12:15 〜 12:30
[SCG61-P13_PG] 高温下における ternary feldspar の相関係
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:ternary feldspar, 相関係, 高温実験
【はじめに】
長石は相転移に伴い双晶や離溶ラメラなどの微細組織を形成する。微細組織を観察することで、長石の冷却過程に関する情報を得ることができる。岩石の冷却過程を知る上で有用な鉱物である。特に高温(T > ~800C)で晶出するternary feldspar(Tfs)は、斜長石やアルカリ長石よりも多くの温度情報を保存している。超高温変成岩の変成履歴の解析に適用することができる。斜長石系:An(anorthite, CaAl2Si2O8)-Ab(albite, NaAlSi3O8)、アルカリ長石系:Ab- Or(orthoclase, KAlSi3O8)については多くの研究が行われ、相関係がよく知られている(Carpenter, 1994など)。しかし、An-Ab-Or 3成分系での相関係については、あまり多くの研究は行われていない。特に高温下でのC2/m - C-1転移はTfsが経る可能性のある相転移であるが、その際の挙動はアルバイト端成分における高温その場粉末X線回折法(XRD)による実験結果とその結果に基づく理論計算によって予想されたものである(Kroll et al., 1980; Salje et al.1985, Carpenter, 1988)。粉末XRDによる分析は実験試料全体に対して行われているため、回折計の角度分解能が不足している場合に2相分離による組織の形成に関わる分解反応を捉えられない可能性がある。また、高温その場分析では反応時間の不足により反応がほとんど進まない可能性がある。したがって、高分解能の電子顕微鏡を用いて高温高圧実験による実験試料を直接観察し、C2/m - C-1相転移の際の挙動について再検討する余地がある。一方、ナピア岩体などの超高温変成岩体ではTfsの産出が報告されている(Harley 1985; Sheraton et al. 1987; Hokada, 2001など)。バルク組成におけるソルバス温度から変成時の到達温度の見積りが行われているが、その離溶組織の成因は十分に研究されていない。Tfsの相関係を明らかにすることにより、超高温変成岩の形成史を詳細に検討することが期待でき、超高温変成作用が解明できる。
本研究では、長石のC2/m - C-1相転移の挙動を明らかにした。本研究ではピストンシリンダー装置を用いて1100 - 1300C、10 kbarの条件で長石の相関係を調べた。出発物質には離溶ラメラを含まない、oligoclase(Olg, An21Ab75Or4)、sanidine(An1Ab15Or84)の単結晶を粉砕した粉末を用い、任意の割合で混合しバルク組成を変化させたものを用いた。実験試料の観察では、oligoclase-sanidine間の元素交換に伴った微細組織が形成されているか否かに着目した。Tfsの複雑な離溶組織の形成に関わると考えられる前駆的な組織を直接観察するために、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)や走査透過型電子顕微鏡を用いた環状検出器による暗視野法(ADF-STEM)などの微細組織の組成コントラストを高分解能で観察可能な装置を用いて実験試料の観察を行った。
【結果と考察】
1100C, 1200C の実験のうち、An15Ab65Or20の実験試料において化学組成の不連続による異なる化学組成のラメラからなる組織を確認した。この結果から長石のC2/m - C-1転移は、2次の相転移ではなく、1次の相転移であることが明らかとなった。また、観察された微細組織の界面方位はほぼ(010)であった。一方、1250C,1300Cで行われた実験試料にはガラスが観察された。これらの結果を総合し、Olg-Or擬似2成分系の T > 1100C, P = 10kbar における相図を得た。
Mt. Riiser-Larsen産片麻岩サンプルについて、兒玉ら(2013など)は、薄片スケールの元素分布、ミルメカイト状の組織の産状とCe などの微量元素の分布、ジルコン中のガラス包有物の存在から、Mt. Riiser-Larsenにおけるピークの変成時におけるOlg成分に富むTfs組成のメルトの存在の可能性を示唆した。さらに、Tfsに見られる複雑で多様な離溶組織の存在を示した。今回実験により得られた相図より、こうしたOlg成分に富むTfs組成のメルトの存在から、変成時の温度は少なくとも1200-1250Cに達していたと考えられ、また、Tfs中の複雑で多様な離溶組織は、(010)で接するC2/m - C-1の1次の相転移に伴う離溶組織と、その後の冷却による(-901)で接するスピノーダル分解によって形成される離溶組織の2種類の組織が複合したものであることがわかった。
