日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT40_1AM1] 地殻流体:その分布と変動現象への役割

2014年5月1日(木) 09:15 〜 10:45 416 (4F)

コンビーナ:*中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、佐久間 博(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、高橋 努(独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、座長:市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、佐久間 博(物質・材料研究機構)

10:15 〜 10:30

[SIT40-05] 地殻の電気伝導度はH2O-NaCl流体で説明できるか?

*佐久間 博1市來 雅啓2 (1.物質・材料研究機構、2.東北大学)

キーワード:塩水, 電気比抵抗, 超臨界流体, 分子動力学計算, 誘電率

古い大陸地殻では深さ20から30 kmに高電気伝導層が観測されている [1]。水流体(aqueous fluid)の存在が、この高電気伝導層を説明するのではという仮説があり[2]、その仮説を検証するためには、高温高圧条件における水流体の電気伝導度を知らなければいけない。地殻内の水流体は液体から超臨界状態に相当し、これらの状態での電気伝導度を知る必要がある。実験的には電気伝導度の測定結果は、NaCl水溶液の場合、圧力(P) < 400 MPa, 温度(T) < 1073 K, 塩濃度 (c) < 0.6 wt%の低温低圧低塩濃度に限られている [3]。我々は古典分子動力学(MD)法を用いて、超臨界状態にあるH2O-NaCl流体の電気伝導度を計算した。超臨界状態の水を取り扱うため、我々が開発したH2O分子モデル(FIPC)[4] を使用した。計算の詳細は文献[4]と同様である。本計算では塩濃度が10 wt%以下のH2O-NaCl流体について計算した。電気伝導度の等温線を見ると、圧力の増加とともに電気伝導度も増加し、高圧で飽和することが分かった。また温度の増加とともに電導度が減少することも分かった。これらの挙動は、温度圧力変化に伴う密度、イオンの動きやすさ、水の誘電率の変化で説明できる。地殻のある圧力温度分布のモデルに沿って、電気伝導度の変化を計算すると、電磁気観測で見られる電気伝導度の変化うち、H2O-NaCl流体で電気伝導度の一桁の変化を説明できることがわかった。しかし観測で見られる2桁程度の電気伝導度の変化を説明するためには、流体の連結度やCO2の影響等を考量する必要がありそうである。References[1] T. J. Shankland and M. E. Ander (1983) J. Geophys. Res. 88 9475-9484.[2] B. E. Nesbitt (1993) J. Geophys. Res. 98 4301-4310.[3] A. S. Quist, and W. L. Marshall, (1968) J. Phys. Chem. 72 684?703.[4] H. Sakuma, M. Ichiki, K. Kawamura and K. Fuji-ta (2013) J. Chem. Phys. 138 134506.