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★ [O01-05] 世界の自然災害
キーワード:自然災害, 地球温暖化, 悪循環
要約 1980年代からの10年間ごとの世界の自然災害の発生特性から、過去30年間の災害による犠牲者数の絶対値は増えているが、人口増加を考慮すれば、世界の平均死亡リスクは1.7x10-5で、ほとんど変わらない。一方、発生件数は時代とともに増加しており、都市域での災害の発生が増えていることが原因である。1.災害の二大特徴~歴史性と地域性~ 歴史性とは、繰り返すという意味である。たとえば、トルコのイスタンプールでは、438年からこれまで被害地震が27回発生しており、平均58年に一度発生していることになる。フィリッピンのマヨン火山は、17世紀から21世紀初頭までの400年間に50回、つまり平均8年に一度噴火している。一方、地域性については、1978年から2008年の30年間に、アジアが占める自然災害(1件は10人以上死亡、もしくは100人以上の被災者が発生した場合)の割合は、発生件数:36%、被害額:47%、死者数:62%、被災者数:89%となっている。とくにアジアでは人口増加が激しく、死者数と被災者数に占める割合は経年的に増加する傾向にある。アジア地域の防災・減災がとくに重要であることがわかる。2.地球激動時代~地震・津波、火山噴火~21世紀に入って超巨大地震が2004年スマトラ沖地震、2010年チリ地震、2011年東北地方太平洋沖地震というように立て続けに起こっている。一方、わが国では巨大な地震と火山噴火の組み合わせで起こることも歴史的にわかっている。たとえば、発生年と被災地域は、≪864年~866年:富士山噴火(関東地方)、869年:貞観地震(東日本地域)、887年:仁和南海地震(西日本地域)≫および≪1703年:元禄地震(関東地方)、1707年:宝永地震(東海地方、西日本地域)、1707年:富士山噴火(関東地方)≫である。このように、因果関係は不明であるが、一定の期間に集中するという地球激動時代があることを示している。3.地球温暖化と風水害の多発・激化 地球温暖化の影響が顕著に出ていることがわかる。もちろん、途上国の場合、これに自然環境の悪化が加わる。たとえば、南アジアでは、1975年から10年単位で水害の発生件数は約2倍ずつ増加を繰り返している。中国でも1995年から被災者が1億人を超える水害が5回も数えるようになった。地球温暖化の影響は、従来、多く雨が降らなかった地域に異常に降る場合と、少雨地域に降らずに干ばつを起こすという極端現象が起こり易くなっていることに注意する必要がある。また、ハリケーンや台風の巨大化は要注意であり、カテゴリー5の最強の2005年ハリケーン・カトリーナの3週間後に同じく5のリタが来襲するようなことは過去にはなかった。また、2013年11月にレイテ島を襲った台風30号は、1日で気圧が65hPa低下し、895hPaの巨大台風が上陸し、およそ7000人が犠牲になった。4.災害と貧困の悪循環 2014年2月3日に日本政府と世界銀行による災害リスクマネジメント(DRM)のプログラムが発足した。これは、経済開発努力が災害によって元の木阿弥に戻ってしまうことを阻止しようという日本政府と世界銀行の試みである。途上国には図1のような、災害と貧困の悪循環が存在する。その引き金になるのは、保健衛生思想の普及で低くなった乳幼児の死亡率が寄与している人口増加である。当然、国民の大多数が農民である途上国では、一人あたりの耕地面積は減少の一途である。そのために、災害に脆弱な谷や湿地帯、ジャングルが開墾され可耕地が広がる。しかし、もともと災害に脆弱という性質は変わらないために、そこで被災した農民は、ますます貧乏になり、一部は職を求めて都会に出ていく。しかし、そこでも安価で安全な住宅地があるわけではなく、彼らの多数はスラムに住む。あるいは崖地や河川敷も居住地となろう。そこも災害に脆弱なのである。一方、都市で展開される第二次産業は、豊富な労働力と安い賃金で支えられるから、この都市のサイクルも安定的になる。すなわち、地方と都市で発生する悪循環がペアとなって、安定化し、なかなか壊れないという特徴を有する。防災・減災を進めるためには、経済的に豊かになる必要があり、これが現実には困難だということである。5.まとめ 世界の自然災害の防災・減災を進めるためには経済的に豊かになることが必須である。そこが解決しない限り、災害と貧困の悪循環を壊すことは不可能である。防災・減災事業だけでは不十分ないわれがそこにある。