日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02_29PO1] 地球惑星科学のアウトリーチ

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)

18:15 〜 19:30

[G02-P04] 大学院生講師の出前授業「サイエンス・セミナー」が生み出した多世代キャリア教育

*草野 有紀1西山 真樹2中野 亨香2土井 康平3五十嵐 由利子4 (1.金沢大学、2.新潟大学、3.東北学院大学、4.新潟青陵大学)

キーワード:出前授業, 大学院生, 次世代教育, 中学生への地球科学教育

新潟大学では、2009年から女性研究者育成と中高校生への科学や学術研究の普及を目的として、出前授業「サイエンス・セミナー」を実施している。その受講生は新潟県内外にわたり、述べ人数は年間約3000名を超える(中野ほか、2011;西山ほか、2012年日本動物学会)。地球科学分野のサイエンス・セミナーは2010年度から2011年度にかけて、のべ680名の中学生に対して行われた。本発表では、地球科学分野における中学生への効果と、セミナー講師となった大学院生の研究や進路に関する意識変化について述べる。
セミナー時間は30~60分で、講師の進路選択経路や大学生活の紹介と自身の研究について紹介する形式をとった。講義中には岩石薄片と偏光板を回覧したり、野外調査に用いる道具を見せたりすることで、受講者が実物により多く触れられるよう工夫した。受講者アンケートの統計学的分析結果からはこれまで、受講生および講師の性別によって理系分野への興味関心に違いがあることや、受講後の中学生に進路選択を見つめなおす効果を与えることが明らかになってきている(土井ほか、2013)。また、大学進学を考えている高校生にとっては、講師が具体的な将来像を描くためのロールモデルとなっていることがうかがえる(Nakano et al., 2013)。そこで、地球科学の講義後に実施したアンケートを解析したところ、中学2年生までは男女ともに地学に興味があることが明らかとなった。この結果は、自然災害に対する知識を備えた次世代を育成するためには、中学生への教育が今後さらに必要になることを示している。
より効果的な授業を実施するためには、講師が自己の研究分野と社会とのつながりを深く理解し、一般に説明できるようになることが不可欠である。そのため講師には、講義を重ねる度に内容を洗いなおし、より分かりやすく図や言葉を選ぶ作業が求められる。出前授業の講師となることは、大学院生に必然的に自分の研究と「この瞬間起こっている現実」との関わりを意識させ、同年代の大学院生の間でさえ、研究室の外に出たらプロの研究者の一人として扱われるという緊張感と自覚をもたらす。それにより視野が広がり、自己の将来を見つめなおすきっかけともなっている。サイエンス・セミナーは、生徒にとっては大学院生が、大学院生にとってはセミナー指導教員がロールモデルの一つとなっており、この活動を通じて「中高校生―大学院生―大学教員」という多世代の次世代教育が成立しているといえるだろう。