日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG36_29PM2] 北極域の科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 311 (3F)

コンビーナ:*齊藤 誠一(北海道大学大学院水産科学研究院)、猪上 淳(国立極地研究所)、原田 尚美((独)海洋研究開発機構)、鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、座長:鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球環境変動領域)

17:45 〜 18:00

[ACG36-14] アラスカにおける大規模森林火災: 2004年と2005年の気象条件

*早坂 洋史1 (1.北海道大学工学研究院)

キーワード:森林火災, ホットスポット, 気候変動, 雷, ジェット気流, 海氷

アラスカでは、2004年と2005年に大規模な森林火災が主に内陸部の森林地帯で広域的に発生した。焼損面積500km2以上の大規模火災が2004年には17箇所、2005年には12箇所で発生した。2004年と2005年の大規模火災の発生により、年間焼損面積は、1956年から2013年までの過去58年間で、2004年の約26,000km2 が過去最大、2004年の約18,800km2 が第3位であった。 この両年の大規模火災を評価するために、過去58年間の火災データの統計解析を行った。この結果、年平均の焼損面積は3,480km2、標準偏差(σ)の係数は2004年が+4.25、2005年が+2.88であることがわかった。これらの大きな標準偏差係数の背景には、年間焼損面積6,000km2 を越す大火災年が過去58年間で11年しかなく、他の47年は年間焼損面積が5,000km2以下という傾向がある。この傾向に加え、6,000km2 を越す大火災年の発生は、1950年代から1980年代頃までは、十年に一回程度の頻度であったものが、1990年代頃より増える傾向が見られている。つまり、1957年(第2位)、1969年(第6位)、1977年(第7位)、1988年(第8位)と、十年に一回程度の頻度であった。しかし、1990年代になると、1990年(第4位)、1997年(第9位)、1991年(第11位)の3年に、さらに2000年代になると、2004年(第1位)、2005年(第3位)、2009年(第5位)、2002年(第10位)の4年と、急激に増えつつあることがわかる。この様な最近の大規模森林火災の頻発傾向から、近年の急激な気候変動下での北極海氷の急激な減少現象との関連性が示唆された。 そこで、2004年と2005年の大規模火災発生のプロセスをホットスポットと気象データを使って詳細な分析を行った。この結果、2004年の解析から、寒気の流入による雷の発生、その後の気温が高くなった時期での火災拡大傾向が確認できた。2004年の火災拡大期は7月上中旬と8月下旬の計三回あり、各期の日最大ホットスポット数は、順に約3.9万、3.2万、2.8万個/日であった。2005年の火災拡大期は、2004年と比べ降雨の多い傾向があったにも拘わらず、7月上下旬と8月中旬の計三回あり、各期の日最大ホットスポット数は、順に約1万、1.6万、4.6万個/日であった。2005年8月中旬の日最大ホットスポット数4.6万個/日は、南南西風が東北東に変わり、風速6〜8m/s、相対湿度40%以下の条件で生じていた。 本論文での総合的な解析結果から、2004年の過去最大の焼損面積は、カナダ方面からの気圧の尾根が6月から8月までの約3ヶ月間継続した日照り下で長期間燃え続けた結果であった。2005年8月中旬に観測された激しい火災は、高気圧がアラスカ湾からボーフォート海への移動に伴って発生した事を明らかにした。