第10回日本プライマリ・ケア連合学会・関東甲信越ブロック地方会

プログラム・日程表

日程表

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プログラム

単位について
「日本プライマリ・ケア連合学会専門医・認定医のための単位:5単位」、「プライマリ・ケア認定薬剤師の認定単位:4単位」は、講演、パネルディスカッション、ワークショップへの参加により付与されます。
「指導医養成講習会受講単位:1単位」は、10月31日(日)9:00~11:00ワークショップ「家庭医療専門研修・総合診療専門研修におけるビデオレビューのノウハウ」に参加する事で申請が可能です。入室確認用FormのURLがチャットで2回配信(およびFormを開くためのQRコードを発表スライド上で表示)されますので、必ず2回入力してください。
「日本医師会 生涯教育制度単位」は、
申請可能な各セッションに参加することにより(セッションにより付与単位が異なる)が申請可能です。申請用FormのURLがチャットで配信されますので、単位申請を希望する方は入力してください。 
「専攻医のOff-the-jobトレーニングの単位」は、申請可能な各セッションに参加することにより、0.5単位が付与されます。申請用
FormのURLがチャットで配信されますので、単位申請を希望する方は入力してください。



特別講演1
10月30日(土)13:15〜14:15  A会場
T—01—特別講演1(動画配信) Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
 
                    座長  鈴木貞博  長野県支部支部長
         南長野医療センター篠ノ井総合病院 総合診療科部長
                                                    
 
  人生100年時代をどう支えるか
  〜若き総合診療医、プライマリ・ケア医へのメッセージ〜
          鎌田 實
          諏訪中央病院名誉院長  (ご略歴)
                    
 
 人生100年時代と言われるようになりました。この方は循環器の患者さん、こちらは呼吸器の患者さんというように、明確に縦割りで分けることが難しい患者さんが増えています。 病院の中に、総合診療医やプライマリケア医がいることで、糖尿病の治療をしながら呼吸器の治療を受ける、といったことが安心してできるようになります。
 たとえば、高齢で心筋梗塞を起こしたが、糖尿病もあり、腎臓も肝臓の機能も悪いという患者さんなどは、総合診療医が主治医になるほうがいい。カテーテルの治療のときだけ循環器のドクターに相談したり、糖尿病の治療が難しいときだけ糖尿病の専門医にアシストしてもらいながら、全体は総合医が診る。そうすることで、高齢者に多い、せん妄やほかの病気を起こすのを防ぐことができ、精神的なサポートもできるようになるのです。
 患者さんの自己決定をしていく傾向も、ますます強くなっています。独り暮らしだけど、最期まで自宅で治療を受けたい。そんな希望を持つ患者さんは多くなってきました。
 前向きで積極的なプライマリケア医がいると、患者さんのさまざまな希望を、叶えてあげやすくなります。医療がぐっとやさしくなるのです。質の高い、あったかな診療所が多くなるのは、住民にとって安心につながります。
 総合診療医は、大きな病院でももちろん必要ですが、地方の中小の病院に総合診療医やプライマリケア医が入ることによって、病院の質を維持することができるようになっていきます。
 若き総合診療医、プライマリケア医へエールを送りたいと思います。 
 
 
特別講演2
10月30日(土)14:45〜15:45 A会場
T—02—特別講演2(動画配信、質疑応答あり)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
 
                   座長  由井和也
          佐久総合病院地域診療部部長
 
  PC医による震災復興の取り組みの光と影
 〜信州のPHCから石巻の地域包括ケアへ〜
     長 純一
     前石巻市立在宅医療センター長
     前雄勝診療所長
     前石巻市健康部包括ケアセンター長 
      
     石巻じちれん理事
     東北大学医学部臨床教授・東北医科薬科大学医学部臨床教授・
     熊本大学非常勤講師
     NPO法人 在宅ケアを支える診療所・市民ネットワーク 理事
     地域医療研究会世話人
     日本保健医療福祉連携教育学会理事
     宮城の認知症をともに考える会世話人
                                                      
 
佐久病院時代
医療の恵まれない地域(へき地)、領域(精神・社会医学・医学教育など)に関心があり、若月俊一に惹かれ卒後から佐久病院で19年。南佐久農村部で11年、地域包括ケアに従事
医療を通じて、地域を守ることに取り組む 佐久の歴史:農村医療・PHC・SDH
 
最大被災地石巻へ
阪神大震災支援の経験や今までの様々な蓄積を被災地復興に生かしたい
「医療」よりも、被災者の生活を支える そのために復興政策にかかわりたい
医療者が少なく特にPC医の育成が進まない東北で、社会的医師を育成したい
 
石巻での取り組み
最大仮設住宅(1900戸4800人)に、被災した市立病院の仮診療所を開設してもらう
当初より、厚労省の在宅医療連携拠点のモデル指定  
再建される市立病院は総合診療医育成を柱とする 同時に東北医科薬科大学が創設された全国より指導医を募り、PC領域の人材育成を当初より目指す 2名の家庭医専門医を輩出
提言した「被災地復興に地域包括ケアによる街づくり」が中央に大きく評価され、1年で、復興庁のモデル(のち、地方創生や中心市街地活性化など内閣府のモデルも)など、石巻市の看板政策となる  新設の市包括ケアセンター長として、推進に関わるが・・・
地域包括ケア 市町村が推進する責務がある すべての医療介護政策は地域包括ケアを目指す、特に住まいと住まい方が最も基本で、生活支援介護予防が重視されている  
復興の街づくりと医療介護と被災者支援政策が連携できることが地域包括ケア 
被災地区に市の医療機関があることと総合医育成を融合させたことが石巻モデルだった
実際は、国には高い評価を受けたが、実権はなかった  行政の縦割りはすさまじい  
 
なぜ、選挙に出たのか?
  1. 現職が辞めた 予想される新市長の下で仕事を続けることは困難だと感じていた
  2. 地域包括ケアの看板だけ背負わされ、何の実権もないことの矛盾に、疲れた
  3. 市立病院が総合診療医育成の拠点となるという話が反故にされた。また病院が危機的
  4. 東北医科薬科大学の問題を周知したい 総合診療・地域医療を担うことを目的に作られたが、その医師育成と特に貸付金の制度に大きな問題あり 社会問題化する必要がある
 
そして、これから
超高齢少子社会において、医療者が果たすべき役割は?
医療を含む社会保障を取り巻く状況にどう向き合うのか?
 
 
特別企画
10月31日(日)9:00〜11:50  C会場
K—01—特別企画(ライブ配信)
                     
 
これまでの新型コロナウイルス感染症を総括して、それぞれの現場で第6波に備える  ~ Q&Aであなたの疑問も解決します ~ 

2019年12月に武漢で発生した新型コロナウィルス感染症は瞬く間に世界に広がり、日本にも多大な影響を及ぼしました。そして今もまだその脅威は現在進行形であり、その時々で新たな問題を我々に突きつけてきます。本セッションはライブ配信という強みを活かして、新型コロナウイルス感染症について、今現在の科学的知見を共有するとともに、医療者としてこれからどう対峙していくかをともに学ぶことを目的としています。新型コロナウイルス感染症診療をそれぞれの現場で実践する医療者の立場から現状を総括していただくとともに、第6波に向けて、それぞれの現場でどう立ち向かっていくかを討議します。そして、皆さんが今抱いている疑問についてもQ&A方式で登壇の先生方に回答していただきます。

タイムスケジュール
9:00-9:40     EBMと病態生理で考える新型コロナウイルス感染症治療
             嶋崎 鉄兵先生 (杏林大学医学部付属病院 感染症科)

9:45-10:15   新型コロナウィルス感染症診療における課題と今後の備え
       片山 充哉先生 (東京医療センター 総合内科/感染症科)

10:30-11:50 それぞれの現場で新型コロナウイルス感染症に立ち向かう
      

(前半) シンポジウム 各シンポジスト 15分x3 (~11:15)
         ・地域小病院で新型コロナウイルス感染症に対応していく
       古屋 聡先生 (山梨市立牧丘病院 医師)
                 ・看護師として新型コロナウイルス感染症に対峙する
                          髙橋 真由美 看護師(杏林大学医学部付属病院 CICU)
                      ・大学病院で新型コロナウイルス感染症に立ち向かう
                                  ~チームビルディングと施設連携~
                          岡本 耕先生 (東京大学医学部附属病院 感染症内科)

 (後半) Q&A 30分間  
                      あらかじめ収集した質問およびチャットでその場でいただ
                      いた質問を、進行側で選別し、それぞれの質問・課題に対
                      して助言や意見を述べていただきます。 
 
     

 
教育講演
10月31日(日)10:45〜11:45  B会場
E—01—教育講演(動画配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
 
                    座長  永井立夫  
          南長野医療センター篠ノ井総合病院 膠原病科部長
 
  プライマリケアの現場での母性内科医療
      村島温子 (ご略歴)
      国立成育医療研究センター・周産期母性診療センター
      妊娠と薬情報センター長
 
