[PR-9-4] 臨床実習において異なる学年の実習生を同時に指導した取り組みについて
【はじめに】
臨床実習は,卒前教育として学生が学内で学んだ知識,技術,技能,態度の統合を図り,作業療法実践能力の基本を身につけるための場である.さらに,卒後教育においても不可欠な学習過程であり,作業療法に必要コミュニケーションを基盤とした人間関係能力を育成する重要な機会にもなっている.臨床実習学生(以下実習生)は,実習受け入れ先の体制もあるが,主に養成校から個別で臨床実習に臨む場合が多く実習生が慣れない環境で緊張をしながら行うことが多い.これは,心理的安全性が担保されにくく,主体的に取り組むまでに時間を要す場合がある.今回,同じ養成校で学年の異なる2名の実習生が,一定期間重複してそれぞれの実習を行った.その際,1人の臨床実習指導者(以下指導者)に対し,2名同時に見学を行う体制を新たに導入し,実習生に行動変容が見られ,複数の指導者にも有益な結果となったため,ここに報告する.本報告の倫理的配慮として,ヘルシンキ宣言に則り,対象となる学生にそれぞれ書面を用いて研究内容を説明し,同意書を用いて同意を得た.
【方法】
同じ養成校で異なる実習指導者2名を対象に行った.2023年1月9日より7週間の実習生は5週目より.1月30日より4週対象の実習生は3週目より,午前中のみ同一の指導者について二名同時に見学を行う体制とした.指導者は計8名で担当し,月曜日から金曜日までローテンションで行った.終了後,実習生に各々,個別と複数で行った見学についてアンケートを実施し,利点と欠点を自由記載してもらった.
【結果】
アンケート結果では,2名の学生はおおむね同様の意見を認めた.個別見学の利点としては,利点は臨床での姿勢や取り組みの重要性について知れたことが多く上がったが,欠点としてデイリーノートやケースレポートの内容記載の困難さや見学時での立ち位置や質問するタイミングの困難さが挙がった.複数見学の利点は,実習生同士で違った視点からの知識や見解が広がったことや患者への関りや評価するポイント,動作分析などの理解が深まった.欠点と知っては,実習生から指導者に対して気を使う場面が増えたことが挙げられた.実習生の行動としては,疑問に思うことについての質問が増加した.他者への配慮や声掛けが増え主体的な取り組みが出来るようになっていたことが行動変容として認めた.
【考察】
実習生を同期間・複数見学体制を行うことは,より実践的な臨床参加型の実習体験が可能になったと考える.これは,実習生が同じ養成校であり教育理論が共有しやすかったことや,年齢が近いことにより心理的安全性が保たれたことが一因になったと考える.また毎日違う指導者が担当することで様々な臨床思考や態度を経験でき,実習生の長所や不足している技能などを共有できたと考える.これにより指導者は,実習生同士で議論することが多くなったことで,指導面での新たな発見や,指導負担の軽減を図ることができた.今後の課題として,指導者は異なる学年による知識の差,実習生の個性に合わせた関わりが必要となる.また,異なる養成校の実習生同士の場合,コミュニケーションが不足する可能性が高いため,配慮しなければならない.チーム医療が推奨される中,指導者は多人数で指導を行ったほうが,実習生の個性や見方を引き出しやすく,卒後教育にも繋がる取り組みが行えるように感じる.今後も,実習生が主体的に学べる臨床実習プログラムを提案していきたい.
臨床実習は,卒前教育として学生が学内で学んだ知識,技術,技能,態度の統合を図り,作業療法実践能力の基本を身につけるための場である.さらに,卒後教育においても不可欠な学習過程であり,作業療法に必要コミュニケーションを基盤とした人間関係能力を育成する重要な機会にもなっている.臨床実習学生(以下実習生)は,実習受け入れ先の体制もあるが,主に養成校から個別で臨床実習に臨む場合が多く実習生が慣れない環境で緊張をしながら行うことが多い.これは,心理的安全性が担保されにくく,主体的に取り組むまでに時間を要す場合がある.今回,同じ養成校で学年の異なる2名の実習生が,一定期間重複してそれぞれの実習を行った.その際,1人の臨床実習指導者(以下指導者)に対し,2名同時に見学を行う体制を新たに導入し,実習生に行動変容が見られ,複数の指導者にも有益な結果となったため,ここに報告する.本報告の倫理的配慮として,ヘルシンキ宣言に則り,対象となる学生にそれぞれ書面を用いて研究内容を説明し,同意書を用いて同意を得た.
【方法】
同じ養成校で異なる実習指導者2名を対象に行った.2023年1月9日より7週間の実習生は5週目より.1月30日より4週対象の実習生は3週目より,午前中のみ同一の指導者について二名同時に見学を行う体制とした.指導者は計8名で担当し,月曜日から金曜日までローテンションで行った.終了後,実習生に各々,個別と複数で行った見学についてアンケートを実施し,利点と欠点を自由記載してもらった.
【結果】
アンケート結果では,2名の学生はおおむね同様の意見を認めた.個別見学の利点としては,利点は臨床での姿勢や取り組みの重要性について知れたことが多く上がったが,欠点としてデイリーノートやケースレポートの内容記載の困難さや見学時での立ち位置や質問するタイミングの困難さが挙がった.複数見学の利点は,実習生同士で違った視点からの知識や見解が広がったことや患者への関りや評価するポイント,動作分析などの理解が深まった.欠点と知っては,実習生から指導者に対して気を使う場面が増えたことが挙げられた.実習生の行動としては,疑問に思うことについての質問が増加した.他者への配慮や声掛けが増え主体的な取り組みが出来るようになっていたことが行動変容として認めた.
【考察】
実習生を同期間・複数見学体制を行うことは,より実践的な臨床参加型の実習体験が可能になったと考える.これは,実習生が同じ養成校であり教育理論が共有しやすかったことや,年齢が近いことにより心理的安全性が保たれたことが一因になったと考える.また毎日違う指導者が担当することで様々な臨床思考や態度を経験でき,実習生の長所や不足している技能などを共有できたと考える.これにより指導者は,実習生同士で議論することが多くなったことで,指導面での新たな発見や,指導負担の軽減を図ることができた.今後の課題として,指導者は異なる学年による知識の差,実習生の個性に合わせた関わりが必要となる.また,異なる養成校の実習生同士の場合,コミュニケーションが不足する可能性が高いため,配慮しなければならない.チーム医療が推奨される中,指導者は多人数で指導を行ったほうが,実習生の個性や見方を引き出しやすく,卒後教育にも繋がる取り組みが行えるように感じる.今後も,実習生が主体的に学べる臨床実習プログラムを提案していきたい.