[PR-8-6] 訪問による効果的な認知症リハビリテーションの実践プロトコルの開発研究
作業療法士への研修効果測定
【はじめに】平成27年に策定された認知症施策推進総合戦略では,認知症の人に対するリハビリテーションについて「実際に生活する場面を念頭に置きつつ,各人が有する認知機能等の能力を見極め,最大限に活かしながら日常の生活を継続できるようすることが重要」とある(以下,認知症のリハビリテーション).日本作業療法士協会(以下,協会)では,令和4年度老人保健健康増進等事業「訪問による効果的な認知症リハビリテーションの実践プロトコルの開発研究」にて,平成28年度に受託した「認知症のリハビリテーションを推進するための調査研究」の実施で得られた「認知症のリハビリテーションモデル」の提案に基づき,認知症の人に対する訪問による認知症リハビリテーションの効果を分析し,認知症の人に対する生活行為に焦点をあてた標準的な訪問リハビリテーションにおける治療戦略(以下,実践プロトコル)を作成した.
【目的・方法】
協会が作成した実践プロトコルを実施するためのモデル研修を実施し,研修の効果及び実践プロトコルの実施可能性の予備的検討を目的に研修有回前後でアンケート調査を実施し,研修会受講後に実践プロトコルに基づく事例提供を求めた.なお,本発表は協会が受託した老人保健健康増進等事業の成果物をまとめたものであり,研究員が所属する機関において倫理審査を受審して実施した.
【結果】
①参加した作業療法士は34名,経験年数は15.1(±5.4)年,訪問従事年数は5.3(±3.9)年.②研修内容について「理解できた・概ね理解できた」との回答は91%,「非常に満足,満足」の回答は60%であった.③実践プロトコルを構成する項目の理解度は研修後に有意に高かった(p<0.05, Wilcoxonの符号付順位検定).④提供同意が得られたのは14例,Alzheimer dementia(以下,AD)8件, Vascular dementia(以下, VaD )2件, Dementia with Lewy Bodies(以下,DLB)1件,不明3件であった.⑤ADで認知機能低下が軽度~中等度の事例ではBarthel Indexが高値で,生活行為の課題はIADLに関する行為が多かったが,認知機能低下が高度の事例では,浴槽の出入りや更衣に関するBADLに課題が焦点化されていた.一方で,VaDは認知機能の程度に関係なくBarthel Indexが低値で,身体機能低下に起因する生活行為の課題が焦点化されていた.⑤身体機能訓練はADで1例のみ,AD以外では2例の実施で,日課の遂行練習はADの3例で実施,移動練習はAD以外で多かった.掃除・整理はADが5/7例で実施だが,AD以外では1/6例の実施にとどまり,環境調整や介護指導はADでの実施率が高かった.
【考察】
①認知症のリハビリテーションの定義を踏まえた実践プロトコルに主眼を置いた研修は,作業療法士に対して効果的に伝達可能と考える.②事例より,生活行為における課題の背景には認知機能低下が大きく影響していたが,痛みや筋力,運動耐容能,不随意運動といった身体機能低下の影響が多い事例も含まれていた.そのため生活行為の課題は日課の遂行,歩行,健康関連,対人関係など多様様な項目が挙げられた.AD以外の対象者は認知機能に関わらずBIが低く,身体機能低下の影響が疑われたため,ADでは一連の生活行為練習や環境設定,介護指導が多いのに対し,AD以外では歩行・移動練習が多かった.実践プロトコルに基づく生活行為に着目した支援計画はADの認知機能低下による生活行為障害において特に有効に反映されていた.これらは,H27~29の厚労科研(代表池田学)の結果と合致していた.
【目的・方法】
協会が作成した実践プロトコルを実施するためのモデル研修を実施し,研修の効果及び実践プロトコルの実施可能性の予備的検討を目的に研修有回前後でアンケート調査を実施し,研修会受講後に実践プロトコルに基づく事例提供を求めた.なお,本発表は協会が受託した老人保健健康増進等事業の成果物をまとめたものであり,研究員が所属する機関において倫理審査を受審して実施した.
【結果】
①参加した作業療法士は34名,経験年数は15.1(±5.4)年,訪問従事年数は5.3(±3.9)年.②研修内容について「理解できた・概ね理解できた」との回答は91%,「非常に満足,満足」の回答は60%であった.③実践プロトコルを構成する項目の理解度は研修後に有意に高かった(p<0.05, Wilcoxonの符号付順位検定).④提供同意が得られたのは14例,Alzheimer dementia(以下,AD)8件, Vascular dementia(以下, VaD )2件, Dementia with Lewy Bodies(以下,DLB)1件,不明3件であった.⑤ADで認知機能低下が軽度~中等度の事例ではBarthel Indexが高値で,生活行為の課題はIADLに関する行為が多かったが,認知機能低下が高度の事例では,浴槽の出入りや更衣に関するBADLに課題が焦点化されていた.一方で,VaDは認知機能の程度に関係なくBarthel Indexが低値で,身体機能低下に起因する生活行為の課題が焦点化されていた.⑤身体機能訓練はADで1例のみ,AD以外では2例の実施で,日課の遂行練習はADの3例で実施,移動練習はAD以外で多かった.掃除・整理はADが5/7例で実施だが,AD以外では1/6例の実施にとどまり,環境調整や介護指導はADでの実施率が高かった.
【考察】
①認知症のリハビリテーションの定義を踏まえた実践プロトコルに主眼を置いた研修は,作業療法士に対して効果的に伝達可能と考える.②事例より,生活行為における課題の背景には認知機能低下が大きく影響していたが,痛みや筋力,運動耐容能,不随意運動といった身体機能低下の影響が多い事例も含まれていた.そのため生活行為の課題は日課の遂行,歩行,健康関連,対人関係など多様様な項目が挙げられた.AD以外の対象者は認知機能に関わらずBIが低く,身体機能低下の影響が疑われたため,ADでは一連の生活行為練習や環境設定,介護指導が多いのに対し,AD以外では歩行・移動練習が多かった.実践プロトコルに基づく生活行為に着目した支援計画はADの認知機能低下による生活行為障害において特に有効に反映されていた.これらは,H27~29の厚労科研(代表池田学)の結果と合致していた.