[PR-2-6] 作業療法学生の学習動機づけに与える因子の検討
はじめに
動機づけは教育学においても重要視されており,学生自らが意欲的に勉強に励むためには重要な要素である.大学生を対象とした調査では,動機付けと勉強時間や成績の間に正の相関関係があることが報告されている.作業療法の養成校においても,学生の動機づけを重要視し,学年間での学習の動機づけの比較を検討した報告はあるものの,学生の動機づけに与える要素に関する検討をした報告はほとんどない,このため,学生が課題に向かう行動や志向を聴取し,学生の動機づけに与える因子を検討することを本研究の目的とした.
方法
対象者は本学作業療法学専攻の学生105名とした.学生には書面をもって研究の趣旨の説明を行い,回答をもって同意とすることを伝えた.方法は無記名のアンケート調査とし,学習の動機づけ尺度,課題先延ばし尺度,失敗傾向尺度,促進予防尺度の回答を得た.学習動機付け尺度は「学んでいて楽しいと思える」や,「将来,仕事における実践で生かすことができる」という30項目に対して5件法で回答する.課題先延ばし行動傾向尺度は,「不必要」に先延ばしにする傾向を「課題先延ばし傾向」(ギリギリまで物事にとりかかることを延ばす)と「約束との遅延」(待ち合わせには十分に余裕を持っていく:反転して採点)からなる5件法の尺度である.失敗傾向尺度は,日常生活における広範な失敗について「アクションスリップ」(物忘れや不注意),「認知の狭小化」(処理の範囲が狭まる)と「衝動的失敗」(状況の見通しが悪く行動のプランが不十分によって生じる)について5件法で回答する.さらに,促進予防尺度は「利益接近志向」(肯定的な結果を獲得したいと思う志向)と「損失回避志向」(否定的な結果を回避したいと思う志向)について,5件法の尺度で回答した.すべてのアンケートにおいて,高値になるほどその傾向が強いことを示している.
分析方法は,学習動機づけ尺度と課題先延し傾向尺度,失敗傾向尺度(「アクションスリップ」,「認知の狭小」,「衝動的失敗」),促進予防焦点尺度(損失回避志向性,利益接近志向性)の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.また,変数間の多重共線性を確認したあとに学習動機づけ尺度を説明変数とする重回帰分析(Stepwise)を行い,標準偏回帰係数,(B)と決定係数(R2)を求めた.危険率は5%未満を有意とした.本研究は本学の倫理審査の承認を受け実施した.
結果
105名のうち76名から回答を得た(回収率71%,平均年齢19.3±0.8歳).学習動機づけと各項目の関係では,課題先延ばし(rs=-0.44),約束への遅延(rs=-0.50),衝動的失敗(rs=-0.50),損失回志向(rs=0.24),利益接近志向(rs=0.58)に有意な相関が認められた.また,重回帰分析の標準偏回帰係数(B)の値より学習動機づけに影響を与えている要因は,利益接近尺度(β=0.47,P=0.00),衝動的失敗(B=-0.40,P=0.00),損失回避志向(B=0.19,P=0.00),であった(R2=0.55).
考察
学生の動機づけには利益への接近志向を持つことや,損失を回避する志向を高めることが動機づけを高める一助になると思われた.損失の回避は「再試験にならない」などの教示が当てはまると考えるが,「良い成績を修めることによる利点」という利益を教示ことも学生の動機づけを高めるのではないかと考えた.また,状況の見通しが悪く失敗してしまうこと(衝動的失敗)が学生の動機づけを下げる可能性があることも示唆され,教員には学生が状況の見通しができるような教育力が求められると思われた.
動機づけは教育学においても重要視されており,学生自らが意欲的に勉強に励むためには重要な要素である.大学生を対象とした調査では,動機付けと勉強時間や成績の間に正の相関関係があることが報告されている.作業療法の養成校においても,学生の動機づけを重要視し,学年間での学習の動機づけの比較を検討した報告はあるものの,学生の動機づけに与える要素に関する検討をした報告はほとんどない,このため,学生が課題に向かう行動や志向を聴取し,学生の動機づけに与える因子を検討することを本研究の目的とした.
方法
対象者は本学作業療法学専攻の学生105名とした.学生には書面をもって研究の趣旨の説明を行い,回答をもって同意とすることを伝えた.方法は無記名のアンケート調査とし,学習の動機づけ尺度,課題先延ばし尺度,失敗傾向尺度,促進予防尺度の回答を得た.学習動機付け尺度は「学んでいて楽しいと思える」や,「将来,仕事における実践で生かすことができる」という30項目に対して5件法で回答する.課題先延ばし行動傾向尺度は,「不必要」に先延ばしにする傾向を「課題先延ばし傾向」(ギリギリまで物事にとりかかることを延ばす)と「約束との遅延」(待ち合わせには十分に余裕を持っていく:反転して採点)からなる5件法の尺度である.失敗傾向尺度は,日常生活における広範な失敗について「アクションスリップ」(物忘れや不注意),「認知の狭小化」(処理の範囲が狭まる)と「衝動的失敗」(状況の見通しが悪く行動のプランが不十分によって生じる)について5件法で回答する.さらに,促進予防尺度は「利益接近志向」(肯定的な結果を獲得したいと思う志向)と「損失回避志向」(否定的な結果を回避したいと思う志向)について,5件法の尺度で回答した.すべてのアンケートにおいて,高値になるほどその傾向が強いことを示している.
分析方法は,学習動機づけ尺度と課題先延し傾向尺度,失敗傾向尺度(「アクションスリップ」,「認知の狭小」,「衝動的失敗」),促進予防焦点尺度(損失回避志向性,利益接近志向性)の関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.また,変数間の多重共線性を確認したあとに学習動機づけ尺度を説明変数とする重回帰分析(Stepwise)を行い,標準偏回帰係数,(B)と決定係数(R2)を求めた.危険率は5%未満を有意とした.本研究は本学の倫理審査の承認を受け実施した.
結果
105名のうち76名から回答を得た(回収率71%,平均年齢19.3±0.8歳).学習動機づけと各項目の関係では,課題先延ばし(rs=-0.44),約束への遅延(rs=-0.50),衝動的失敗(rs=-0.50),損失回志向(rs=0.24),利益接近志向(rs=0.58)に有意な相関が認められた.また,重回帰分析の標準偏回帰係数(B)の値より学習動機づけに影響を与えている要因は,利益接近尺度(β=0.47,P=0.00),衝動的失敗(B=-0.40,P=0.00),損失回避志向(B=0.19,P=0.00),であった(R2=0.55).
考察
学生の動機づけには利益への接近志向を持つことや,損失を回避する志向を高めることが動機づけを高める一助になると思われた.損失の回避は「再試験にならない」などの教示が当てはまると考えるが,「良い成績を修めることによる利点」という利益を教示ことも学生の動機づけを高めるのではないかと考えた.また,状況の見通しが悪く失敗してしまうこと(衝動的失敗)が学生の動機づけを下げる可能性があることも示唆され,教員には学生が状況の見通しができるような教育力が求められると思われた.