日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36_29PM2] 北極域の科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 311 (3F)

コンビーナ:*齊藤 誠一(北海道大学大学院水産科学研究院)、猪上 淳(国立極地研究所)、原田 尚美((独)海洋研究開発機構)、鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、座長:鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)

16:45 〜 17:00

[ACG36-10] 環北極域における大気水循環の経年変動

石毛 貴也1、*檜山 哲哉2藤波 初木3 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.総合地球環境学研究所、3.名古屋大学地球水循環研究センター)

キーワード:夏季降水量, 夏季正味降水量, レナ川流域, 北極低気圧

東シベリアのレナ川中流域では2005年から2008年にかけての降水量が多かったため、この間の夏季の融解深が深くなるとともに、融解層(活動層)中の土壌水分量がかなり高い状態で継続した。そのためカラマツに代表されるタイガ林の一部が枯死し、湖沼水が増加するなど、この地域の植生や景観に影響が現れた。このような湿潤状態が過去にも存在したのかどうかを明らかにするために、本研究では、降水量データ(PREC/L)と大気再解析データ(JRA-25およびJRA-55)を用いて、レナ川流域の大気水循環と大気水収支を調べた。従来の研究から、レナ川流域とオビ川流域間には夏季の総観場に負相関があると指摘されていた一方、北米のマッケンジー川流域を含む環北極域の大気水循環の様相は必ずしも明らかになっていなかった。そこで本研究では、北ユーラシア3大河川(レナ川、エニセイ川、オビ川)流域とともに、マッケンジー川流域にも着目し、環北極域の大気水循環と正味降水量の経年変動に関して、レナ川流域を中心とした流域間比較の観点で解析した。解析の結果、以下の3点が明らかになった。1) 1958年から2012年の期間中のレナ川流域における夏季正味降水量上位5年間には、バレンツ海からレナ川流域にかけて有意な低気圧性偏差がみられた。これにより、レナ川流域に西側から流入する水蒸気フラックスが増大し、夏季正味降水量の正偏差が形成された。2) 2005年から2008年の夏季に着目した場合、バレンツ海からレナ川流域にかけて低気圧性循環の強化がみられた。その一方、モンゴル周辺では高気圧性循環の強化が確認された。これらにより、レナ川流域の夏季降水量が増加した。3) 1995年以降、レナ川流域とエニセイ川流域間で、夏季降水量と夏季正味降水量に非常に有意な正の相関がみられた。一方、レナ川流域とオビ川流域間のそれらの負相関は、1993年頃から有意ではなくなっていた。また、レナ川流域とマッケンジー川流域間のそれらの相関には特に有意な相関はみられなかった。