17:45 〜 18:00
[SIT41-P04_PG] ピナツボ火山かんらん岩捕獲岩の岩石学的特徴と沈み込む海洋地殻による交代作用
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:amphibole-bearing peridotite xenolith, Pinatubo, mantle metasomatism, mantle wedge
フィリピンのルソン島のピナツボ火山は、ルソン(バターン)弧火山フロントに位置する。1991年に噴出したデイサイト質火砕流堆積物中から、かんらん岩捕獲岩を採取した。火砕流堆積物には他にも角閃岩、花崗岩質岩などの捕獲岩やかんらん石捕獲結晶を含む。試料採取した約200個の捕獲岩中の最大径は14cmであった。デイサイトとかんらん岩の間には最大厚さ5mmの角閃岩のselvageが観察される。粗粒な鉱物からなるマントル捕獲岩と、肉眼では同定不可能な細粒な鉱物で構成される捕獲岩があり、後者のようなかんらん岩はルソン弧バタン島イラヤ火山(Arai et al., 1996)、カムチャッカ弧アバチャ火山(Ishimaru et al., 2007)で報告されている。
Arai et al. (1996)はイラヤ火山に産するかんらん岩捕獲岩を岩石組織に基づいて粗粒タイプ(C-type)と細粒タイプ(F-type)に分類し、FタイプはCタイプに沈み込むスラブ由来のSiO2に富む流体もしくはメルトが付加して、細粒化したものであると解釈している。Fタイプは細粒かんらん石(≤0.1mm)を含む細粒鉱物を10 vol%以上含む(Arai and Kida, 2000)。彼らの定義に従うと、ピナツボかんらん岩捕獲岩は約50%がFタイプであった。イラヤ捕獲岩およびアバチャ捕獲岩では、Fタイプがそれぞれ約90%(Arai et al., 1996)と15%(Ishimaru & Arai, 2008)である。また、タイプごとの量比は不明だが、Arai et al. (1996)でFタイプに相当すると思われる捕獲岩は、パプアニューギニアTabar-Lihir-Tang-Feni弧Tubaf 火山・Edison火山でも報告されている(e.g. McInnes et al., 2001)。
ピナツボかんらん岩捕獲岩のすべての試料で流体包有物が認められ、これらの流体包有物は塩水を含む(Kawamoto et al., 2013)。Cタイプかんらん岩捕獲岩のほとんどがハルツバージャイト(かんらん石+斜方輝石+角閃石+スピネル±単斜輝石±金雲母)で、ダナイトとウェールライトがそれぞれ一試料認められた。Cタイプの中で細粒部分が最も少なく、最も初生的と思われる試料の角閃石のSr-Nd同位体組成を求めた。この結果は、ピナツボ火山で噴出しているデイサイトと安山岩の組成領域(87Sr/86Sr = 0.70419-0.70425, 143Nd/144Nd = 0.512924-0.512863; Bernard et al., 1991; Castillo et al., 1991)の最も枯渇した値とほぼ一致する。またルソン弧に沈み込んでいると考えられる南シナ海海洋玄武岩のSr-Nd同位体組成領域内(Tu et al., 1992)に位置する。角閃石の多元素コンドライト規格化パターンは、基本的には左下がりのパターンだが、Ba, Rb, U, Pbの正のスパイクが認められる。これらの元素は沈み込む海洋地殻由来の流体で付加されると考えられている元素である(e.g., McColloch & Gamble, 1991)。以上の事から、Cタイプのピナツボマントル捕獲岩は沈み込む海洋地殻由来流体による交代作用を受けていると提案する。
Arai et al. (1996)はイラヤ火山に産するかんらん岩捕獲岩を岩石組織に基づいて粗粒タイプ(C-type)と細粒タイプ(F-type)に分類し、FタイプはCタイプに沈み込むスラブ由来のSiO2に富む流体もしくはメルトが付加して、細粒化したものであると解釈している。Fタイプは細粒かんらん石(≤0.1mm)を含む細粒鉱物を10 vol%以上含む(Arai and Kida, 2000)。彼らの定義に従うと、ピナツボかんらん岩捕獲岩は約50%がFタイプであった。イラヤ捕獲岩およびアバチャ捕獲岩では、Fタイプがそれぞれ約90%(Arai et al., 1996)と15%(Ishimaru & Arai, 2008)である。また、タイプごとの量比は不明だが、Arai et al. (1996)でFタイプに相当すると思われる捕獲岩は、パプアニューギニアTabar-Lihir-Tang-Feni弧Tubaf 火山・Edison火山でも報告されている(e.g. McInnes et al., 2001)。
ピナツボかんらん岩捕獲岩のすべての試料で流体包有物が認められ、これらの流体包有物は塩水を含む(Kawamoto et al., 2013)。Cタイプかんらん岩捕獲岩のほとんどがハルツバージャイト(かんらん石+斜方輝石+角閃石+スピネル±単斜輝石±金雲母)で、ダナイトとウェールライトがそれぞれ一試料認められた。Cタイプの中で細粒部分が最も少なく、最も初生的と思われる試料の角閃石のSr-Nd同位体組成を求めた。この結果は、ピナツボ火山で噴出しているデイサイトと安山岩の組成領域(87Sr/86Sr = 0.70419-0.70425, 143Nd/144Nd = 0.512924-0.512863; Bernard et al., 1991; Castillo et al., 1991)の最も枯渇した値とほぼ一致する。またルソン弧に沈み込んでいると考えられる南シナ海海洋玄武岩のSr-Nd同位体組成領域内(Tu et al., 1992)に位置する。角閃石の多元素コンドライト規格化パターンは、基本的には左下がりのパターンだが、Ba, Rb, U, Pbの正のスパイクが認められる。これらの元素は沈み込む海洋地殻由来の流体で付加されると考えられている元素である(e.g., McColloch & Gamble, 1991)。以上の事から、Cタイプのピナツボマントル捕獲岩は沈み込む海洋地殻由来流体による交代作用を受けていると提案する。