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[SMP47-08] 新規高圧ストロンチウム珪酸塩の結晶構造解析
キーワード:ストロンチウム珪酸塩, 高圧, 単結晶構造解析, SiO5多面体
SrSiO3は、地球の地殻やマントルを構成している鉱物の重要な成分の一つであるCaSiO3のアナログ物質である。SrSiO3系の高圧相関係において、約10 GPaまではδ’-SrSiO3相が、14 GPa以上ではBaGe2O5-III型SrSi2O5 + larnite型Sr2SiO4が安定であり、さらに約20 GPa以上では六方晶ペロブスカイトが安定となる(Kojitani et al. 2005, Yusa et al. 2005)。一方、10~14 GPaにおいて、larnite型Sr2SiO4以外に出現する相については不明であった。本研究でその未知相の一つの結晶構造および組成を決定したので報告する。目的の試料は、pseudowollastonite型SrSiO3とSiO2 cristobaliteの混合物 (モル比1:1)に少量の水を添加し、川井型マルチアンビル高圧発生装置を用いて12 GPa, 1200℃で90分加熱することにより得られた。回収試料の中から、結晶サイズが120x80x60 μmの単結晶を選び出し、BrukerAXS APEX II (Mo Kα, 50 kV, 20 mA) を用いて単結晶X線回折測定を行った。SHELX-97ソフトウェアを用いることにより、得られた953個の反射データについて解析がなされた。また、組成分析にはSEM-EDSを使用した。組成分析の結果、新規高圧相はSr4Si9O22の組成を持つことが判明した。単結晶構造解析により、単斜晶系で空間群がC2/m、格子定数が a = 13.3765(4) Å, b = 5.2321(2) Å, c = 11.6193(6) Å, β = 113.976(4)deg.と決定された。R因子は1.25%であった。求められた結晶構造は、SiO6八面体またはSiO5斜方錐面体(ピラミッド型)の稜共有による一重鎖が頂点を共有することにより繋がってできる層と、SiO4四面体とSiO6八面体が頂点を共有することにより繋がってできる層から成るフレームワークを持っている。特筆すべきは、珪酸塩物質では珍しいピラミッド型SiO5多面体が存在することである。また、Sr2+はそれらの2つの層の間に配列されており、酸素7配位である。δ’-SrSiO3は、SiO4四面体の4員環からなるフレームワークを持ち、Sr2+は7配位である。一方、BaGe2O5-III型SrSi2O5はSiO6八面体とSiO4四面体の頂点共有によるフレームワークを持ち、Sr2+の配位数は12である。したがって、本研究で新たに見出された結晶構造は、それらの低圧相と高圧相の中間的な密度を持つという事実と調和的である。