を用いて

古田 憲一郎1,2, 平松 恭介1, 石橋 裕3 (1.医療法人社団 苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院, 2.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域 客員研究員, 3.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域 准教授)

【目的と意義】本研究の目的は, 回復期病棟の若手作業療法士のEBPの認識について, その特徴を統計学的に明らかにしたうえで, EBPに対する自己認識が高い若手作業療法士がEBPに抱く思いを明らかにすることである. 本研究は卒後教育を行っていくうえで必要なプログラムの基礎資料となるだけでなく, 実際のロールモデルを示すことにも繋がり, EBPに対する知識と技術の向上に繋がる展開が期待できる.
【方法】本研究デザインは説明的順次デザインを採用した混合研究法である. まず第1段階で量的データの収集および分析を行い, 第2段階で第1段階の解釈をふまえて質的データの収集および分析を行った. <第1段階>研究対象者は, 当院の回復期リハビリテーション病棟に所属した経験のある1〜5年目の作業療法士であった. 分析方法はまずEvidence-Based Practice自己評価尺度(以下, EBPSA)の各質問項目・因子項目毎に記述統計量を算出した. その後, 個人得点の合計の中央値でEBPSA高得点群・低得点群にわけ, 質問項目毎にMann-WhitneyのU検定で群間比較を行った. <第2段階>研究対象者は, EBPSAの高得点群の中から合目的的に4名を選定した. 基本属性として, 年齢, 性別, 経験年数について聴取した. インタビュー内容は第1段階の検証結果に基づき質問項目を設定した. インタビュアーは, 臨床経験年数11年目の作業療法士であり, 質的研究を行った経験がある者であった. データは, 院内のプライバシーが確保された環境等にて30分程度の半構造化インタビューを一度実施し収集した. 分析方法に関して, 対象者の基本属性は記述統計量でまとめた. 対象者の発言内容は録音したものを文書化し, Mayringの質的内容分析の手法を参考に, 対象者の語りから「EBPに抱く思い」に関係するインタビューデータを抽出し, それら内容を要約的に集約した. インタビュアーは, 研究の全体像, 面接に要する時間, 研究内容等を研究参加者に十分に説明し, 口頭と同意書により承諾を得た. インタビュー内容は対象者に許可が得られた後にICレコーダーに録音した.
【結果】<第1段階>研究対象者は14名であった(男性3名, 女性11名). EBPSAの下位項目のうち有意差があった項目は(6)私は, 自らが提供する作業療法の中に,EBPを取り入れたい, (7)私は, EBPについて学びたい, (8)私は, 作業療法士として,EBPを行う必要があると思う, (14)EBPを行うことで, 作業療法の評価と介入に関する最新の知見についていくことができると思う, であった(p<0.05). <第2段階>研究対象者4名は, 女性4名, 平均年齢27±2.83歳, 平均経験年数3.75年であった. 集約したインタビューデータは概ね「EBPの促進と阻害」に大別できた. 「EBPを促進」する要因は【結果としてのEBP】【定期的なOT同士の集まり】【聞く存在と気にかける存在】【流行へのアンテナ】【倫理や使命感に駆られる想い】【進化したITの活用】であった. 一方, 「EBPを阻害」する要因は【漫然としたリハビリ提供】【業務とプライベートの塩梅】であった. 両方の因子にもなり得る要因は【直面した課題からの推進力】【意識している知識】であった.
【考察】Schon DA(1984)は. 今までの経験, 知識で対応が困難な事象の対応により省察的実践は始まると述べている. また, 山中(2024)は経験学習サイクルに関して, 助言をしてくれる他者の存在の重要性を説いている. 本研究で示されたEBPのどちらの要因にもなり得る「直面した課題からの推進力」は, 省察的実践のために必要な事象の開始と質の良い省察ための協力者の存在を示しており,若手教育に関わる際には意識しておくポイントであると考える.