16:15 〜 16:30
[SGL44-08] 広域火山灰層序の基準層序としての上総層群
キーワード:上総層群, 広域テフラ, 更新統, 白尾テフラ
日本の鮮新ー更新統の層序は,テフラ層を鍵層として組み立てられてきた.また,広域テフラの認定や異なる堆積盆地間のテフラ対比によって,九州および本州に分布する主要な鮮新ー更新統を対象にした詳細な層序が確立された(Satoguchi and Nagahashi, 2012など).このような広域層序の確立には,火山灰層序のみならず生層序や古地磁気層序を含め多くの層序学的研究を地域間で矛盾なく総合的に組み立てる必要があるが,全体の構築のための初期段階では,それらの研究が詳細に行われている地域を層序と年代の基準にすることが有効である.Satoguchi and Nagahashi(2012)は,とくに前期更新世については房総半島に分布する上総層群を基準層序とした. 上総層群は露頭条件がよく海成層であることから古地磁気層序,生層序,酸素同位体ステージとの対比など,年代が議論できる多くの層序学的研究が行われており,豊富な年代および層序データを有する.また,上総層群には多くのテフラ層が挟在しており,それらの基礎的データが蓄積されている(里口,1995など).これらのテフラ層は広域対比の検討が行われ,多くの対比が行われてきた.また,それらの中には給源地域が明らかにされているものもある.たとえば,九州地方を給源とするSs-Pnk(Hayashida et al., 1996),Ss-Az(鎌田ほか,1994),Kb-Ksテフラ(吉川ほか,1991),中部山岳地域を給源とするHo-Kd39,Eb-Fukuda,Om-SK110テフラ(長橋ほか,2000),北関東を給源とするJA-O18Lテフラ(中村・新井,1998),東北地方を給源とするAs-Kd8テフラ(村田・鈴木,2011),Hkd-Kuテフラ(Suzuki et al., 2005)などがある.このように多くの地域のテフラを含むことも重要である.たとえば,九州地方を給源とするテフラの降灰範囲が房総半島よりも東方にはない場合,東北地方を給源とするテフラとの層序関係を理解する上で重要となる.すなわち,上総層群は西南日本と東北日本の層序関係を知る上でハブ機能を果たしうる.また,前述のテフラは500km以上離れた複数の地層をむすぶものであるが,複数の堆積盆は見つかっていないが,給源火山地域との対比が行われた例もある.下部?中部更新統境界のGSSP候補となっている地点の層準にあるBYK(白尾テフラ)は古期御岳火山が給源とされた(竹下ほか,2005).古期御岳火山噴出物との対比は,その上位にあるKs12テフラも行われている.これら給源が明らかにされたテフラは,給源地域の爆発的火山活動史を理解する上で,重要な情報を提供する. 以上のように,上総層群は日本の更新統にとって層序学的に重要であり,テフラからみた火山活動史の研究などにとっても,その重要性は今後増していくと考えられる.REFERENCES:Hayashida, A. et al.(1996)Quaternary International 34?36, 89?98.;鎌田浩毅ほか(1994)地質学雑誌,100,848?866.;吉川清志ほか(1991)月刊地球,13,228?234.;村田昌則・鈴木毅彦(2011)第四紀研究,50, 49?60.;長橋良隆ほか(2000)地質学雑誌,106,51-69.;中村正芳・新井房夫(1998)地球科学,52,153-157.;里口保文(1995)地質学雑誌,101,767-782.;Satoguchi,Y. & Nagahashi,Y.(2012)Island Arc, 149-169.;Suzuki, T. et al. (2005) Island Arc, 14, 666?78.;竹下欣宏ほか(2005)地質学雑誌,111,417-433.