 母性内科は慢性疾患を持つ女性の妊娠(合併症妊娠)と妊娠中に出現する疾患(妊娠合併症)において内科的ケアをする科、と考えている。私自身、専門分野であるリウマチ膠原病合併妊娠以外に、妊婦の発熱や腹痛をはじめ、周産期医療の中のプライマリケア医としての働きも求められている。先日も、手のしびれで受診された妊婦さんがギランバレー症候群であった症例を経験した。
 プライマリケアの現場では妊娠中に出現する諸問題に対応しなければならない場面が多いと拝察する。腹痛を訴える妊婦の診察では、非妊娠時の鑑別疾患以外に妊婦ならではの疾患を鑑別しなくてはならない。また、薬剤を使用する場面では妊婦に使用してよいかどうか判断しなくてはならない。新型コロナを例に取っただけでも、ワクチンを接種する際の説明、り患した際の治療について非妊娠時とは違った対応が求められる。妊婦であっても必要な薬剤が適切に使用できるための環境つくりを目的として、2005年に厚労省の事業として開設された妊娠と薬情報センターも昨年15周年を迎え、次のステップに進むところである。当日はこれまでの活動から得られた当該分野の考え方(総論)と一般臨床で頻用される薬の使い方(各論)について解説する。
 さらに、最近注目されているプレコンセプションケアや妊娠中に明らかになった生活習慣病体質を持つ女性を「未病」に導く生活指導、これら母性内科とプライマリケア医の連携によって、日本の女性、しいては日本全体の健康寿命の延伸につながる可能性についても簡単に紹介したい。
 
シンポジウム1
10月30日(土)13:15〜14:35  B会場
S-01-シンポジウム1(ライブ配信)生涯学習1単位
                             
これからの地域医療におけるグループ診療を考える
 
  企画責任者、座長   奥 知久 医療法人奥内科・循環器科院長
  シンポジスト(事前) 佐々木淳 医療法人悠翔会理事長、診療部長
             北澤彰浩 佐久総合病院地域ケア科
             安藤親男 国保北山診療所
  シンポジスト(当日) 坂井雄貴 ほっちのロッヂの診療所
                                小林和之 南牧村診療所
             中井和男 国保小谷村診療所

 本企画の目的はこれからの地域医療における「グループ診療」の意義・役割・ポイントを抽出することです。
 そのために本企画は2段階の構成になっています。
●1段階目は事前シンポジウム。 ゲストに首都圏を中心に80の医師で5000人以上の在宅患者を抱える悠翔会グループの理事長である佐々木淳医師と長野県で長年地域医療を実践してきた二人の医師で討論を行います。司会の奥より悠翔会に実際に見学に行った際の映像やレポートを紹介し、それを元にグループ診療・チーム医療における規範的統合や機能的統合のあり方やソロ診療の意義の再検討を行います。
●2段階目は当日のリアルセッションでのシンポジウム。 ゲストに地域でグループ診療を支える若手医師の二人と2020年度やぶ医者大賞を受賞し、村の健康を一手に担う中井医師を迎えます。事前シンポジウムの映像を流し、供覧しながら再度グループ診療やソロ診療の意義やこれからの地域医療を支えていくポイントについてディスカッションします。当日参加の方々からのご意見も歓迎いたします。
【キーワード】
#グループ診療 #ソロ診療 #チーム医療 #規範的統合 #機能的統合 #情報連携 #ICT #多職種連携 #タスクシフト #ケアの品質 #継続性
 
シンポジウム2
10月30日(土)15:30〜17:00 B会場
S-02-シンポジウム2(動画配信、質問可)Off-JT 0.5単位、生涯学習1.5単位
  
おさえておきたいウイメンズヘルスの基本〜産婦人科研修必修化〜
 
 企画責任者 座長 水谷佳敬
          さんむ医療センター産婦人科医長・総合診療科医長
       講師:栗原史帆 亀田ファミリークリニック館山
          近藤慶太 亀田ファミリークリニック館山
          進藤達哉 亀田ファミリークリニック館山
          矢藤有悟 佐久総合病院
          山田啓文 亀田ファミリークリニック館山
       後援:倉澤剛太郎 浅間南麓こもろ医療センター
                                  
 2020年度より産婦人科研修が初期研修において再必修化されました。厚労省の指針では手術や分娩ではなく、日常的に頻繁に遭遇する問題へ対応できることが研修目標として掲げられています。初期研修を終えた若手が専攻医として入職してくるのが2022年度と、来春からになります。一方で、現在の専攻医や指導医陣は十分な女性診療の経験を得る機会に恵まれず、日常的にもそれほど遭遇しないという声を聞きます。専攻医に女性診療領域の指導が十分にできなければ患者さんのケアと指導機会の機会損失となりますし、今後の専攻医のほうがウィメンズヘルスをよく知っているという逆転現象がおこる可能性も考えられます。
プライマリ・ケアの現場でウィメンズヘルスについて求められる知識や技術は内診台など専門的な機材を要さないものが多く、大抵が知識として知っていれば対応可能なものです。このWSで知識のアップデートを行い、明日からの臨床・指導に備えてみませんか。
時間的制約のある中ですが、以下の項目を取り扱う予定です。
・妊娠・授乳中の投薬について
 妊娠中、授乳中でも一部の禁忌薬や注意点を守れば多くの薬剤が使用可能であることをご存知ですか。
・妊娠中の放射線検査について
 妊娠中のどの時期であっても必要性の高い放射線検査は許容されます。ただし、事前にベースラインリスクについても説明を行っておくことが大切です。
・妊娠中のよくある症状、コモンプロブレムへの対応
 妊娠にともなって様々な症状が出現しやすくなりますが、多くの症状は経過観察や対症療法での対処が可能です。妊婦に接する機会が少ないと、どういった訴えに注意を要するか感覚的にわかりにくいものですが、諸症状への対応を学べます。
・妊婦診療のRed flag(危険兆候)について
 妊娠を脅かすサインにさえ注意を払えば、妊婦診療も怖くありません。
・妊娠前のケア(プレコンセプションケアについて)
 妊娠してからは介入が困難な妊娠前のケアにアプローチできるのは我々の強みです。
・月経困難症と低用量ピルについて
 低用量ピルは産婦人科医でなくとも処方可能です。知識をみにつけることで、処方が困難であっても困っている患者さんに提案できるようになります。
 
シンポジウム3
10月30日(土)15:30〜16:50 C会場
S-03-シンポジウム3(動画配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
                                  
それぞれのレンズからみたアドバンス・ケア・プラニング(ACP
 
 企画責任者、座長  白籏久美子
           飯田市立病院総合内科部長
                臨床研修センター長
 演者・シンポジスト 近藤清彦 相澤東病院診療部長
           植竹日奈 松本医療センター・
                包括医療支援センターソーシャルケースワーカー
           岡村律子 松本市・介護と医療連携支援室
                医療・介護コーディネーター
                                  
 
 私達は、常日頃より、患者さんとその病、取り巻く環境を様々な角度から評価し、その先にある道を見つめ、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)をチームで行っています。それぞれが自分の持っているレンズを拡大鏡にしたり望遠鏡にしたりしながら、患者さんと共に歩み続けたいと願っています。
 自分とは違うレンズで見たACPから、今後の自分のレンズに新たなフォーカスを取り入れてみませんか。

相澤東病院診療部長 近藤清彦
意思決定支援における意思形成支援においては必要な情報が説明されているか、本人が理解している事実認識に誤りがないかが重要であるとされているが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者への説明時に、気管切開下での人工呼吸器装着(TPPV)後の療養生活についての情報が正しく伝わっているであろうか。TPPV開始後における、残存する歩行・嚥下・発声機能や、機器を使用しての意思伝達方法、独居であっても24時間の在宅ケアが可能となる社会福祉制度、生きがいを保っている患者の例などの情報が、説明する側にも社会的にも十分理解されていないのではないか。ALS患者の呼吸不全は、「人生の最終段階」とは異なることをお話します。

まつもと医療センター包括医療支援センターソーシャルワーカー 植竹日奈
ACP、人生会議。AdvanceDirectiveという言葉もあります。どの言葉も同じようで少しずつ違う気もします。例えば交通事故で重傷を負い、救命の可能性がかなり低いときに挿管をしますか?ということへの意向を事前に決めておくことだったり、ALSと診断されて、いずれやってくる呼吸不全のときに人工呼吸器をつけて生きていくかどうかの選択だったり、医療の現場で命がけの意思表示をするための作業を呼ぶ言葉とも言えます。それらは実際の医療の現場でどのように展開しているでしょうか?人生会議で話し合ってきたことは、実際の医療の場に届いているのでしょうか?神経難病、繰り返す誤嚥などの症例から現状と課題をお話します。

松本市介護と医療連携支援室医療・介護コーディネーター 岡村律子
松本市医師会では在宅医療推進の一環として、長野県在宅医療推進モデル事業とタイアップし、「リビングウィルを考える」事業を2017年から3ヵ年計画で行い、最終年である2019年に松本市地域包括ケア協議会との連名で「松本市版リビングウィル」を公開しました。事業終了後も「リビングウィルを考える会」を続けていますが、「自分や大切な人の死について考えることは、生きることを考えることになる」という感想が多く聞かれます。また、同様に多くの参加者が過去の看取りを引きずっていることも明らかになりました。コロナ禍の今、地域支援者である多職種の方々、地域で暮らす方々への周知啓発活動についてお話します。

シンポジウム4
10月31日(日)11:15〜13:00 A会場
S-04-シンポジウム4(ライブ配信)生涯学習1.5単位
                                  
パネルディスカッション医師誘発性困難事例(仮)
 
企画責任者 鄭 真徳 佐久総合病院総合診療科部長
演者・シンポジスト
藤沼康樹:医療福祉生協連家庭医療学開発センター(CFMD)センター長
由井崇之:佐久総合病院ケアマネジメントセンター主任介護支援専門員
田中裕志:佐久総合病院医療安全管理室師長
坂井理恵:佐久総合病院訪問看護ステーション訪問看護認定看護師
由井和也:佐久総合病院小海分院診療部長
鄭真徳:佐久総合病院総合診療科部長
                                  
 
 要介護者や多疾患併存患者への対応において、多職種連携が重要であることはすでに広く知られています。そういった患者の中には、関係者が対応に困難を感じる症例は少なくありません。困難を感じる原因は様々ですが、医師と他職種とのコミュニケーションの問題が大きかったり、医師の目標設定が他職種とずれていることが主な原因となっている症例もしばしば見受けられます。
 今回、多職種連携が必要な症例において医師が原因で困難に陥っている事例を「医師誘発性困難事例(仮)」と名付けて、多職種で意見交換および対処法を検討するセッションを企画しました。おそらくこのテーマが学会で議論されるのは、世界初ではないでしょうか。
 当日は、現場で奮闘しているケアマネジャー・訪問看護師・病棟看護師が、過去に経験した医師誘発性困難事例をもとに創作した仮想症例をいくつか提示します。各症例の困難に陥った原因や対処法について、この概念の名付け親(?)でもある藤沼康樹先生を交えて多職種でディスカッションしたいと思います。
 ライブ配信ですので、リアルタイムで参加者から質問や意見も募集します。どんな方向に話が進むのか、予測不能です。みなさん、是非ご参加ください!
 
