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[HRE31-P01] X線CT画像のビームハードニング偽像を抑制できるタングステン系造影剤の提案
キーワード:ビームハードニング, X線CT, 造影剤, ダルシー流, 相対浸透率, 多相流
X線computed tomography (CT) は、試料を非破壊でイメージングできるので(中島・中野, 2013)、室内実験のモニタリングツールとして地球科学で汎用されている。たとえばCO2地中貯留や石油EORに関する室内実験では、コア試料の相対浸透率曲線の横軸(流体置換率)や残留油(あるいは残留ガス)飽和度の高精度計測を目的として、多孔質なコア試料内部の複雑なダルシー流れをX線CTを用いて可視化している。その際、高濃度のヨウ素造影剤を流体にドープするのが一般的であるが、ヨウ素を使うとビームハードニング偽像(多色性X線が原因で、均一試料にもかかわらず試料表面から内部に行くほど画像が暗くなる現象)が強くなり、定量的なCT画像解析が困難になる危険がある。さまざまな造影剤を想定したCT画像計算機シミュレーション研究(Nakashima and Nakano, 2012; Nakashima and Nakano, 2014)は、ヨウ素よりK吸収端のエネルギーが大きい造影剤が優秀(ビームハードニングを抑制するという意味で)であることを示唆している。そこで、今研究では、タングステンを含む造影剤(ポリタングステン酸ナトリウム、Na6H2W12O40)を実験的に試してみた(Nakashima, 2013)。内径56mmのプラスチック円筒容器に粒径約200ミクロンの豊浦標準砂を空隙率39vol.%で充填し、その空隙をヨウ素系(KI 9.16 wt%)とタングステン系(Na6H2W12O40 8.80 wt.%)の2種類の造影剤を含む水溶液で満たし、医療用CTで二次元スライスを撮影した(加速電圧130kV, 5mm slice thickness, ビームハードニング補正処理なし)。結果は、図1のとおり、タングステン系造影剤の方がビームハードニングを抑制していることが確認できた。ポリタングステン酸ナトリウムは、ヨウ素同様に重元素が陰イオンである(粘土鉱物表面に吸着されない)うえに、重元素化合物には珍しく比較的化学的に安定で人体に無害であり、重液としてすでに商品化されているので、ヨウ素よりビームハードンニング偽像を抑制できる造影剤として今後期待できる。
謝辞:
医療用CT実験は、高知大学海洋コア総合研究センター共同利用研究 (13B034) のもとで海洋研究開発機構の協力により実施された。
参考文献:
Nakashima, Y. and Nakano, T. (2012) Analytical Sciences, 28, 1133-1138. http://dx.doi.org/10.2116/analsci.28.1133
Nakashima, Y. (2013) Journal of Hydrology and Hydromechanics, 61, 347-351. http://dx.doi.org/10.2478/johh-2013-0043
中島善人・中野 司 (2013) GSJ地質ニュース, vol.2, No.3, 86-90. https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol2.no3_86-90.pdf
Nakashima, Y. and Nakano, T. (2014) Journal of X-Ray Science and Technology, 22, 91-103. http://dx.doi.org/10.3233/XST-130411
謝辞:
医療用CT実験は、高知大学海洋コア総合研究センター共同利用研究 (13B034) のもとで海洋研究開発機構の協力により実施された。
参考文献:
Nakashima, Y. and Nakano, T. (2012) Analytical Sciences, 28, 1133-1138. http://dx.doi.org/10.2116/analsci.28.1133
Nakashima, Y. (2013) Journal of Hydrology and Hydromechanics, 61, 347-351. http://dx.doi.org/10.2478/johh-2013-0043
中島善人・中野 司 (2013) GSJ地質ニュース, vol.2, No.3, 86-90. https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol2.no3_86-90.pdf
Nakashima, Y. and Nakano, T. (2014) Journal of X-Ray Science and Technology, 22, 91-103. http://dx.doi.org/10.3233/XST-130411