日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25_2PM1] 地震予知

2014年5月2日(金) 14:15 〜 16:00 312 (3F)

コンビーナ:*竹内 希(東京大学地震研究所)、座長:藤原 広行(防災科学技術研究所)、吉川 澄夫(気象庁気象研究所)

14:45 〜 15:00

[SSS25-03] 地震は多様性を指向する ~数論的地震活動モデル~

*藤原 広行1 (1.防災科研)

キーワード:数論, 素数, G-R則, 地震

地震活動は多様である。地震発生過程を個別の素過程に分解し,詳細な物理モデルを各過程において組上げて総合する方法論では,定めるべき初期条件や境界条件が複雑で膨大な量となり,それらを決定論的な1つの方程式系の解として求めることは困難である.このため,近年試みられている地震活動の予測においては,統計的あるいは確率論的な手法が用いられている.確率過程論的なアプローチでは,地震活動が持つ特徴を経験的あるいは理論的に推定される確率分布としてモデル化し,モデル化された確率過程のサンプル・パスの1つが,観測される値と対応する.こうした手法は,地震活動全体の統計的性質を表現するには有効であるが,個々のサンプル・パスそのものの性質に踏み込んだ解析はできない.本研究では,地震活動の多様性をモデル化することを目指して、観測値に対応する具体的なサンプル・パスを数学的に構成し,それらが地震活動の持つ統計的性質を満たすことを示すことにより,確率過程論的アプローチとは異なった考え方に基づく地震活動モデルを提案する.このため「数」による地震活動のモデル化を試みる.「地震」と「数」の世界に対して,下記のような対応を考えてみる.p_をi番目の素数とし,その素数に対応する指標として素数の出現間隔 p_-pi-1をとる.i番目に発生する地震をe_とし,その発生時刻をT(e_),地震モーメントをMo(e_)としたとき,下記の関係式が成り立つと仮定する.T(e_)=p_log(Mo(e_))=p_-pi-1この対応関係に対して,数値実験を行うことにより,G-R則に類似した性質が得られることがわかる.この対応によって得られるモデルを「数論的地震活動モデル」と呼ぶ.「数論的地震活動モデル」における「地震」は,素数分布論の研究対象である「素数」そのものであり,地震発生予測は素数の出現予測と同値なものとなる。地震を場のエネルギーレベルの変化に対応する現象としてとらえ,地震発生場をある種の量子化された力学系を用いて表現することを考える.地震が発生する場のハミルトニアンを考え,地震発生をハミルトニアンに対する固有値問題として設定する.その固有値問題がゼータ関数と関連することがもし示されれば,地震活動と素数分布との類似性についての説明ができるのではないかと期待できる.現在のところ,このような考え方に基づいて地震発生場を説明できる力学系は知られていない.一方で,素数の分布に関する研究において,ある種の量子化された力学系の固有値問題として素数分布と同値な関係にあるRiemannのゼータ関数の零点分布をとらえようとする研究が進んでいる.素数分布に関連するRiemann予想は,「数」が持ちうる多様性の限界、つまり秩序と無秩序のぎりぎりの境界がどこにあるのかということに関連しており,素数分布は,臨界現象と関係している可能性がある.地震も与えられた条件下での多様性の限界と関係した臨界現象として解釈でき,地震と素数の間に類似性が見られるのではないかと考えられる.