当日検討する予定の仮想症例(内容が変更になる可能性があります)
〇 血糖管理の難しい高齢者。周囲は生活習慣を改善しようと頑張っているが、本人はまったくその気なし。外来受診のたびに付き添い家族が主治医から責められてしまう。カルテには、主治医から訪問看護師に対する厳しい言葉が記載されている。
〇 がん終末期の方。関係者は訪問診療導入が望ましいと思っているのだが、病院専門外来主治医がなかなか引き継ぎを患者に勧めてくれない。最期は急激に状態が悪化して、対応に困ってしまった。
〇 手術後誤嚥性肺炎を繰り返す精神疾患患者。本人は嚥下訓練の意欲が乏しく、経口摂取再開は難しい状況になってしまった。経鼻経管栄養を始めたが、本人は理解できずに自己抜去。胃ろうの説明しても理解できず拒否。家族は経管栄養のメリット・デメリットを理解したうえで希望しなかったのだが、執刀医が繰り返し胃ろう造設を勧めるので、断れない状況になってしまった。
 
シンポジウム5
10月31日(日)15:15〜16:45  B会場
S-05-シンポジウム5(動画配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1.5単位
                                  
プライマリ・ケアのための漢方医学『次の一手』
  <高齢者医療でよくある症状編>
 
座長       山川淳一(企画責任者)
               南長野医療センター篠ノ井総合病院漢方診療科部長ご略歴
         水嶋丈雄  医療法人水嶋クリニック院長 ご略歴
 シンポジスト  吉永 亮  飯塚病院東洋医学センター漢方診療科ご略歴
         永田 豊  諏訪中央病院東洋医学科部長 ご略歴
         樫尾明彦  給田ファミリークリニック副院長ご略歴
         佐藤寿一  名古屋大学医学部附属病院総合診療科病院教授 ご略歴
    共催:株式会社ツムラ  

  プライマリ・ケアにおいて漢方薬を診療・ケアに活用している医療従事者は多い。 しかし、各症候への第一選択とされる漢方薬で症状の緩和が思うように得られなかった場合の「次の一手」については、症状、病名からの処方選択は行き詰まりがちで、漢方特有の考え方が必要となることも少なくない。
 また漢方薬の適応自体をあきらめてしまうケースも散見され、漢方医学を学び始めても実践に繋げられない一因であるとも考えられる。
 そこで、プライマリ・ケアにおいてよく出会う症候にスポットを当てた。
 第一部では
  演題1:こむら返り(腓腹筋けいれん) に対する漢方治療【抄録
  演題2:冷えに対する漢方治療抄録
  演題3:認知症の行動・心理症状に対する漢方治療抄録
  演題4:腰下肢痛に対する漢方治療抄録
 各担当講師が、初級者にも理解できるように東洋医学的視点を解説する。漢方の基本的な概念、および各症候について第一選択の処方が奏効しなかった場合の考え方、そして検討される「次の一手」を紹介する。
 第二部では今回の開催様式を考慮し想定質問を用意して回答する方式を採用した。
  質問1:高齢者に漢方治療を行う際の副作用を教えてください
  質問2:高齢者に漢方治療を行う際の有用性を教えてください
  質問3:高齢者に漢方治療を行う際の効果判定のタイミングについて教えてください
  質問4:高齢者に漢方治療を行うコツを教えてください
  質問5:漢方の学び方について教えてください
 想定質問は漢方診療のTipsや、総合診療医が漢方薬を活用するに際しての疑問点などについて講師間でdiscussionを行い、『高齢者に漢方治療』に絞り込み5問の質問を用意した。いわゆる簡便な「マニュアル」には書いていなくても参加者に日常診療ですぐに役立ち、実践できるような内容に留意した。
 患者の訴え、所見から、病態を東洋医学的に理解する方法を学ぶことで、日常診療・ケアにおける東洋医学的アプローチの有効性について、参加者により広く知ってもらうことを希望する。
ワークショップ1
10月30日(土)13:15〜14:35  C会場
W-01-ワークショップ1(ライブ配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
                                  
シミュレーションで深めるいきいき気道管理
 
 企画責任者、水間悟氏 諏訪中央病院総合診療科
 演者 前田晃宏 星野諒 中村考志 平田千尋 志村麻衣
    司馬煕 山田龍之介 瀧宮龍一 
    (諏訪中央病院総合診療科専攻医および初期研修医)
                                    
 地方の地域の中小規模の病院においては頻繁に気道緊急に出会うことはないけれど、年に数回はヒヤヒヤすることがあります。学年が低い医師ほど気道管理に苦手意識があり、また学年が上がったとしても救急医や麻酔科医でない限り、年に数回の気道緊急のために体系的に気道管理を学び研鑽を積んで来たという医師は多くないでしょう。今回の企画は気道管理に慣れない若手医師や学年が上になったとしても体系的な気道管理方法について学び直したいという医師向けのものです。私達メンバーも救急医や麻酔科医ではなく、初期研修医から専攻医、卒後10年目までの医師で構成されており、毎日のように気管挿管をしているわけではありません。気道管理に自信が持てないからこそ、常日頃から集まって勉強会を行っています。実際には頻度高く気道緊急の症例に出会えるわけではないため、シミュレーションを行い勉強しています。気管挿管は緊急性および侵襲性が高い行為かつ一般の医師にはそれほど頻度高く症例にあたるわけではないため、シミュレーション教育が効果を発揮する領域でもあると思います。気道管理にある程度自信を持つことが積極的な治療への第一歩となることもしばしばです。高齢者の診療ではこれまでの経過を大切にするのはもちろんですが、治療で助けられる症例に対して腰が引けて消極的に看取り方針としてしまうのもよくないことだなと思っています。気道管理のプロではないけれど、地方の中小規模病院でもふいに訪れる気道緊急があり、なんとかそれに対応したい、そんな気持ちで勉強を続けています。気道管理、特に気管挿管においては喉頭展開やチューブコントロールなど技術の部分が多くを占めていますが、そうでない部分(抜かりない準備、体位の調整、その場のメンバーの適切な配置など)もあります。今回の企画は、実際に手を使ってという技術の部分は残念ながらできませんが、気道管理の全体のアプローチや丁寧な準備、チームコーディネーションの部分を勉強するためのものになります。すでにお馴染みの方もいるかと思われますが、気管挿管の適応(ABCD)、換気困難の予測(MOANS)、挿管困難の予測(LEMON)、全身状態の評価(HOP)、準備(SOAPMD)などのゴロを使い、痙攣重積の症例や呼吸不全の症例に対して気道管理シミュレーションを行いたいと思います。上記が身についている方や既にそのような準備なくともある程度自信をもって気道管理できている方にとっては退屈な企画になってしまうかもしれません。そうでない方、まだまだ苦手意識がある方、是非一緒に勉強してみましょう。そして、持ち帰っていただいて自施設でもシミュレーション勉強会を始めてみてください。
 
ワークショップ2
10月31日(日)9:00〜11:00  C会場
W-02-ワークショップ2(ライブ配信、入室確認あり)指導医養成1単位、生涯学習2単位
                                  
家庭医療専門研修・総合診療専門研修におけるビデオレビュー
のノウハウ
(指導医養成講習会受講1単位取得可)
 
 企画責任者、横谷省治
       筑波大学医学医療系地域総合診療医学教授
 講師(またはファシリテーター、その他)
 

 家庭医療専門研修、総合診療専門研修において、外来研修等でのビデオレビューは必須の研修方法と位置づけられている。機材の進歩で技術的なハードルは低くなった。しかし、どのように用いるのがより教育的か、患者への倫理的配慮やどう現場スタッフの協力を得るかなど、悩んでいる指導医・研修施設は多いことと思われる。そこで、ビデオレビューを研修に取り入れる上での諸課題について、知見を共有し、諸課題の解決策を探ることを目的に、このセッションを企画した。
 ビデオレビューの諸課題を、1) 倫理、2) 準備、3) 実施と評価の3つの側面から検討する。ビデオレビューを積極的に行い高い教育効果を得ている実例を紹介するとともに、参加者のディスカッションを通じてノウハウの共有と問題の解決を目指す。3 側面は、例えば次のようなことが考えられる。
1) 倫理:他では代替できない教育的意義、プライバシー権の保護、患者・学習者への悪影響の最小限化、これらを遵守する仕組みづくりなど
2) 準備:実施する仕組みづくり、機材、開始のノウハウ、継続のコツなど
3) 実施と評価:倫理面や準備も含めた実際の流れ、録画のコツ、レビューのポイント、評価の仕方など
 このセッションでは、ミニレクチャーと参加者とのディスカッションを繰り返し、現実的な成果が得られることを目指す。
 開始冒頭と途中の2回、Googleフォームを用いて氏名、学会会員番号、指定されたディスカッション内容等を企画者宛に送信することで、指導医養成講習会受講単位1単位を取得できる。
※オンライン参加中にGoogleフォームの入力・送信をするため、パソコン等でZoomと同時にインターネットブラウザを開けるか、別のスマートフォン等でQRコードを読み込んでGoogleフォームを開ける準備をしておいて下さい。
※本年5月の学術大会での同名インタラクティブセッションは同内容でしたので、両方にご参加の場合でも指導医養成講習会受講単位を二重には取得できません。
 
