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[SGL44-07] 上総層群のテフロクロノロジーに関する研究レビューと今後の課題
キーワード:上総層群, テフロクロノロジー, 第四紀層
上総層群は関東平野のほぼ全域に広く分布し,ところにより1000 m以上の層厚をもつ.このような上総層群の層序・年代・構造を明らかにすることは,関東積成盆地ともよばれる陸化した前弧海盆の形成過程,すなわち関東造盆地運動を理解する上で欠かせない.またその連続性から,シーケンス・生層序・古地磁気・テフラなどの第四紀における層序編年の模式堆積物にもなり得る.本発表では,この様な上総層群の編年研究のうち,テフロクロノロジーに関わる部分について,レビューと今後の課題点を指摘する.なお,上総層群の層序・年代は模式地となる房総半島にて伝統的に研究が進められてきたが近年では,房総半島に比べてより有利な条件をもつ銚子地域においても各種の研究が進められている.したがってここでは犬吠層群も広義の上総層群として扱う.房総半島を模式地とする上総層群は,層序・古生物・構造に関する研究史が長く(例えば,植田,1933),数多く含まれるテフラに関しても三梨ほか(1959)による古い研究がある.それ以降,露頭位置・柱状図などをカタログ化した千葉県立中央博物館(1991),テフラの記載岩石学的性質を系統的に明らかにした里口(1995)がある.東京湾を挟んだ多摩丘陵の上総層群に関してのテフラ研究にも,神奈川県知事公室企画審議課(1955)以降多くの研究があり,房総半島の上総層群中のテフラとの対比案も示され(三梨ほか,1979;三梨・菊地,1982など),また基本的なテフラ層序も示された(高野,2004).その他,横浜地域,銚子地域,関東平野中央部などでもテフラの存在が指摘されてきた.上記の地域毎のテフラ層序の確立を経た以降,記載岩石学的データの充実とともに,上総層群のテフラ研究は関東各地間のテフラ対比や,給源域への対比に関心が持たれるようになった.前者の例としては,多摩丘陵・房総間の高野(2002),横浜・房総間の藤岡ほか(2003),銚子・房総間の藤岡・亀尾(2004),東京地下・房総間の佐藤ほか(2004),村田ほか(2007)などがあげられ,最近で複数の地域間でのテフラ対比が進められている(鈴木・村田,2011; Suzuki et al., 2011;水野・納谷,2011など).給源域への対比例としては,長橋ほか(2000),鈴木・中山(2007),鈴木・村田(2008),村田・鈴木(2011)などがあげられる.今後の課題は数多くあるが,上総層群のテフラ研究の基本としては関東平野全域をカバーする層序の確立が優先的事項と考える.少なくも野外で視認できる全てのテフラの記載岩石学的データの整備と,それに基づく関東平野全域での対比が急がれる.鈴木・村田(2011)ではこの様な視点から.約1.3?1.6 Maにかけて22のテフラについて記載岩石学的データを示し,多摩丘陵・東京地下・房総・銚子間での対比を試みた.これはおおよそ2.5?0.5 Maに堆積した上総層群中テフラの中では一部である.講演では鈴木・村田(2011)以降の層序・対比も報告したい.今後こうした研究が進めば,第四紀の模式堆積物としての重要性がさらに高まると思われる.