17:00 〜 17:15
[SSS23-P02_PG] アンケート震度算定方法の改良に関する一考察
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:アンケート震度算定方法, 計測震度, 高震度領域
本研究では,東北地方太平洋沖地震を含む過去に岩手県内で発生した大地震に対する高密度アンケート震度調査で得られた震度と計測震度とを比較した結果,東北地方太平洋沖地震の場合のみ,アンケート震度が計測震度より約0.5程度大きい値を示したが,他のすべての地震のほとんどの観測点ではアンケート震度が計測震度より小さい値を示すことがわかった.特に,2011年4月7日の余震では計測震度6弱を示すいくつかの観測点ではアンケート震度と計測震度との差が0.1-0.2程度で比較的小さいが計測震度5強を示す観測点ではその差が0.5以上と大きくなる.また2003年や2008年の地震の場合,計測震度5弱から5強の範囲でアンケート震度が計測震度より約0.3程度小さくなることが示された.そこで,高震度領域に対応可能な方法の一つとして井上ほか(1999)の方法を用いて太田ほか(1998)の方法と比較した.井上ほか(1999)によると,太田ほか(1998)では震度4.5程度の中震度領域ではアンケート震度が低く見積もられることを指摘している.彼らは太田ほか(1979)の算定方法を変更せずにその差異を解消するために経験式を用いて高震度領域まで対応可能な方法を提案した.我々の調査を両手法で検討した結果,井上ほかの経験式を用いた場合,東北地方太平洋沖地震以外の地震では,アンケート震度と計測震度との関係は良い対応を示すことがわかった.
計測震度とアンケート震度との差異についてアンケートの質問項目の回答の違いから考察した.揺れの長さに関する質問18において,計測震度が震度5強で同一である観測近傍の調査票の回答分布を調査した結果,東北地方太平洋沖地震の場合の最頻値の回答番号は5の「非常に長かった」であるが,他の地震の場合は4の「長かった」であった.計測震度が震度6弱の場合も同様の結果であった.継続時間に関する回答の震度係数が算定震度に大きな影響を与えていると考えられる.計測震度は地震動の加速度記録にフィルター,ベクトル合成などの処理から得られるが最低0.3秒継続時間があれば同一の値となる.今までの算定式を作成する際の調査データとして東北地方太平洋沖地震に匹敵する継続時間を有する地震の調査が皆無であるためこのような結果になったと推察される.また,そのときの行動に関する質問22において,すべての地震で最頻値の回答番号は2の「意識的に身の安全を考えた」であったが,東北地方太平洋沖地震の場合のみ,3の「意識して戸外へのがれた」の回答の割合が高かった.質問22も長時間の継続時間に関連する質問と予想される.
参考までに,継続時間の長い東北地方太平洋沖地震のみのアンケート震度と計測震度を満足する経験式を作成した.
I=1.2872×(Iq) - 0.4727,ここでIqは太田ほか(1979)のアンケート震度を示す.
なお,我々の所有するアンケート震度を用いて計測震度を満足するように,太田ほか(1998)の手法と同様に,震度係数は従来の値を利用して,質問のおもみを1,2,3の3段階の整数値として統計分析によって決定しなおした結果,震度の残差は井上ほか(1999)と同程度となった.よって,マグニチュード9の巨大地震を例外とすれば,頻繁に発生するM7からM8程度の被害地震の際にアンケート震度調査を実施する場合,井上ほか(1999)のアンケート震度換算式を利用したほうが,計測震度とアンケート震度との差異が中震度から高震度領域にわたって比較的小さいことが期待でき,かつ過去のデータも活用できると考えられる.参考までに,井上ほか(1999)の方法で東北地方太平洋沖地震と4月7日の余震の詳細震度分布を作成した結果,当然のことながら計測震度観測点近傍では計測震度とアンケート震度はほぼ一致し,それ以外の地域では,山本ほか(2013)により震度4から5弱の地域が震度5弱から5強と大きい値を示すことがわかった.