 
ワークショップ3
10月31日(日)9:00〜10:30  B会場
W-03-ワークショップ3(動画配信)生涯学習1単位
                                  
PharmGpresented by 千葉大総診
   
 企画責任者    坂口眞弓 みどり薬局代表
               プライマリ・ケア薬剤師認定制度委員長
 座長       生坂政臣 千葉大学総合診療科
 ファシリテーター 鋪野紀好 千葉大学総合診療科
          上原孝紀 千葉大学総合診療科
 参加薬剤師    小林志保 大石和美 川野雅代 柴田淑子
          川末真理 坂井博則 笠原千尋 高橋裕介
          木内翔大
 企画運営     千葉大学総合診療科
                                  
 
目的:薬局の窓口対応から病棟まで、軽症、重症、老若男女を問わず、あらゆる患者に対応するファーマシストこそジェネラル!という観点から、総合的な研修を行います。

概要:2019年1月に東京で開催して好評を博したpharm Gが、関東甲信越ブロック地方会に登場します。日常診療で起こる問題を解決すべく、pharm G(ドクターG)形式で回答者を募り、議論する学習法を行います。用意する課題は当日のお楽しみ。症候学(病歴や身体診察)や副作用、薬局窓口での患者相談やコミュニケーションにフォーカスします。対象は薬剤師中心ですが、医師、看護師、総合診療に興味がある方はどなたでも視聴できます。 尚、本企画では学術大会で収録したpharmG presented by 千葉大総診のうち、時間制約上で短縮した症例2の全編をお届けする予定です。
 
ワークショップ4
10月31日(日)13:15〜14:50  B会場
W-05-ワークショップ4(動画配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1.5単位
                                  
<長野県医師会共同企画>
地域包括ケアにおける『在宅医療・介護連携支援センター』
『地域包括ケアセンター』の現状と展望
 
 企画責任者、座長   飯塚康彦  長野県医師会副会長 飯塚医院院長
            石津富久恵 長野松代総合病院 総合診療科 部長  
 講師:小松郁俊   長野県医師会理事 小松内科クリニック院長【略歴】 
    石津富久恵  長野松代総合病院 総合診療科 部長 
    坂口ひろみ  篠ノ井総合病院地域連携室 課長代理 
    滝澤秀敏   長野松代総合病院・地域包括ケアセンター長 
    赤岡史子   医療法人大和真田会 ましまクリニック院長
    清水 剛   医療法人コスモス
    堺澤隆夫   長野松代総合病院 総合診療科 部長
                                  
プログラム
(1)諏訪市地域医療・介護連携推進センター(ライフドア諏訪)の取り組み
(2)長野市の状況からみる行政開設型センターの実情
(2-1)長野市の包括ケアの現状について
(2-2)長野市在宅医療・介護連携支援センター(篠ノ井病院)の現状について
(2-3)長野市地域包括ケアセンター(長野松代総合病院)の現状について
(2-4)診療所と地域包括ケアとののかかわり
(2-5)介護老人保健施設と地域包括ケアとのかかわり
(2-6)病院総合診療と地域包括ケアとのかかわり

 諸外国に例を見ないスピードで高齢化が進行している日本・・・。65歳以上の人口は現在3500万人を超過しており、2042年に約3900万人でピークを迎えますが、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されています。このような状況の中、団塊の世代が75歳以上となる2025年(令和7年)以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。このため厚生労働省においては、2025ン円(令和7年)をめどに、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
 地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされています。現在、市町村では、 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築している最中です。
 地域包括ケアシステムでは、介護サービス・医療サービスをはじめとしたさまざまなサービスが、連携しあうことが重要ですが、高齢者の生活を支える役割を果たす総合機関として、平成18年4月から各市町村に「地域包括支援センター」が、そして在宅医療の充実と推進の総合機関として「在宅医療・介護連携支援センター」が設置されています。両センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの専門職が配置され、これらの専門職が連携して、それぞれの専門性を活かしながらチームを組んで業務を行っています。
 本企画では、二つの異なる市町村サイズでの地域包括ケアの実際を取り上げます。前半では、人口約5万人の諏訪市における取り組みをご紹介いたします。諏訪市においては、1つの医師会と1つの地域包括支援センターと諏訪市行政がタイアップ、小回りの利く市町村サイズをいかした形で医師会長主導型のセンター運営による在宅医療の拡充を行って、高齢者の地域生活の支援を行っています。後半では、繰り返す市町村合併で人口約37万人となった長野市における取り組みを取り上げます。長野市においては、医師会員の所属が複数に分かれており、在宅医療・介護支援センターは2か所、地域包括支援センターは中学校区を目安に19か所、市役所は27の支所に分かれている状況で、全体を鳥瞰したリーダーシップをとる存在がありません。各地域それぞれで横のつながりをいかした個別の問題解決や取り組みが重要であり、実際、それぞれの施設で地域の特色をいかした活動がなされています。
 事例をご紹介することで、明日からの皆様の地域での地域包括ケアの実践に何か一つでもヒントとなる情報があればと願っております。
 
ランチタイムセミナー1
10月31日(日)12:00〜13:00 B会場
L-01-ランチタイム1(ライブ配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位
                                   座長 山﨑秀 丸の内病院診療部部長
共催:旭化成ファーマ(株)
 
関節リウマチ(RA)の病診連携について
 
        伊藤 聡
        新潟県立リウマチセンター副院長 【ご略歴
                                 
 
 RA治療のアンカードラッグはメトトレキサート(MTX)であるが、副作用をおそれて導入をためらってはならない。自信の持てない医師は、リウマチ専門病院に患者を紹介し、呼吸器合併症やB型肝炎(キャリア、既感染を含む)などを精査してMTXを導入し、以後自院で投与を継続するスタイルが望ましい。生物学的製剤やJAK阻害薬の導入に関しても同様である。筆者自身、埼玉県の整形外科のクリニックで月に1回の外来診療を行っているが、埼玉県立呼吸器・循環器センターに患者を紹介し、MTX、生物学的製剤、JAK阻害薬の導入を行い、肺炎合併時など緊急時の対応もお願いしている。一方当院には県外や佐渡島から多くの患者が受診しており、リスクのある患者はあらかじめ地元の総合病院に紹介し、緊急時の対応をお願いしている。自己注射ができない場合、生物学的製剤、骨粗鬆症治療薬、エリスロポエチン製剤の連携による使用も有用である。特に、エタネルセプトとアバタセプトの皮下注製剤、テリパラチドの週1回製剤(現在は週2回の自己注射も選択可能)、エルカトニンは週に1回の注射であり、地元での使用で頻回の長距離受診を避けることができる。ゴリムマブ(GLM)、イバンドロン酸ナトリウム水和物、ロモソズマブ、エポエチンベータペゴルなどの月に1回の注射も、遠方の患者は当院で1回、地元で2回注射という循環型の連携が有効である。GLMなどの高額な薬剤は、なるべく1つのクリニックに1人の連携にし、連携先の院内薬剤費上昇による個別指導を防ぐようにしている。経口ビスホスホネート製剤(BP)は、アドヒアランスの問題があり、特に高齢者では確実に投与できる静注製剤が望ましい。年に1回投与のゾレドロン酸水和物の登場により連携に頼らなくても遠方の患者で当院でのBPの静脈投与が可能となった。その場合は、まず経口BPやイバンドロン酸ナトリウム水和物をしばらく使用してから導入することが副作用予防となる。ゾレドロン酸水和物は重度の腎機能障害時は禁忌であり、連携によるイバンドロン酸ナトリウム水和物の使用は依然重要なポジションを占めている。GLMは当初自己注射を嫌がっていた患者でも、慣れてくると自己注射に移行できることがあり、連携先の1名の枠が空いたらまた新な連携を開始するということが可能である。JAK阻害薬は経口でクリニックでも簡単に開始可能であるが、リスクを十分考慮すべきである。最近B型肝炎の既往のチェックなしでJAK阻害薬が開始され、紹介されてきた患者があった。B型肝炎の再燃には十分注意しなければならないことを認識し、JAK阻害薬の使用に精通していないクリニックでは、連携での使用が望ましいと考える。”顔の見える連携”が重要であり、講演会後の懇親会が非常に有益であったがコロナ禍で不可能な状態が続いている。新型コロナウイルス感染症の収束を願うばかりである。  
 
ランチタイムセミナー2
10月31日(日)12:00〜13:00 C会場
L-02-ランチタイム2(ライブ配信)Off-JT 0.5単位、生涯学習1単位

         座長 後藤博久
         南長野医療センター篠ノ井総合病院総合診療科部長
 
         共催:アストラゼネカ(株)
                                    
慢性心不全・腎臓病の新展開 ~ダパグリフロジンに対する期待~
 
        桑原宏一郎
        信州大学循環器内科教授 【ご略歴
                                 
 
 糖尿病の治療のゴールは正常人と変わらない生命予後とQOLの達成にある。こうした目標の達成のためには、糖尿病における心腎血管イベントの抑制が必須である。一方で比較的最近まで厳格な血糖管理による2型糖尿患者での心不全発症を含む心血管イベントの抑制を示す明確なエビデンスは得られていなかった。加えて、一部の血糖降下薬ではむしろ心不全発症リスクが上昇することも示唆されていた。このような状況の中で、近年、SGLT2阻害薬が2型糖尿病患者の心不全入院を含む心腎血管イベント、心血管死を抑制することが報告された。現在、SGLT2阻害薬の心不全抑制メカニズムについて検討が加えられているとともに、糖尿病の有無にかかわらず心不全治療薬としてのSGLT2阻害薬の位置づけも明確となりつつある。本講演ではこうした心腎血管イベント抑制を目指した糖尿病治療の現状のoverviewを行いたい。
 