長石は相転移に伴い双晶や離溶ラメラなどの微細組織を形成する。微細組織を観察することで、長石の冷却過程に関する情報を得ることができる。岩石の冷却過程を知る上で有用な鉱物である。特に高温(T > ~800C)で晶出するternary feldspar(Tfs)は、斜長石やアルカリ長石よりも多くの温度情報を保存している。超高温変成岩の変成履歴の解析に適用することができる。斜長石系:An(anorthite, CaAl2Si2O8)-Ab(albite, NaAlSi3O8)、アルカリ長石系:Ab- Or(orthoclase, KAlSi3O8)については多くの研究が行われ、相関係がよく知られている(Carpenter, 1994など)。しかし、An-Ab-Or 3成分系での相関係については、あまり多くの研究は行われていない。特に高温下でのC2/m - C-1転移はTfsが経る可能性のある相転移であるが、その際の挙動はアルバイト端成分における高温その場粉末X線回折法(XRD)による実験結果とその結果に基づく理論計算によって予想されたものである(Kroll et al., 1980; Salje et al.1985, Carpenter, 1988)。粉末XRDによる分析は実験試料全体に対して行われているため、回折計の角度分解能が不足している場合に2相分離による組織の形成に関わる分解反応を捉えられない可能性がある。また、高温その場分析では反応時間の不足により反応がほとんど進まない可能性がある。したがって、高分解能の電子顕微鏡を用いて高温高圧実験による実験試料を直接観察し、C2/m - C-1相転移の際の挙動について再検討する余地がある。一方、ナピア岩体などの超高温変成岩体ではTfsの産出が報告されている(Harley 1985; Sheraton et al. 1987; Hokada, 2001など)。バルク組成におけるソルバス温度から変成時の到達温度の見積りが行われているが、その離溶組織の成因は十分に研究されていない。Tfsの相関係を明らかにすることにより、超高温変成岩の形成史を詳細に検討することが期待でき、超高温変成作用が解明できる。
本研究では、長石のC2/m - C-1相転移の挙動を明らかにした。本研究ではピストンシリンダー装置を用いて1100 - 1300C、10 kbarの条件で長石の相関係を調べた。出発物質には離溶ラメラを含まない、oligoclase(Olg, An21Ab75Or4)、sanidine(An1Ab15Or84)の単結晶を粉砕した粉末を用い、任意の割合で混合しバルク組成を変化させたものを用いた。実験試料の観察では、oligoclase-sanidine間の元素交換に伴った微細組織が形成されているか否かに着目した。Tfsの複雑な離溶組織の形成に関わると考えられる前駆的な組織を直接観察するために、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)や走査透過型電子顕微鏡を用いた環状検出器による暗視野法(ADF-STEM)などの微細組織の組成コントラストを高分解能で観察可能な装置を用いて実験試料の観察を行った。
【結果と考察】
1100C, 1200C の実験のうち、An15Ab65Or20の実験試料において化学組成の不連続による異なる化学組成のラメラからなる組織を確認した。この結果から長石のC2/m - C-1転移は、2次の相転移ではなく、1次の相転移であることが明らかとなった。また、観察された微細組織の界面方位はほぼ(010)であった。一方、1250C,1300Cで行われた実験試料にはガラスが観察された。これらの結果を総合し、Olg-Or擬似2成分系の T > 1100C, P = 10kbar における相図を得た。
Mt. Riiser-Larsen産片麻岩サンプルについて、兒玉ら(2013など)は、薄片スケールの元素分布、ミルメカイト状の組織の産状とCe などの微量元素の分布、ジルコン中のガラス包有物の存在から、Mt. Riiser-Larsenにおけるピークの変成時におけるOlg成分に富むTfs組成のメルトの存在の可能性を示唆した。さらに、Tfsに見られる複雑で多様な離溶組織の存在を示した。今回実験により得られた相図より、こうしたOlg成分に富むTfs組成のメルトの存在から、変成時の温度は少なくとも1200-1250Cに達していたと考えられ、また、Tfs中の複雑で多様な離溶組織は、(010)で接するC2/m - C-1の1次の相転移に伴う離溶組織と、その後の冷却による(-901)で接するスピノーダル分解によって形成される離溶組織の2種類の組織が複合したものであることがわかった。