参考文献
太田ほか (1979)北海道大学工学研究報告,92,pp. 117 - 128.
太田ほか(1998)自然災害科学,16,pp. 307 - 324.
井上ほか(1999)地震 第2輯, 51, 4, 1999, pp. 395 - 407.
山本ほか(2005),物理探査学会題112回学術講演会講演論文集、pp. 180 - 183.
山本ほか(2009),平成20年度北東北国立3大学連携推進研究プロジェクト,岩手・宮城内陸地震被害調査研究報告書,pp. 4 - 17.
山本ほか(2013),東北地域災害科学研究,第49巻,pp. 29 - 34.
山本ほか(2013),東北地域災害科学研究,第49巻,pp. 35 - 40.
計測震度とアンケート震度との差異についてアンケートの質問項目の回答の違いから考察した.揺れの長さに関する質問18において,計測震度が震度5強で同一である観測近傍の調査票の回答分布を調査した結果,東北地方太平洋沖地震の場合の最頻値の回答番号は5の「非常に長かった」であるが,他の地震の場合は4の「長かった」であった.計測震度が震度6弱の場合も同様の結果であった.継続時間に関する回答の震度係数が算定震度に大きな影響を与えていると考えられる.計測震度は地震動の加速度記録にフィルター,ベクトル合成などの処理から得られるが最低0.3秒継続時間があれば同一の値となる.今までの算定式を作成する際の調査データとして東北地方太平洋沖地震に匹敵する継続時間を有する地震の調査が皆無であるためこのような結果になったと推察される.また,そのときの行動に関する質問22において,すべての地震で最頻値の回答番号は2の「意識的に身の安全を考えた」であったが,東北地方太平洋沖地震の場合のみ,3の「意識して戸外へのがれた」の回答の割合が高かった.質問22も長時間の継続時間に関連する質問と予想される.
参考までに,継続時間の長い東北地方太平洋沖地震のみのアンケート震度と計測震度を満足する経験式を作成した.
I=1.2872×(Iq) - 0.4727,ここでIqは太田ほか(1979)のアンケート震度を示す.
なお,我々の所有するアンケート震度を用いて計測震度を満足するように,太田ほか(1998)の手法と同様に,震度係数は従来の値を利用して,質問のおもみを1,2,3の3段階の整数値として統計分析によって決定しなおした結果,震度の残差は井上ほか(1999)と同程度となった.よって,マグニチュード9の巨大地震を例外とすれば,頻繁に発生するM7からM8程度の被害地震の際にアンケート震度調査を実施する場合,井上ほか(1999)のアンケート震度換算式を利用したほうが,計測震度とアンケート震度との差異が中震度から高震度領域にわたって比較的小さいことが期待でき,かつ過去のデータも活用できると考えられる.参考までに,井上ほか(1999)の方法で東北地方太平洋沖地震と4月7日の余震の詳細震度分布を作成した結果,当然のことながら計測震度観測点近傍では計測震度とアンケート震度はほぼ一致し,それ以外の地域では,山本ほか(2013)により震度4から5弱の地域が震度5弱から5強と大きい値を示すことがわかった.
参考文献
太田ほか (1979)北海道大学工学研究報告,92,pp. 117 - 128.
太田ほか(1998)自然災害科学,16,pp. 307 - 324.
井上ほか(1999)地震 第2輯, 51, 4, 1999, pp. 395 - 407.
山本ほか(2005),物理探査学会題112回学術講演会講演論文集、pp. 180 - 183.
山本ほか(2009),平成20年度北東北国立3大学連携推進研究プロジェクト,岩手・宮城内陸地震被害調査研究報告書,pp. 4 - 17.
山本ほか(2013),東北地域災害科学研究,第49巻,pp. 29 - 34.
山本ほか(2013),東北地域災害科学研究,第49巻,pp. 35 - 40.