イブニングセミナー

10月30日(土)16:00〜17:00 A会場
F-01-イブニングセミナー(ライブ配信)

          共催:ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社
                                    
「プライマリ・ケアにおける筋骨格系Point of care超音波検査の有用性」
 
        大野 滋
        横浜市立大学附属市民総合医療センター
        リウマチ膠原病センター准教授 【ご略歴

                                 
 
 プライマリ・ケアにおいて超音波検査(US)はなくてはならない検査手技であり多くのプライマリ・ケア医が実際に日常診療において臨床応用しているものと思われる。超音波検査はリウマチ診療においても必須の検査になってきており、特に主治医自身が診察の場で行うポイントオブケア超音波(Point Of Care UltraSound=POCUS)の有用性が話題となっている。
 リウマチ性疾患の病態は様々で、解剖学的に関節滑膜以外に腱・腱鞘滑膜・滑液包・軟骨・腱付着部などの部位の病態が起こる。関節超音波検査は触診と比べ感度良く関節滑膜炎・腱鞘滑膜炎・滑液包炎を検出することができる。また、X線よりも骨びらんの検出感度が高い。診察室で主治医がUSを行う(POCUS)ことで触診をその場で補完し、リウマチ性疾患の早期診断・鑑別診断・治療方針決定を迅速に行うことが可能となる。USは低侵襲、低コスト、必要な関節を全て、迅速に、さらに繰り返し評価できるといった利点がある。
 プライマリ・ケア医が筋骨格系のPOCUSを臨床応用することで、病態の診断・鑑別診断のみならず、リウマチ専門医へ紹介すべきかの判断に役立つものと思われる。本講演では日常診療で高頻度に遭遇する筋骨格系の症状の診断・鑑別診断のための関節病変の超音波検査法について解説する。
 

キャリアカフェ
2021年10月31日(日)13:15~16:30 C会場
C-01-★キャリアcafémini
 
企画責任者、川崎セルツメント診療所    西村 真紀
      茅野市リバーサイドクリニック 鍋島 志穂
 
Room1 13:30~14:40 育児に関する医療従事者の集い
             担当:官澤・前橋
Room2 13:30~14:40 聴いてみよう!薬剤師の支部活動が熱いヒミツ
             担当:柴田・小見川
Room3 13:30~15:00 専門医・認定医の一歩先をデザインする集い
             担当:岩間
Room4 15:00~16:00 アラフィフ世代の集い
             担当:Cチーム
Room5 13:15~16:30 何でもかんでも話したい人集まれ! 


 
 
一般演題
2021年10月31日(日)13:15~17:00 A会場
O-01-一般演題(ライブ配信、質疑応答有り)
 
企画者、佐久総合病院総合診療科 青松 棟吉

※質疑応答は、ZoomのQ&A機能で質問を受付し、座長が採用した質問に対して、ライブ中に回答を予定します。

【 教育・活動報告 】 
 座長 竹村洋典
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
    全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授         
13:15~13:25 新型コロナ流行下での、かかりつけ医機能の維持
13:25~13:35 埼玉発!SPartの立ち上げと活動報告、今後の展望
13:35~13:45 東京都檜原村での市民向け新型コロナウィルスワクチン講習会
13:45~13:55 当院の栄養サポートチームの取り組み
 
【 症 例 報 告 】
 座長 荻野美恵子
    国際医療福祉大学医学部
    医学教育統括センター教授、脳神経内科学教授
    国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学教授
    国際医療福祉大学市川病院神経難病センター長、脳神経内科部長        
14:05~14:15 発熱を伴う頚部リンパ節腫脹の一例
14:15~14:25 亜急性甲状腺炎を契機に診断となったACTH単独欠損症の1例
14:25~14:35 ケアの移行に際し複雑性評価を行い生活の安定化に繋げた症例
14:35~14:45 BZD薬を減薬できるエコーガイド下ハイドロリリース
14:45~14:55 癌終末期若年女性患者への訪問診療とプロフェッショナリズム
14:55~15:05 アルツハイマー型認知症に非痙攣性てんかん重積が併発した2例
 
【  連  携   】
 座長 中井秀一
    ハーモニークリニック院長        
15:15~15:25 COVID19流行後の都内二次救急病院における救急受診の変化
15:25~15:35 かかりつけ医への逆紹介によるRA病診連携の取り組み
15:35~15:45 医療資源が少ない中地域連携により健康問題の解決を図った一例
15:45~15:55 終末期の多職種連携が患者・家族の意向実現に有用であった一例
15:55~16:05 複数のへき地医療機関をWeb会議で結び終末期医療を行った一例
16:05~16:15 患者主体の健康情報管理をアナログ・デジタル併用で推進する試み 
演者の都合により中止となりました
 
 
~ 抄 録 集 ~ 
 
【教育・活動報告】
 
10月31日(日)13:15~13:25 C会場 O-2-1-教育・活動報告
新型コロナ流行下での、かかりつけ医機能の維持
*原田 晴久1、竹内 良美1、深澤 有理1、平林 陽子1、越山 夕美子1、石川 久美子1、藤森 扶世子1、伊藤 大介1、青木 みゆき1、岩原 純子2、原田 恵智子2
1. 社会福祉法人恵和会こまくさ野村クリニック、2. 社会福祉法人恵和会
 
プライマリ・ケア医として新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)流行下、日常診療機能を維持するためにハード、ソフトをどのように実装していったかを時系列で報告する.
①かかりつけ医、プライマリ・ケア医としての基本理念
1)コロナ流行下であっても通常の診療機能を維持する
2)感染標準予防策を講じながら、発熱類型患者の診療を継続していく
②基本理念に基づく対策
1)電話問診による患者トリアージを行う発熱類型患者に対してコロナPCR検査、抗原検査等体制を整備し、初期対応を可能とする
2)かかりつけ患者、通常初診、再診患者、発熱患者、メディカルスタッフが互いに安全確保できる様に動線の時間、空間的分離ゾーニングを行う.メディカルスタッフが感染予防策を徹底し、侵入制限区域含め周知告知する
3)ワクチン個別接種を見据えた体制整備を計画する
②実装
2020年3月既存レントゲン室で11時30分~17時30分~各1時間発熱外来診療開始
2020年5月オンライン診療開始
2020年8月施設、中庭に仮設陰圧診察室設置運用開始、電子カルテ増設、電子決済整備
2020年10月~2021年2月.既存クリニック待合室内パーテション設置完了クリニック内オゾン発生器、HEPAフィルター空気清浄機設置
2021年2月-75℃以上対応ディープフリーザ-設置(2020年12月発注)
2021年3月-25℃以上対応フリーザ設置(2020年12月発注)
2021年5月25日コロナワクチン個別接種開始.日曜祭日72人/日、平日48人/日実施2021年6月web問診システム導入(電話問診の代替を模索)
2021年8月以降クリニック自動精算システム導入検討
2021年8月23日長野県感染症対策課よりコロナオンライン診療可能か電話照会あり8月24日厚労省、抗体カクテル療法条件付き外来治療許可、以上の内容に関して現状での課題を含め考察し報告する.
 
                                                                                                                     

  
10月31日(日)13:25~13:35 C会場 O-2-2-教育・活動報告
埼玉発!SPartの立ち上げと活動報告、今後の展望
*石川 輝1、田中 政任3、芦野 朱4、加藤 寿2
1. さいたま市民医療センター、2. 秩父市立病院、3. 関越会南町クリニック、4. 医療福祉生協連 家庭医療学開発センターCFMD
 
埼玉県では総合診療・家庭医療に携わる指導医や専攻医が少なく、指導体制や横のつながりがまだまだ充足していないのが現状である。そんな中、2019年度に「埼玉(S)のプライマリケア(P)をアート(art)する」というコンセプトのもと、埼玉県内の総合診療に関わる人たちが専攻医や多職種への教育を通じて学び合い、診療やケアの質向上や相互の交流ができる機会を提供することを目的としてSPart(すぱーと)が設立された。当初は県内の専攻医を対象とした勉強会を年2回開催していたが、2021年度より県内の専攻医・初期研修医を対象とした若手勉強会を開始した。若手勉強会は、月1回、オンラインで開催。埼玉県内の専攻医や指導医の他、プライマリケアに興味を持っている埼玉県に縁のある学生や初期研修医が対象で、毎回15名から20名程度の参加がある。内容としては事例検討とレクチャーの2本立てであり、ブログ等のSNSにて内容を発信している。これまで年2回の全体勉強会は専攻医向けの内容として家庭医学のレクチャーやポートフォリオ指導を行なっていたが、若手勉強会との差別化を図るため、今後は指導医・専門医向けの内容を企画し、専攻医を交えながら学びと交流の場として実施していく予定である。現状、埼玉県では総合診療プログラムの専攻医が1人や2人の施設が多く、今後のキャリア形成などに関して相談できる場が少ない。SPartのようなプラットフォームを設けることによって自然と県内の同志が集まり、学び合い、横の繋がりが形成されていくことは非常に有意義と感じる。今後の効果に期待したい。展望としては、若手勉強会の対象を専攻医にしぼり学習を深め、学生や初期研修医にもう一つの勉強会を立ち上げ、家庭医療・総合診療を知っていただく機会を増やしたい。また多職種とも一緒に学び交流できる場を作っていくことが今後の課題である。
  
                                                                                                                     
 
