16:30 〜 17:30
[PPS23-P01] DOEを用いた月面天測望遠鏡の開発及びDOE試作状況
キーワード:月面天測望遠鏡, 回折光学素子
【要旨】
次期SELENE計画の一環として、月面に天測望遠鏡を設置することを考えて いる。これにより、月の微妙な振動や変動を高精度に測定・解析し、月の内部構造やその起源を明らかにすることが目的である。本発表では、月面という過酷な温度環境の中でも、星像位置決定精度1masという高性能を実現することが可能な望遠鏡対物レンズの開発と、そのキーテクノロジーであるDOE(Diff ractive Optical Element)の特徴や環境解析結果、中部大鈴木研と共同開発しているDO Eの製造方法及び試作品の状況等を報告する。
【DOE】
DOEはその名の通り回折で光を曲げるものである。従来のレンズは屈折で光を曲げるが、回折と屈折は色分散が逆であるため、これらを組み合わせることで、劇的に色収差を補正することが可能となり、従来は必須であった低分散ガラスも不要となる。従来は必須であったこの低分散ガラスは屈折率の温度変化が非常に大きく、ある温度では性能の出ている光学系が、温度が少し変化すると色収差が大きく出て性能がNGとなるため、非常に狭い温度範囲でしか使えないという欠点があった。一方DOEにはそんな特性はなく、少々温度が変化しても高性能をキープできるため、月面という過酷な温度環境の元でも現実的な温度範囲で使える光学系とすることが可能となる。
ただDOEには、回折効率が波長に依存するという欠点と、高精度なものは製作が非常に困難という問題点もある。前者に関しては、ILOMのように、「像を見る」ことではなく、「星像の重心を正確に検出する」という目的に於いては、少々不要次数光による迷光が重畳しても検出精度に影響がないことを定量的な解析により示した。また、製造に関しては、高精度光学部品製造の権威である中部大工学部の鈴木研と協力研究体制を敷き、最適な製造法を考案して頂くことにより、十分実用となるDOEを製造することが可能となった。
【今後の展開】
DOEの製造目処は立ったため、それと組み合わせる屈折レンズや鏡筒を試作し、地上試験等で望遠鏡としての光学性能を確認することが今後必要である。また、DOE以外にも天頂筒の構成に必須な水銀面(水銀皿)や折り曲げプリズム(スパイダプリズム)といったキーコンポーネントもあるため、これらに関しても試作し、光学系と組み合わせての性能確認を行うことも必要であると考えている。
次期SELENE計画の一環として、月面に天測望遠鏡を設置することを考えて いる。これにより、月の微妙な振動や変動を高精度に測定・解析し、月の内部構造やその起源を明らかにすることが目的である。本発表では、月面という過酷な温度環境の中でも、星像位置決定精度1masという高性能を実現することが可能な望遠鏡対物レンズの開発と、そのキーテクノロジーであるDOE(Diff ractive Optical Element)の特徴や環境解析結果、中部大鈴木研と共同開発しているDO Eの製造方法及び試作品の状況等を報告する。
【DOE】
DOEはその名の通り回折で光を曲げるものである。従来のレンズは屈折で光を曲げるが、回折と屈折は色分散が逆であるため、これらを組み合わせることで、劇的に色収差を補正することが可能となり、従来は必須であった低分散ガラスも不要となる。従来は必須であったこの低分散ガラスは屈折率の温度変化が非常に大きく、ある温度では性能の出ている光学系が、温度が少し変化すると色収差が大きく出て性能がNGとなるため、非常に狭い温度範囲でしか使えないという欠点があった。一方DOEにはそんな特性はなく、少々温度が変化しても高性能をキープできるため、月面という過酷な温度環境の元でも現実的な温度範囲で使える光学系とすることが可能となる。
ただDOEには、回折効率が波長に依存するという欠点と、高精度なものは製作が非常に困難という問題点もある。前者に関しては、ILOMのように、「像を見る」ことではなく、「星像の重心を正確に検出する」という目的に於いては、少々不要次数光による迷光が重畳しても検出精度に影響がないことを定量的な解析により示した。また、製造に関しては、高精度光学部品製造の権威である中部大工学部の鈴木研と協力研究体制を敷き、最適な製造法を考案して頂くことにより、十分実用となるDOEを製造することが可能となった。
【今後の展開】
DOEの製造目処は立ったため、それと組み合わせる屈折レンズや鏡筒を試作し、地上試験等で望遠鏡としての光学性能を確認することが今後必要である。また、DOE以外にも天頂筒の構成に必須な水銀面(水銀皿)や折り曲げプリズム(スパイダプリズム)といったキーコンポーネントもあるため、これらに関しても試作し、光学系と組み合わせての性能確認を行うことも必要であると考えている。