[SS-2-1] 脳卒中の後遺症を残すクライアントの障害の認識と作業参加の関連性における質的解明
【背景と目的】脳卒中発症後のクライアント(以下:CL)は,身体的変化,アイデンティティの再構築,情緒的混乱など多くの課題に直面している.そこから,障害の認識と新しい生活への適応は,リハビリテーションの重要な側面である.しかし,脳卒中の後遺症を残すCLの価値観が,作業参加にどう関連しているのかという研究は限られており,作業療法分野における理解の促進が必要である.本研究の目的は,脳卒中の後遺症を残すCLの障害の認識と作業参加の関係性を質的に解明することであった.これにより,CLの障害に対する価値観や作業参加に対する理解を深め,適切な介入方法の検討に繋がることが期待される.
【方法】本研究は,吉備国際大学倫理審査委員会の承認(受理番号:22-32)と参加者の同意を得て行われた.研究法は構造構成的質的研究法を採用し,参加者は関心相関的サンプリングで収集した.データは半構造化インタビューで収集し,フィールドメモと録音で記録された.収集したデータは,リフレクティブテーマティック分析で分析した.サンプルサイズの妥当性の判断には,Information Powerを用いた.
【結果】インタビューは対象者11人に実施した.Information Powerの5つの項目の内4項目を満たしたことから,適切なサンプルサイズであると判断された.生データからコードを生成し,その共通性に着目しながらパターンコーディングを行い,バリューコーディングでは,<体の回復の重視>,<体の回復と生活の再建の重視>,<障害との前向きな共存の重視>の3つの概念が生成され,プロセスコーディングでは作業参加に関する[作業上の苦労]や[障害による日常生活・社会参加の限界],[社会参加への挑戦と努力]などの14のカテゴリーが生成された.そのバリューコーディングの概念を基にプロセスコードのカテゴリーとの関係性を検討し,3つのテーマが生成された.テーマ1は【障害回復の重視による作業参加の制限】であり,機能回復を重視し,それ以外の作業参加を行いにくい特徴を示した.テーマ2は【機能訓練と作業参加への柔軟な取り組み】であり,機能訓練と作業参加の両方を柔軟に行われる特徴を示した.テーマ3は【機能障害を前提とした作業参加への工夫と適応努力】であり,作業参加への積極的な努力や工夫を特徴としていた.それらは,障害の認識による価値観を軸に変化し,それぞれ異なる作業参加を示す事が明らかとなった.
【考察】本研究は,障害の認識に基づく価値観と作業参加の関係性から,3つのテーマが生成された.【障害回復の重視による作業参加の制限】では,先行研究では,障害の否定的な認識が作業参加に抵抗を示す事を示している.本研究は,職業活動の制約や作業上の苦労,生活における限界に囚われているなどの具体的な作業参加で示された.【機能訓練と作業参加への柔軟な取り組み】では,先行研究において,機能訓練への介入の偏りが問題視される中で,身体の改善と作業参加の質を高める両立した価値観により,機能訓練と作業参加を両立できる事が示された.【機能障害を前提とした作業参加への工夫と適応努力】では,先行研究で示されている障害を前提と捉える事が,作業参加を促進する事に留まらず,本研究では病前や発症後の経験の活用やサポートの積極的な利用と結びつく事が示された.本研究は,障害の認識による価値観を前提に異なる作業参加に結びつくことが示された.それは,作業療法介入において,CLに合わせた介入を考える必要性を強調しつつ,脳卒中後遺症を残すCLの障害の認識による価値観を基に介入が検討される事の有用性を示すものであった.
【方法】本研究は,吉備国際大学倫理審査委員会の承認(受理番号:22-32)と参加者の同意を得て行われた.研究法は構造構成的質的研究法を採用し,参加者は関心相関的サンプリングで収集した.データは半構造化インタビューで収集し,フィールドメモと録音で記録された.収集したデータは,リフレクティブテーマティック分析で分析した.サンプルサイズの妥当性の判断には,Information Powerを用いた.
【結果】インタビューは対象者11人に実施した.Information Powerの5つの項目の内4項目を満たしたことから,適切なサンプルサイズであると判断された.生データからコードを生成し,その共通性に着目しながらパターンコーディングを行い,バリューコーディングでは,<体の回復の重視>,<体の回復と生活の再建の重視>,<障害との前向きな共存の重視>の3つの概念が生成され,プロセスコーディングでは作業参加に関する[作業上の苦労]や[障害による日常生活・社会参加の限界],[社会参加への挑戦と努力]などの14のカテゴリーが生成された.そのバリューコーディングの概念を基にプロセスコードのカテゴリーとの関係性を検討し,3つのテーマが生成された.テーマ1は【障害回復の重視による作業参加の制限】であり,機能回復を重視し,それ以外の作業参加を行いにくい特徴を示した.テーマ2は【機能訓練と作業参加への柔軟な取り組み】であり,機能訓練と作業参加の両方を柔軟に行われる特徴を示した.テーマ3は【機能障害を前提とした作業参加への工夫と適応努力】であり,作業参加への積極的な努力や工夫を特徴としていた.それらは,障害の認識による価値観を軸に変化し,それぞれ異なる作業参加を示す事が明らかとなった.
【考察】本研究は,障害の認識に基づく価値観と作業参加の関係性から,3つのテーマが生成された.【障害回復の重視による作業参加の制限】では,先行研究では,障害の否定的な認識が作業参加に抵抗を示す事を示している.本研究は,職業活動の制約や作業上の苦労,生活における限界に囚われているなどの具体的な作業参加で示された.【機能訓練と作業参加への柔軟な取り組み】では,先行研究において,機能訓練への介入の偏りが問題視される中で,身体の改善と作業参加の質を高める両立した価値観により,機能訓練と作業参加を両立できる事が示された.【機能障害を前提とした作業参加への工夫と適応努力】では,先行研究で示されている障害を前提と捉える事が,作業参加を促進する事に留まらず,本研究では病前や発症後の経験の活用やサポートの積極的な利用と結びつく事が示された.本研究は,障害の認識による価値観を前提に異なる作業参加に結びつくことが示された.それは,作業療法介入において,CLに合わせた介入を考える必要性を強調しつつ,脳卒中後遺症を残すCLの障害の認識による価値観を基に介入が検討される事の有用性を示すものであった.