  
10月31日(日)13:35~13:45 C会場 O-2-3-教育・活動報告
東京都檜原村での市民向け新型コロナウィルスワクチン講習会
*宮澤 壮太1、南條 嘉宏1、小泉 豪1、田原 邦朗2
1. 立川相互病院、2. 国民健康保険檜原診療所
 
東京都檜原村での市民向け新型コロナウィルスワクチン講習会 【背景】東京都檜原村は東京都の多摩西部に位置する人口2千人程度で、都内で島嶼部を除いて唯一の村である。都心と陸続きであるが、東京都の都市圏と異なる文化圏を持っていると考えた。新型コロナウィルスワクチンに対しても、不確かな情報による不安や不満などが散見された。昨年に村内の複数の箇所にて、新型コロナウィルスの講習会を開き好評の声を得た。本年度ワクチン接種を進めるにあたり新型コロナウィルスワクチンに対する不安の声が挙がったことから、講習の要望があった。 【実施】檜原村の一地区にて講習会を行った。参加者は、近隣の特別養護老人ホーム職員6名と、地域の住民4名であった。冒頭に、新型コロナウィルスワクチンの一般的な説明を5分程度行い、その後、想定したQ&Aと事前に施設職員や職員家族、地域住民から得ていた質問に対する回答を15分程度行った。その後は、自由質問として、合計で90分程行った。 【結果】参加住民4名へのアンケートでは全員の不安度が、やや不安〜不安から不安なしに改善を認めた。また後日に、講習会の内容を参加者から聞いた不参加の住民からも、不安の払拭に繋がったという言葉を複数得ることが出来た。 【考察】檜原村は住民の半数以上の生活圏が村内で完結している村である。マスメディアやSNSなどの媒体からの情報は得られるが、それらに触れない住民も多い。またツイッターやインスタグラムなどのSNSよりも、「口コミ」や伝聞の情報が重視される環境があり、噂の一人歩きや伝聞の伝播の速さに驚かされることが多かった。新型コロナウィルスワクチン接種は、高齢化率が47%を超えている村では、感染防止促進や医療崩壊を防ぐための重要な事業である。速やかな遂行に向けて、適切な情報共有と実施が求められた。自治体の情報環境を考慮した、地域の実情にあった情報発信が重要と考えた。
 
                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)13:45~13:55 C会場 O-2-4-教育・活動報告
当院の栄養サポートチームの取り組み
*書上 奏1
1. 北毛病院
 
当院の栄養サポートチーム(以下、NST)は、医師、言語聴覚士、歯科衛生士、看護師が中心となって活動している。週に1回のNST回診に加え、食事をしている様子を観察する「ミールラウンド」や、嚥下機能評価のための「VF(嚥下造影検査)入院」も新たな試みとして開始した。また、院内で取り組むべき課題を話し合い、職員向けの学習会も開催している。
 
①NST回診
一般病棟、地域包括ケア病棟を中心に、病棟スタッフとともに介入が必要な患者について話し合い、栄養状態の評価、栄養投与方法の検討を行っている。
②ミールラウンド
実際の食事の様子を見ることで、食事姿勢や介助の方法について評価し、病棟スタッフにその場でアドバイスや提案をしている。
③情報共有ツール
NST回診やミールラウンドで気づいた食事姿勢や介助方法の注意点を「食事ラウンド記録ノート」に記録し、病棟に置いてスタッフにもコメントを自由に書いてもらう取り組みも始めた。情報共有をより円滑にするためのツールとなっている。
④VF入院
1泊2日の入院で嚥下機能評価を行っている。嚥下造影検査を行った後、本人や家族、施設スタッフとカンファレンスを開催し、食事姿勢や食形態についての注意点を共有したり、自宅や施設でできる訓練を紹介したりしている。
⑤院内学習会
2020年度は言語聴覚士、歯科衛生士が中心となり、義歯や口腔ケアの基礎知識について学習会を開催した。2021年度はポジショニングをテーマに、看護師や看護助手を対象とした学習会を開催している。

                                
 
【症例報告】
 
10月31日(日)14:05~14:15 C会場 O-1-1-症例報告
発熱を伴う頚部リンパ節腫脹の一例
*小林 優人1、山川 淳一1、鈴木 慶彦1、後藤 博久1、鈴木 貞博1
1. JA長野厚生連南長野医療センター篠ノ井総合病院
 
【背 景】発熱とリンパ節腫脹の鑑別診断は多彩である。今回我々は、発熱を伴う右頚部リンパ節腫脹を主訴に受診しリンパ節生検にて確定診断を得た症例を経験したので報告する。 【症 例】生来健康な35歳男性。入院1ヶ月前に発熱及び右頚部リンパ節腫脹を自覚し、近医にて抗菌薬投与を受けるも症状改善なく発熱が持続したため当院当科に紹介となった。発熱および右後頚部の無痛性リンパ節腫大を認めた。白血球は低下傾向であり壊死性リンパ節炎を考慮し、右頚部リンパ節生検を施行した。病理学的にはリンパ節構造が破壊され、リンパ節内部に壊死を伴い、壊死組織周囲への組織球の浸潤を認めたため確定診断となった。 【考 察】壊死性リンパ節炎は別名菊池藤本病、亜急性壊死性リンパ節炎とされ、1972年に初めて報告された原因不明の良性リンパ節炎である。好発年齢は20歳~35歳で臨床症状は1.急性~亜急性に出現する局所特に頚部リンパ節腫大、発熱、上気道症状、嚥下痛など。2.非典型的な症状として悪寒、盗汗、関節痛、体重減少。ときに肝脾腫。3.腫大リンパ節は後頚部が多く、痛みを伴う。検査データは軽度の血球減少・赤沈亢進・LDH上昇・ALT上昇・末梢血異型リンパ球出現を認める。確定診断にはリンパ節生検を用いる。鑑別診断には感染性リンパ節炎・結合織異常・リンパ増殖性疾患などがあげられる。全身性エリテマトーデス、混合性結合性組織病、シェーグレン症候群などとの合併あり注意が必要である。治療は自然軽快、ステロイド使用などを用いる。予後はおおむね良好だが死亡例もあり、再発もありうる。発熱の鑑別診断においてリンパ節腫脹は診断に有益な臨床所見である。非感染性炎症性疾患、感染症、悪性腫瘍の疾患群別に鑑別診断を進めていく必要がある。確定診断のためにリンパ節生検を常に意識し、壊死性リンパ節炎の可能性も考慮することが重要である。

                                                                                                                     

 
10月31日(日)14:15~14:25 C会場 O-1-2-症例報告
亜急性甲状腺炎を契機に診断となったACTH単独欠損症の1例
*土屋 杏平1、塩田 正喜1、矢作 栄一郎1、山下 洋充1、直宮 修平1、坪内 信彦1
1. 河北ファミリークリニック南阿佐谷
 
【背景】食思不振、体重減少などはコモンな症候ではあるが、プライマリケアで早期診断がつかず、不幸な経過を辿ってしまった症例を経験したので、報告する。
【症例】40代女性。1年前から食思不振、10kgの体重減少を認めた。近医クリニックを受診し、うつ病の悪化の影響ではないかと休職を勧められ、改善せず、退職となった。その後も対症療法を試すも症状は改善せず経過した。1ヶ月前より微熱、下痢を来たし、体動困難となり、精査目的に当院に入院となった。既往にうつ病があるが、定期通院はしていない。常用薬はなし。入院時採血で低Na血症、低血糖、TSH低値、FT3・FT4高値を認めた。甲状腺機能亢進症の鑑別として、TRAbを提出したが、陰性であり、甲状腺エコーでは左葉に結節と同部位に圧痛を認め、亜急性甲状腺炎の可能性が考えられた。追加提出したACTH、コルチゾールは共に低値であり、続発性副腎機能低下症の可能性が考えられ、ヒドロコルチゾン20mg/dayで治療開始した。続発性副腎機能低下症の鑑別のため、3者負荷試験(GHRP、CRH、LHRH)を行い、ACTH単独欠損症の診断となった。甲状腺機能亢進合併によるストレス負荷の状況と判断し、ヒドロコルチゾンを30mg/dayに増量した。その後、症状寛解し、入院10日目に退院となった。退院後は外来にてステロイド内服を継続し、以降症状増悪なく経過している。
【考察】今回の症例では1年以上前にACTH単独欠損症、続発性副腎機能低下症を発症、受診1ヶ月前に亜急性甲状腺炎を発症し、副腎機能低下症を増悪させた可能性が考えられた。副腎機能低下症に甲状腺機能亢進症が合併することは稀ではあるが、合併により、副腎機能低下を悪化させることは知られている。プライマリケア医として器質的疾患を除外することを忘れてはならないことを再認識させられる症例を経験したため、報告した。
 
                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)14:25~14:35 C会場 O-1-3-症例報告
ケアの移行に際し複雑性評価を行い生活の安定化に繋げた症例
*藤田 耕己1
1. 医療福祉生協連家庭医療学開発センター(CFMD)/北足立生協診療所
 
