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[HDS29-03] 2011年台風12号豪雨による奈良県赤谷崩壊の地質素因
2011年8月末から9月にかけて日本に接近,上陸した台風12号は紀伊半島に記録的な豪雨をもたらし,奈良・和歌山・三重の各地で多数のランドスライドが発生した.その中でも最大規模のひとつである奈良県五條市の赤谷崩壊の地質素因について述べる.赤谷崩壊は幅500m,長さ1100m,推定深さ80-100m,体積約1千万m3規模の岩盤すべりである.崩壊地は四万十帯美山コンプレックスの泥岩,砂岩からなる.崩壊にかかわる弱面としては層理面のほか,異なる時期に形成された断層面や節理面がある。層理面の姿勢は北に傾斜することが多いが一般に高角度で,ばらつきも大きい.一方,層理面に斜交する順序外スラストや,ユニット境界のスラストは層理面に比べて低角度で,斜面の傾斜に近いかより緩い面構造を示す.崩壊のすべり面は単純な曲面となっておらず複雑な起伏を持つ.赤谷崩壊のすべり面は美山コンプレックス中のユニット境界をなすスラストのほか,全体的に斜面にほぼ平行となるさまざまな弱面の結合によって形成されたものと考えられ,層理面が流れ目となる単純なすべりが起きたわけではない.これは四万十帯の他の多くの崩壊でも同様である.