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[SSS23-19] 傾斜基盤の基端部から発生する表面波による液状化被害の拡大
キーワード:液状化, 傾斜基盤, 表面波, 有効応力解析
東日本大震災では,浦安市をはじめ,広範囲の東京湾沿岸部の埋立て地盤において液状化現象が発生した.特徴の1つには,液状化地点と非液状化地点が空間的に不均一・非一様に分布していたことが挙げられる.その要因としては,地盤状態の不均一性,つまり,埋立て年代に伴う密度の違いや地盤改良の有無として解釈されることが多い.浦安市の地層構成に着目すると,液状化被害が軽微であった陸側は液状化層直下の軟弱粘土層厚が10m程度と薄いのに対し,液状化被害が甚大であった海側へ向かうほど軟弱粘土層厚が50mと厚く,約2kmにわたって基盤層が傾斜している.本稿では,この地層境界の傾斜に着目して二次元有効応力解析を実施し,傾斜基盤が表層の液状化発生に及ぼす影響を数値解析的に検討した.用いた解析コードは,砂から中間土,粘土までを同じ理論的枠組で記述する弾塑性構成式(SYSカムクレイモデル)を搭載した水~土骨格連成有限変形解析コードGEOASIAである.図1(a)は,地震発生から50秒後の速度ベクトル図である.地層傾斜部周辺を示しており,鉛直方向にメッシュを2倍拡大している.表層部において反時計回りに巻き上げるような表面波の発生が確認できる.この表面波は傾斜基端部で発生し,図中の右側へ進行していく.図中には,基盤傾斜部中央付近における液状化層における平均有効応力低下率を,同地点の地層構成を反映して別途実施した,一次元解析結果(水平成層地盤)と重ねて示している.一次元解析では液状化しなかった(平均有効応力低下率<95%)が,二次元解析では平均有効応力低下率が95%以上となって液状化している(図1(b)).表面波の発生に伴って,地表付近での加速度が大きくなると同時に,主要動終了後も比較的大きな揺れが継続するためであり(図1(c)),二次元解析では平均有効応力低下率が長時間,上昇を続けている様子がわかる.図1(d)には,地震発生から200秒後のせん断ひずみ分布図を示す.表面波の発生に加え,地層傾斜の影響による地震波の屈折・反射によって,均質な地盤材料を想定した表層部においても不均一なせん断ひずみ分布が発生している.特に傾斜部直上でせん断ひずみが大きいが,これは実際に浦安市で観測された液状化被害の様相とも符合し,非一様な液状化被害は,単に地盤の不均一性だけでなく,深部地層傾斜の影響もあったことが推測される.以上まとめると,1) 基盤の傾斜によって傾斜基端部から表面波が生成され,表層地盤の継続的な揺れを引き起こすこと,2) それに伴い,傾斜部直上では加速度が大きくなると同時に,主要動終了後も比較的大きな揺れが継続するため,液状化が拡大すること,3)均質な地盤材料であっても,層序の不均質性に起因して地震波が複雑に伝播し,地盤変状が大きくばらつくこと,を示し,多次元有効応力解析の必要性と有用性を示唆した.Asaoka, A. et al.: Non-uniformity of surface layer liquefaction damage caused by layered system organization and dip of deeper layer, Japan Geoscience Union Meeting, SSS37-06, 2011.Asaoka, A. et al.: Main shock ? aftershock interval effect on the liquefaction damage in Tohoku Region Pacific Coast Earthquake, Japan Geoscience Union Meeting, SSS33-P24, 2013.Asaoka, A. et al.: An elasto-plastic description of two distinct volume change mechanisms of soils, S&F, 42(5), 47-57, 2002.Noda, T. et al.: Soil-water coupled finite deformation analysis based on a rate-type equation of motion incorporating the SYS Cam-clay model, S&F, 48(6), 771-790, 2008.