【背景】転居に伴う生活環境の変化で慢性疾患の増悪、夫婦関係の悪化、介護負担の増大と複数の問題が生じた。複雑性評価することで介入点を明らかにし、多職種、家族との連携を行うことで安定化に繋げることができたため、その過程を報告する。 【症例】84歳男性。妻と2人暮らし。経済的負担を理由に都営住宅への入居希望があり、X年4月に転居。X年6月、妻が前医からの紹介状を持参し当診療所を受診。内服薬がなくなり、頚椎症の疼痛は増悪しているが通院を拒否しており、訪問診療の依頼。臨時往診では室内では伝い歩き可能で、ベッド周辺で生活、以前利用していた通所介護サービスは利用せず、抑うつ傾向。ADLからは外来受診可能と判断したが、その後外来受診を拒否。後日妻から暴力的な発言があると相談あり。妻は疲弊している様子であった。複数の問題存在し、全体像の把握が困難であったため、PatientCenteredAssessmentMethodを用いて複雑性の分析を行い、社会的環境に介入点があると考え社会的処方として通所介護サービスを導入することを目標とした。社会的接点ができ、当院への通院も開始し疼痛が改善。悲観的な発言は減り、夫婦2人暮らしを継続。 【考察】本症例は単純な問題の組み合わせに加えて、経済的困窮、転居による生活環境の変化、社会的孤立、抑うつ状態といった個別性の高い問題があり複雑な問題に移行していく可能性が示唆された。複雑性の評価を行い、介入点を明らかにすることで、問題の安定化に寄与するだけではなく、医療介護スタッフと当事者が協働して行動プランを作成することに有用であった。今後の課題としては、社会的処方を行う上で重要な地域に存在するインフォーマルサービスについて理解を深め、顔の見える形での地域ネットワークを築くことで複雑化する地域課題に際して個別性のある解決策を見いだせるようにしたい。
 
                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)14:35~14:45 C会場 O-1-4-症例報告
BZD薬を減薬できるエコーガイド下ハイドロリリース
*丸山 創1
1. 諏訪中央病院
 
【背景】不眠を訴える高齢者は多い。身体疾患や精神疾患と不眠の関連が報告されており、何らかの疾患を持つことが多い高齢者は不眠のハイリスクである。わが国ではこれまで不眠に対してベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)が多く処方されてきたが、離脱症状,依存症状,認知機能の低下を生じることが判明してきたため使用する機会は減少している。高齢者においてはBZDの筋弛緩作用による易転倒性が問題になるため、安全性の面でも避けるべきケースが多い。しかしながら、依存性の高さ故に長期投与されているBZDの減量・中止は困難であることが多い。不眠患者の背景として慢性疼痛がしばしば問題になる。近年、エコーガイド下fasciaハイドロリリース(US-FHR)による運動器疼痛の診療が広がっており、慢性疼痛の治療選択肢として期待されている。
【症例】81歳,男性。両変形性膝関節症と診断され、適応はあったが手術は希望せず7年間NSAIDs内服を継続していた。膝痛の出現と共に不眠になり、BZDの内服を継続していた。BZD長期投与のデメリットについて情報提供し、中止を検討していたが、内服を続けていた。US-FHRによる治療で膝痛は改善し、NSAIDs内服の中止に至り、疼痛の軽減に応じて不眠症状も改善していった。治療開始3か月後にはBZDを中止することに成功した。
【考察】本症例では、US-FHRによる慢性疼痛の治療が奏功したことで不眠が改善し、BZDを中止することに成功した。疼痛が背景にある不眠(併存不眠症)の治療としてUS-FHRは有効であり、疼痛の改善がBZDの減量・中止に寄与することが示唆された。慢性疼痛の治療が奏功すれば、長期投与で問題となる催眠鎮静薬、NSAIDs、PPIの使用を減らすことが可能となるため、ポリファーマシーの観点からも有用である。
 
                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)14:45~14:55 C会場 O-1-5-症例報告
癌終末期若年女性患者への訪問診療とプロフェッショナリズム
*伊藤 泰斗1、青松 棟吉1、小松 裕和1、鄭 真徳1
1. 佐久総合病院
 
【背景】婦人科癌終末期若年女性患者の訪問診療を通じ、在宅医のプロフェッショナリズムを省察する。 【症例】30代女性。母と二人暮らし。X年2月、右卵巣巨大腫瘍に対して切除術を施行された。術後化学療法が開始となったが、肝転移、肺転移を発症し、さらに癒着性イレウスに対して人工肛門造設術が行われた。また中心静脈栄養も開始された。予後は週から月単位と伝えられ、本人の希望もあり10月に自宅退院となった。退院翌日から訪問診療が開始された。本人は症状に関する事以外は多くを語らず、病状や今後の療養については話し合うことを拒んだ。本人のニーズの把握に課題を感じ、指導医と相談し連日訪問する訪問看護師にも本人の意向の聴取を依頼した。また、本人が遮ってしまうため介護者である母の意向も確認できず、母のみ来院頂き面談をした。看護師である母は栄養療法をいつまで続けるべきか、また自分が仕事に復帰した後の介護について不安を抱えていた。一方、本人の希望通り家に帰って静かに過ごせている事は満足だ、と肯定的な意見も聞かれた。その後も本人からは治療や療養に関する希望はなかった。その後、イレウスによる頻回の嘔吐があり、胃管挿入を提案した。最初は拒否があったが、相談の結果、本人からも胃管挿入の希望が聞かれた。その場で胃管挿入を行い、希望通り症状を緩和することが出来た。病状は進行し、訪問診療開始約1ヶ月後にお看取りとなった。 【考察】病状が進行する中で、説明を繰り返しながら胃管挿入など自宅でできる治療を行い,患者と家族の家で静かに過ごしたいというニーズに応えた。病状を聞きたくないという意思も尊重した。それぞれSternの定義では説明責任と卓越性、ヒューマニズムに基づいた診療でと考えられた。また、訪問看護と連携しチームワークも意識することができた。
 
                                                                                                                     

 
10月31日(日)14:55~15:05 C会場 O-1-6-症例報告
アルツハイマー型認知症に非痙攣性てんかん重積が併発した2例
*塩ノ崎 萌1、伊藤 泰斗1、三宅 晃史1、竹村 正和1、青松 棟吉1、鄭 真徳1
1. 佐久総合病院総合診療科
 
【背景】アルツハイマー型認知症(AD)の患者は一般高齢者よりもてんかん発症率が高いことが知られている。非痙攣性てんかん重積発作(NCSE)は機能予後が悪いことが知られているが、予後不良因子の研究はなされていない。症例1:88歳女性。独居生活は可能だが近似記憶障害がありADFAST分類stage4が示唆された。起床時から会話が成り立たず当院受診した。入院後も意識障害が進行した。第1病日の脳波検査で片側性の鋭徐波複合が見られNCSEと診断、抗てんかん薬が調整された。第6病日での脳波ではNCSEを脱し、会話が可能になったが、認知機能低下が残存した。地域包括ケア病棟での長期リハビリテーションを経て、第146日病日に娘宅へ退院した。通所リハビリを経て第240病日に自宅での独居生活が可能になった。症例2:87歳女性。5年前から近似記憶障害があり、着替えや排泄行為などの日常生活動作が困難で、ADFAST分類stage6cが示唆された。発熱と体動困難があり前医へ救急搬送された。尿路感染症が疑われ抗菌薬が開始された。第4病日にJCS20の意識障害が出現し、意識障害と発熱が遷延したため第51病日に当院へ転院した。点滴刺入部感染症と胆嚢炎の診断で抗菌薬を継続されたが意識障害が遷延し、MRI検査T2強調画像で両側視床の高信号を指摘された。第70病日の脳波検査で全般性の周期性発射が見られNCSEと診断された。抗てんかん薬の調整を行い第77病日の脳波でα波がみられNCSEは脱したものの、意識は改善しなかった。第141病日に前医へ転院、第203病日に死去された。 【考察】ADにNCSEが合併した場合、ADの進行度が高いほど、NCSE頓挫後の神経学的予後が悪くなることが示唆された。ADの進行度を認識し、予後を意識しながら治療を行うことが患者・家族のQOLに影響を及ぼすため重要である。

                                
 
【連携】
 
10月31日(日)15:15~15:25 C会場 O-3-1-連携
COVID19流行後の都内二次救急病院における救急受診の変化
*福田 詩織1、西村 正大2、坂上 達也1、望月 崇紘3
1. 東京北医療センター、2. (公社)地域医療振興協会 地域医療研究所、3. (公社)地域医療振興協会 君津市小櫃診療所
 
【背景】COVID-19のパンデミックは患者の受療行動や疾病構造に影響を与えたと言われている。
【目的】都内二次救急病院である当院におけるCOVID-19流行初期の救急外来受診パターンを前年度と比較しその変化を記述する。
【研究デザイン】単施設、後ろ向き横断研究
【対象、セッティング】2019年4月17~30日と2020年4月17~30日に当院救急外来を受診した、小児科と産婦人科を除く全患者
【介入または主たる要因】全患者のカルテレビューを行った。最終診断名のコーディングはInternationalClassificationofPrimaryCare-2(ICPC-2)分類を用いた。
【主たるアウトカム指標】患者数、受診経路、転機、最終診断名
【結果】患者数は2019年(480人)と比較して、2020年(341人)は29%減少した。受診経路は2019年(救急車187人:39%)に対し、2020年(救急車225人:66%)は救急車の割合が有意に増加した。転帰は2019年(入院100人:21%)に対し、2020年(入院109人:32%)は入院の割合が増加した。最終診断名は、靭帯/筋損傷(ICPC-2:L77)や擦過傷/打撲(S16)などの外傷、インフルエンザ(R80)、胃腸炎(D73)で有意に減少し、糖尿病性ケトアシドーシスなどの糖尿病緊急症(T99)、腎盂腎炎(U70)で有意に増加していた。COVID-19(R84)を除く肺炎(R81)や上気道炎(R74)など気道感染症の割合に有意差は認めなかった。
【結論】COVID-19パンデミックに伴い救急外来受診数は大幅に減少したが、軽症患者が減少し本来救急受診すべき重症患者は減少しなかった。疾患別では外傷患者の減少や糖尿病緊急症の増加などに有意差が認められ、社会生活の変化が救急外来の受診パターンに影響を与えた可能性が示唆された。

                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)15:25~15:35 C会場 O-3-2-連携
かかりつけ医への逆紹介によるRA病診連携の取り組み
*山崎 秀1、高梨 哲生1
1. 社会医療法人抱生会丸の内病院
 
【目的】地域におけるリウマチ医療向上のためには限られた専門医が適切なリウマチ診療を行えるかが課題である。当科では安定し近医で診療可能と考えられる患者を積極的に逆紹介している。今回、リウマチ診療経験のないかかりつけ医に逆紹介した患者が適切な診療が継続されているか検討した。 【対象および方法】2015年2月〜2020年4月までに逆紹介した患者は210例であった。逆紹介基準は寛解もしくは低疾患活動性で安定しており、高度の合併症を有さない例とした。紹介先、治療内容、紹介後の治療経過について調査し、逆紹介後の問題点について分析した。 【結果】紹介先はリウマチ専門医42例、リウマチ診療経験のある非専門医106例、リウマチ診療経験のないかかりつけ医62例であった。治療内容はメトトレキサート126例、生物学的製剤17例、その他67例であった。当院に定期通院している循環型患者は176例で、そのうち安定している患者は100例、SDAIは紹介時平均4.05、調査時平均4.56であった。バリアンスが発生し当院での診療にもどした患者34例であった。バリアンスの内訳は疾患活動性の悪化27例、有害事象発生4例、紹介先の診療の不備等3例であった。かかりつけ医への逆紹介患者の治療内容は、MTX24例、生物学的製剤1例、その他33例で、SDAIは紹介時平均6.05、調査時平均4.67、バリアンス発生例は5例であった。 【結論】低疾患活動性以下の安定している患者は、地域のかかりつけ医とも連携して適切なリウマチ診療が行えることが示された。疾患活動性の悪化や有害事象発生時には常に受け入れる体制を整えておく必要がある。
 
                                                                                                                     
 

10月31日(日)15:35~15:45 C会場 O-3-3-連携
医療資源が少ない中地域連携により健康問題の解決を図った一例
*高梨 俊洋1、小林 史典1、井上 大輔1
1. 奥多摩町国民健康保険奥多摩病院
 
【背景】当院は山間へき地に位置する小病院である。また当医療圏は東京都下にありながら、医療体制が脆弱な地域である。今回医療資源が少ない中でも地域連携により健康問題の解決を図り家族満足度が高い結果となった症例を経験したため報告する。 【症例】70歳男性。既往にくも膜下出血後遺症による高次脳機能障害と水頭症があり特別養護老人ホームに入所中。数日前から傾眠になることが多くなり当院を受診した。低血糖と水頭症の軽度増悪を認め、初めは低血糖による意識障害を疑ったが、ブドウ糖投与と意識障害が連動しないことから水頭症による意識障害を考え、O総合病院脳外科にシャント圧の調整を依頼した。シャント圧調整後、意識状態は改善したが低血糖は改善しなかった。低血糖に対して被疑薬の中止やホルモン検査などを施行したが原因ははっきりしなかった。しかし腹部CTで胃と接する腫瘍性病変を認めIGF-Ⅱ産生腫瘍の可能性が残った。そこでO総合病院内分泌科に事情を説明し、家族と相談の上、同院で精査加療する方針となった。腫瘍に対して内視鏡的に生検を行ったがIGF-Ⅱ産生腫瘍の診断には至らなかった。内分泌的な精査も再度施行されたが結局低血糖の原因究明には至らなかった。それでも施設での生活を継続できるようにステロイド投与や補食など様々な血糖維持方法を入院中に検討してもらい、施設退院後も安定して過ごしている。家族も地域全体で可能な限り諦めずに診療したことに対して感謝していた。 【考察】本症例を通して、日頃から地域の病院間で良い関係性を作っておくことが、診療の質の向上に繋がることを実感した。最終的に診断は付かなかったが、当医療圏でできる最良の医療を提供したことで家族の高い満足へ繋がったと考える。紹介する側はかかりつけとしての責任を持ち、中核病院からの「治療のバトン」をしっかりと受け取る意識も関係構築に重要であると感じた。
 
                                                                                                                     
 
 
10月31日(日)15:45~15:55 C会場 O-3-4-連携
終末期の多職種連携が患者・家族の意向実現に有用であった一例
*青栁 佳奈子1、鄭 真徳1、青松 棟吉1
1. 佐久総合病院
 
【背景】終末期ケアにおける多職種間連携では多職種が横並びになり,それぞれの職種が場面ごとに多様な関わりができることで価値観の多元性を保ち,患者または家族の意向の表出を支え,意向に沿ったケアを可能にする.多職種での支援が患者と家族の意向の実現に有用であった症例を経験したため報告する.発表に際しご遺族の同意を得た. 【症例】77歳男性.右肺扁平上皮癌局所再発,肺炎のためCOVID-19の流行地域であるA県の病院で加療中であった.入院後も誤嚥性肺炎を繰り返しており,絶食になっていた.フレンチ料理店を営む長女の料理が食べたいという発言があり,患者の思いを叶えるため長女の自宅近くである当院へ転院した.転院時の予後予測スコアはPaPスコア12点,PPI10.5点で週単位の予後が予測された.早期に目標に向けた計画を立てることが必要と考え,多職種に伝えた上で,全身状態と嚥下機能の評価,患者と家族の意向確認を行う期間を設けた.長女,看護師,言語聴覚士,栄養士,筆者が参加する多職種会議を開催した.病状,患者のこれまでの生き方,患者・家族の思いなど情報共有を行い,食事会を開催することが決まった.会議後,長女を中心として,栄養士,言語聴覚士がサポートをして具体的な提供方法やメニューについて話し合った.食事会では,長女の介助で長女の作った料理を食べ,患者も家族も満足している様子であった.食事会後,A県に帰りたいという希望があることが看護師を通して分かり,転院先病院を調整したが,順番待ちで転院することはできなかった.次第に患者の意識状態は悪くなり,家族が見守る中で亡くなった. 【考察】それぞれの職種の立場から患者・家族と関わり,対等な関係性で家族も含めて情報共有することで,意向の実現につなげることができた.終末期ケアでは多職種に加え,家族も対等な関係性を築くことが大切である.

                                                                                                                     

 
10月31日(日)15:55~16:05 C会場 O-3-5-連携
複数のへき地医療機関をWeb会議で結び終末期医療を行った一例
*小林 史典1、井上 大輔1
1. 奥多摩病院
 
【背景】新型コロナウイルス感染症の流行により、通常の医療体制の提供が困難となっている。今回、複数のへき地医療機関をWeb会議で結び、終末期医療を完結させた一例を経験したため報告する 【症例】症例は50代女性で、S状結腸癌の方。他県山間へき地の在住村から40km離れた高次医療機関にて経過をみられていたが、化学療法無効判定となり、BSCの方針となった。住み慣れた地域で終末期を過ごされることを希望され、CVポートからの点滴静注を行いながら在宅で経過を見ることとなった。在宅での療養につき近医へ移行することになったが、在住村では訪問看護の導入はできるが医療的なフォローはできないという結論となり、20km離れた当院が処方や経過観察を行うこととなった。スムーズなケアの移行のために他職種カンファレンスを行う方針としたが、新型コロナウイルス感染症の流行下であり、対面のカンファレンスが困難であったため、web会議システムを用いた遠隔会議にて行った。結果的に当院を含めた3か所のへき地医療機関と高次医療機関の計4か所を結ぶWebカンファレンスとなった。その後、連携を取りながら終末期医療を完結させることができた。 【考察】医療資源が不足するへき地医療機関ではあるが、方法を工夫することで患者、家族満足度の高い終末期医療を提供できることが分かった。
 
                                                                                                                     

 
演者の都合により中止となりました
10月31日(日)16:05~16:15 C会場 O-3-6-連携
患者主体の健康情報管理をアナログ・デジタル併用で推進する試み

*大関 明樹1、川田 亮1、板垣 雅美1、安江 栄里子1、下司 美玲1、上田 深理1、高橋 克栄1、齋藤 悠1、角道 祐一1、吉嶺 文俊1
1. 新潟県立十日町病院
 
当院は豪雪中山間地に位置する275床の地域中核病院であり、人口減少、高齢化、少子化および過疎化などの課題に対面しながら、急性期医療をこなししなやかに地域包括ケアを支えていく医療を追求している。2020年9月の改築で当院の療養環境は大幅に改善し、地域包括ケアや緩和医療の素地は完成した。また、患者サポートセンターや生活習慣病センターの設置を通して「面倒見の良い」病院としての役割強化をめざしている。しかしコロナ禍により当地域においても感染対応による診療制限や病床暫定的活用およびワクチン接種などへの動員などこれまでの通常医療への影響は甚大であり、終息の目処が立たない状況である。このような状況において改めて患者自身が主体となって自分の健康や疾病の情報を管理する必要性が再認識されることになった。当地域では以前より「うおぬま米ねっと」http://uonuma-mynet.org/という情報通信技術(ICT)を駆使した医療介護情報ネットワークシステムが構築されているが、コロナ禍を契機にして院内職員が一丸となって推進活動を行い、以前は1割にも達しなかった入院患者の加入率は過半数を超えるようになった。またICT上の情報共有が可能となり、訪問看護ステーションや調剤薬局との連携が強化された。一方「健康ファイル(健康や疾病に関するあらゆる情報を自分自身で管理するための支援ツールであり、市販の縦型A4サイズのフラットファイルをベースに、診察券、お薬手帳、画像情報の入ったDVDなどを入れるためのクリアケースが付いている)」を用いた患者自身の健康関連情報管理の啓発活動も同時に行っている。うおぬま米ネットと健康ファイル、すなわちデジタルとアナログを併用し、その両面から介入する試みは、コロナ禍を乗り越えて新しい医療体制を構築していくための重要な視点になり得るため、これらの活動の中間報告を行う。